表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/29

20話

俺たちは、学園内にある生徒会室の一室へと移動していた。


——俺とクラリス、二人きりで。


生徒会室という場所は、格式高い調度品が並び、静謐な空気が漂っている。

だが、それ以上に、クラリスの視線が俺の神経をすり減らしていた。


まるで罪人を見るかのような冷たい目——いや、それ以上に、俺のすべてを見透かそうとするような、王族特有の威圧感を伴った眼差しだった。


(……やばい、汗が出てきた。)


俺はなるべく平静を装いながら、クラリスの出方を待った。


「——単刀直入に言います。」


クラリスは躊躇いなく切り出した。

その言葉には強い意志が込められている。


「最近のクトーマ家の動きについてですが、王国に対して反旗を翻そうとしているように見えます。クトーマ家に、そのような考えはありますか?」


(……またこの話か。)


この学園に来てから、何度この手の質問を受けただろう。


(どうせ、クラリスも他の連中と同じで、クトーマ家を"悪徳貴族"として見ているのだろう。)


ならば、俺がやることは一つ。


"悪徳貴族は、自分が悪であることを絶対に認めない"


俺は、あくまで冷静な態度を保ちながら、はっきりと答えた。


「そんなことはありえません。」


緊張感を表に出さないようにしながら、できるだけ淡々とした口調を心がける。


「私の父は脳筋で、そのようなことを考えるような人では——」


「——あなたの父ではありません。」


クラリスは俺の言葉を遮るように言い放った。


「あなた自身が、王国に牙を向けようとしているのではありませんか?」


(……なっ!?)


一瞬、思考が止まった。


(俺はただの嫡男であって、普通なら領地の政治に関与できる立場じゃないと思うはず……それを、なぜ——?)


俺は一度深呼吸をし、動揺を抑えながら答える。


「クトーマ家の実権を握っているのは、我が父アークです。私には何の権限もありません。」


だが、クラリスはすぐに次の言葉を重ねる。


「あら、それなら……」


「五年前から始まったクトーマ領の街道建設や、自警団の設立を行った人物である"コア・クトーマ"とは、一体誰のことなのかしら?」


(……!)


二度目の動揺。


クトーマ家は他家との繋がりがほぼない。

そのせいで、王都ではクトーマ家に関する根拠のない噂ばかりが広がっていた。


実際、学園に来てからの周囲の態度を見れば、それは明らかだった。


だからこそ、俺は"クラリスもまた、無知な王族の一人だ"と思い込んでいた。


——だが、違う。


王女クラリスは明らかに、クトーマ家の実態を調査している。


(……なぜ、クラリスはこの情報を知っている? それに、同じ王族なのに、弟のレオンは全く知らなかった様子だった……。)


困惑が隠せず、俺は何も発言できなかった。


ーーー


しばらくの沈黙の後——。


「あなたを試すような真似をして、申し訳ありませんでした。」


クラリスは穏やかに微笑みながら、さっきまでの鋭い雰囲気を和らげる。


「クトーマ家について、事前に調査をさせてもらいました。そして分かったのは——近年のクトーマ領の発展は、あなたによるものだということ。」


「また、報告では、クトーマ家でのあなたの評判は非常に良い。——学園での評判とは正反対ね。」


まるで事務的な報告をするかのように、クラリスは淡々と事実を述べる。


「私には、あなたが"意図的に"学園で悪者を演じているように見えます。」


そして、真っ直ぐな瞳で俺を見据え——


「あなたの目的は、何なのですか?」


静かに、だが鋭く問いかけた。


(……どうする?)


ここで下手な嘘をついても、クラリスには見抜かれるだろう。


さすがに"本当はいいやつだったムーブをするために行動しています"なんて言えないしな……。


俺は軽く息を吐き、慎重に言葉を選びながら答えた。


「……目的は、今は話せません。」


それが、俺にとって最適解だった。


(これ以上追及されたら厄介だが、今はこれが限界だ……。)


クラリスは俺の言葉を聞くと、一瞬だけ考え込んだように見えた。


——そして、ふっと微笑んだ。


「そうですか。今は、その言葉で十分です。」


俺は思わず、疑問の表情を浮かべる。


「追及しないのか?」


「これまでの会話で、あなたが"賢い人間"であることが分かりました。」


「そんな人が、わざわざ"あからさまに"王国に反旗を翻すようなことをするとは、考えにくいわ。」


(……敵わないな。)


終始、会話の主導権を握られていた俺は、内心でため息をついた。


「……ありがとうございます。」


すると——。


「追及しない代わりに、これから定期的に"生徒会の手伝い"をしてくれませんか?」


にっこりと微笑むクラリス。


……が、同時に"絶対に断れない"雰囲気を醸し出していた。


(……これから俺が何を考えているのか炙り出そうということか)


今後の計画通りに進めるのならばここで断るのが得策だろう。


しかし、この状況で拒否する勇気は俺には持ち合わせていないのだった。


「……分かりました。」


俺がそう答えると、クラリスは満足げに微笑んだ。


こうして俺は、思いもよらぬ"生徒会の仕事"を押し付けられることになったのだった——。


(……また計画を練り直さなきゃならないな。)


俺は、新たな“強敵”の登場に、改めて警戒を強めることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ