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24話

お待たせしました!

先生がミノタウロスを倒した後、ガレットはすぐに国立の病院へと搬送された。

医師たちの懸命な処置のおかげで命こそ助かったものの、彼の足には深刻な後遺症が残った。


そして、ダンジョン攻略から一週間が経とうとしていたが——ガレットはまだ意識を取り戻していない。


ーーー


今、俺は生徒会室でクラリスに課された書類仕事をしている……はずだった。


しかし、まったく集中できない。


視線は紙の上をさまようばかりで、頭の中にはガレットの姿が浮かんで離れなかった。


(俺のせいで……)


カリカリ……


ペンを動かす手が止まる。


「……はぁ。」


俺が重いため息をつくと、目の前のクラリスが苛立った様子で書類をバンッと机に置いた。


「……あなた、いい加減その陰気臭いオーラを撒き散らすの、やめてくれない?」


「…………」


俺は無言で俯いたまま。


すると——


タッタッタッ!!


突然、クラリスが立ち上がり、俺の前へと回り込む。


「……っ!」


気づいた時には、両手で俺の頬を包み込まれていた。


「っ!? な、何を——」


思わず動揺する俺。


クラリスは俺の顔をしっかりと持ち上げ、真っ直ぐに瞳を覗き込んでくる。


「あなたの目的は何? なんでそんなに落ち込んでいるの?」


「あなたとガレットの間には、以前まで何の関係もなかったはずでしょう? むしろ、彼はあなたを敵視していたじゃない。」


クラリスの目は、まるで俺の心の奥底を探るような鋭さだった。


「今の落ち込んでいるあなたで、あなたの目的は達成できるの?」


「……っ。」


言葉に詰まる。


(確かに……このままじゃ、何も変えられない。)


でも、どうすればいい?


未来が分かっていても、俺には変えることができなかった。


「……まだ、少ししかあなたと話したことはないけれど。」


クラリスは俺の顔を包む手に、少しだけ力を込めた。


「あなたが野心を持って王国に牙を向けようとしていないことは、もう分かっているわ。」


「あなたは、何か"大きなこと"を成し遂げようとしているのでしょう?」


「だったら、ここで立ち止まっている暇なんてないはずよ!!」


(……っ。)


クラリスはもっと理性的で、合理的な人間だと思っていた。


でも今の彼女の言葉は——まるで俺自身の心を代弁しているかのように、まっすぐ響いてくる。


(そうだ……俺に立ち止まっている暇なんてない。)


その時——


バンッ!!


突然、生徒会室の扉が勢いよく開いた。


「コア!! ガレットの意識が戻ったらしい……ぞ!!」


駆け込んできたゼクトの言葉に、俺はハッとする。


しかし——


ゼクトの目が、なぜか大きく見開かれた。


「お、お邪魔しましたーーー!!!」


一瞬で扉を閉め、全力で逃げ出していくゼクト。


「……は?」


(なんで逃げる?)


そう思った瞬間——俺は"ある事実"に気づく。


クラリスと俺の距離。


……ゼクトの位置から見たら、まるでキスをしているように見えていた だろう。


「お、おい! 待て!!」


慌ててゼクトを追いかける。


その時、クラリスに向かって自然と笑顔を向け。


「ありがとうございました、クラリス様」


一人取り残されたクラリス。


「……何よ。あなたも、良い笑顔をするじゃない。」


頬が、ほんの少しだけ赤らんでいた。


ーーー


俺は、病室の前に立っていた。


扉を開けると——そこには、ベッドに横たわるガレットと、レオンたちの姿があった。


レオンは、俺の顔を見た瞬間——近づいてくる。


「お前が……!!」


「…………」


レオンの怒りは、痛いほど伝わってきた。


(俺に、ぶつけるしかないんだろうな。)


何も言わずに立っていると、レオンは拳を握りしめ、俺を睨みつけたまま——


何も言わず、病室を出て行った。


その場に残された俺は、ゆっくりとガレットの方へ歩み寄る。


「……すまなかった。俺のせいで、お前は——」


「そんなことはない!」


俺の言葉を最後まで聞かず、ガレットははっきりとそう言った。


「俺が怪我をしたのは、俺自身の選択だ。これは俺の力が足りなかったせいだ。」


「でも、俺が避けていれば……!」


思わず顔を下に向け、俯いてしまう。未来がわかっていても結果を変えられなかった自分の無力感がとても嫌になってくる。


少しの沈黙の後、ガレットが口を開く。


「違う」ガレットは、俺をまっすぐに見据えた。


「俺はお前に感謝しているんだ。」


「お前が来なかったら、俺たちは全滅していたかもしれない。」


「レオンはああ言っていたが、多分本心じゃ俺と同じことを考えてるはずだ。」


「だから、そんな顔をするな。」


そう言われて初めて自分の視野が狭まっていることに気がついた。俺はこれまで悪役を演じてきた。


そうすることが俺にとっての利益につながると思っていたから。


今の俺はそんなことを演じる余裕すらなかったのか。


「お前って、案外世間で言われてるような悪いやつじゃないんだな。」


「勘違いするな!」


俺は、ガレットに励まされた照れくささを隠すように勢いよく言い返した。


「俺は俺がやりたいことをやっているだけだ! そのためならどんなに汚いことでも、どんな手段でも使う!」


「だから、世間の評価は間違ってない。」


ガレットはふっと笑う。


「……やっとお前らしくなったじゃないか。」


「見舞いに来てくれて、ありがとうな。……それと、これから"みんな"のこと、頼んだわ。」


「……ふん、余計な心配はするな。お前は休んでいろ。」


病室を後にしながら、俺は静かに誓う。


(未来は、俺が変えてみせる——!)

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