4話
帝国軍の偵察部隊は、何もせずに帰ったらしい。
(帝国の思惑を調べたいが……クソ、赤ん坊の俺じゃどうしようもない……!)
足を使って調査することも、誰かに指示を出すこともできない。
せいぜい、大人たちの会話を盗み聞きするくらいしかできない自分が、もどかしくて仕方なかった。
(……今は成長して、能力を高めることに注力するしかない。)
その後も年に何回か同じようなことが起きていたが、大きな出来事はなく、時間は過ぎていった。
「はあっ! せやっ!」
「剣筋はまだまだだな、コア!」
気づけば転生して10年が経っていた。
今、俺は父アークの剣術授業の真っ最中だ。
「ぜぇ、ぜぇ……(ぜんぜん剣の扱いが上達しない……!)」
この10年で、俺は父からみっちり剣術を叩き込まれてきた。だが——
俺の剣筋はヘナチョコのままだった。
スパーンッ!
「うおっ!? ってぇぇ……!」
父の木剣が俺の剣を軽く弾き飛ばし、その勢いで俺は尻もちをつく。
「コア、お前、全然力が乗ってないぞ!」
「は、はい……」
(いや、力の問題じゃねぇんだよ……! 単純に俺、剣向いてねぇんだよ!!)
ここまで努力しても、まともに剣を振れない俺は、どう考えても剣士の才能がない。
(本当はいいやつだったムーブをするには、それなりの能力が必要なのに……!)
剣がダメなら、どうする?
——答えは決まってる。
内政と魔法だ。
「今日はここまでだ! また明日もビシバシいくからな!」
「はい! ありがとうございました!(もうやめたい……)」
剣術は見切った。なら、俺は俺に向いている道を探すしかない。
今日、俺は父にある提案をしようと決めていた。
「ところで父上、相談があるのですが」
「なんだ? なにか欲しいものでもあるのか? お前が何かをねだるのも、魔法書をねだったとき以来だな。それで何がほしいんだ?」
「実は、私に内政を任せてほしいのです。」
「……内政だと?」
父は俺の言葉に驚いたように眉を上げた。
「うーむ……内政は難しいぞ?」
(あんなグダグダな内政をやっておいて、よく言うな……)
「しかし、いつかは私が内政をやることになります。それが少し早くなるだけです。」
「内政は多くの人の人生を左右するもので、責任重大なんだぞ?」
(いや、父上が言うと説得力ゼロなんだが……)
「はい。なので、早いうちから経験したほうがいいと思います。」
「うーむ……」
(お、これはダメか……?)
「ならこうしよう。お前にオール村の領地の統治をまかせる!」
(うん、意外と簡単に任せてくれるな!?)
「オール村の統治が成功したら、このクトーマ家の内政にも関わらせてやる。」
「わかりました! やってみせます!」
「では詳しいことはギルバードに伝えてこい!」
俺は心の中でガッツポーズをした。
剣はダメでも、俺には頭がある。
「本当はいいやつだったムーブ」をするために、まずは領地経営から始めてやる。




