第18話 神話
――ヒスイ視点
めぐるんが出ていってしまった。私が物事を焦ってやりすぎたせいだろう。めぐるんの殺しに対する抵抗心や私に対する警戒心を能力を使って消滅させていた。他と違うと思っていたから、無関係の人を殺しても何も思わないと思っていたのに予想外ではあった。でも、殺しの罪はずっと残る。無駄に罪悪感を持っているめぐるんは、それをダシに責めれば堕ちてくれるだろう。私の計画を実現させるにはあの能力が不可欠なんだ。おそらくめぐるんがその能力の持ち主だろう。そう踏んで動いている。次、ここに戻ってたときにめぐるんを堕そう。
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――巡琉視点
あの夢のせいで眠れなかった。コンディションとしては最悪だ。だけど、ヒスイに聞かなければ。血がつながっているということ。他に知っていることはないか。軽く準備を終わらせて、ヒスイの家に行く。
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「ヒスイ、話がある」
「なにかな、飛び出しためぐるん」
いつもの二階でヒスイと対峙する。ヒスイはソファでくつろいでいる。
「家に帰って、母さんの遺品から日記を見つけた。そこにヒスイと異父兄妹ってことが書いてあった。それは本当か? お前は知っていて俺に近づいたのか?」
「へー。私とめぐるんが兄妹だと。それは知らなかった」
「お前知ってたんじゃないのかよ」
「いいや、知らないよ。ただ、ママからこっちの世界に私の兄となる人がいるって話は聞いてた」
「探していたのか?」
「向こうの世界の神話でさ、ある兄妹の話があるんだよ」
「今は何も関係ないだろ」
「関係あるさ。一旦聞かないかい」
ここは聞くしか無いだろう。口を噤んでヒスイの言葉を待つ。
「その昔、二人の兄妹が生まれた。その兄の能力は『創造』、妹の能力は『破壊』。この二人はその能力を使って、世界を消して作り直して、向こうの世界ができたとされている。それから、その二つの能力は、兄妹でのみ生まれるようになった。まあ、数が少なすぎるせいで本当かはわからないけどね」
「つまり、ヒスイが破壊の能力を持っているから俺が創造の能力を持っていると?」
「その可能性が高いってことだ」
ただ、それが分かったとしても、なぜその能力を欲しているのか。
「それで兄である俺を探していたということか?」
「一応はそうなるのかな。メインは能力の方だけどね。ある程度の範囲は絞れてたから、その中からオーラのある人を探して開花させて確かめる」
「ヒスイは何がしたいんだ?」
「この世界を変えるのさ」
そう言ったヒスイの目には固い決意が浮かんでいた。