8話
この村に来てから早くも2週間。
初日から土壁を作り続け、ついに今日、村全体を囲うことができた。
「……ようやく完成したな。」
俺は土壁を見上げながら、長いため息をついた。
(めちゃくちゃ大変だった。)
2m50cmの高さの土壁。オークの平均身長は2mだから、上から槍で攻撃すれば、一方的に戦えるはずだ。
(これで村の防御はひとまず安心か……)
だが、油断はできない。
最近は騎士団がオークを見つけ次第倒していたおかげか、この村の周辺ではほとんど見かけなくなった。
(でも、ただ逃げてるんじゃなくて、もしかしたらオークの上位種の命令かもしれないからな。)
俺は、次の作業のために自警団の訓練場へと向かった。
自警団が訓練している場所に近づくと、トーマスの声が響いてくる。
「そこ! 突きが甘い! もっと腰を入れろ!」
「そうだ! いい動きをしているぞ!」
まだまだオークに敵いそうにはないが、ここ一週間で自警団の動きは確実に良くなっていた。
だが——その瞬間。
「えーい! 見てられん! 俺が見本を見せてやる!! てーい!!」
トーマスが叫ぶと同時に、俺のすぐ横を村民数名が吹き飛んでいった。
(……ちょっと鍛えすぎじゃないか?)
「精が出るな、トーマス。」
「こ、これはコア様! お怪我はありませんか?!」
「大丈夫だ。それよりも、訓練の合間に自警団を二手に分けてしてほしい作業がある。」
「了解です! それでどんなことをするのでしょうか?」
俺は指を二本立てながら言う。
「一つのグループは、土壁の前に落とし穴を掘ってほしい。」
「もう一つのグループは、俺の道作りの手伝いだ。」
「道作り……ですか?」
トーマスはきょとんとした表情を浮かべた。
「そうだ。隣の村へ続く道を拡張し、交易ルートを作る。」
実は、隣の村との間には道はある。
……だが、それは 「道と呼べるレベルではない獣道」 だった。
(このままじゃ、荷車が通るのは不可能に近い。)
もし、隣の村と交易ができるようになれば、今年の食糧問題はとりあえず解決する。
そして、ゆくゆくは——
「それぞれの村をつなぎ、村ごとに特産物を集中して作らせる」
つまり、「分業制」 を導入することで、伯爵領全体の生産性を向上させる。
「一言で言えば、適材適所の農業改革だ。」
俺がそう言うと、ワイズが驚いたように目を丸くした。
「……そんなことができるんですか?」
「できる。今のままじゃ、各村がバラバラにやって非効率だからな。」
隣の村への道に到着し、ワイズが不安そうに言う。
「本当にこの道を、隣の村まで荷車2台分の広さにするのですか?」
「ああ、必要なことだ。」
「でも、そんなに簡単にできるものなんですか……?」
ワイズが疑問を口にするが、俺は肩をすくめた。
「……やってみせるさ。」
そう言いながら、土魔法で道を拡張する準備をする。
「よし、取り掛かるぞ。はぁ!!」
俺が両手を地面に向けて魔力を込めると、ゴォォォ——という音とともに、道が一気に広がっていく。
村人たちが驚きの声を上げる。
「す、すげえ……!」
「こんなことができるなんて……」
俺は自警団に指示を出した。
「俺が大雑把に道を作るから、お前たちは崩れないように土を固めてくれ。」
「わかりました!!!」
俺の魔力量では1日に100mが限界。
隣の村までは約5km。
つまり、完成までに50日かかる計算だ。
(まぁ、地道にやるしかねぇな……)
俺は再び魔力を込め、この村の未来を切り拓くための道を作り始めた。
面白いと感じていただけたら、高評価とブックマークをよろしくお願いします!




