13話
クトーマ家に帰還すると、真っ先に母が俺を出迎えてくれた。
——というか、全力で可愛がられた。
「コア! よく帰ってきましたね!」
母は俺を抱きしめ、頬ずりしてくる。
「ま、待って、母上! もう俺、11歳だし……!」
「11歳でも可愛いものは可愛いのです!」
(……恥ずかしい。でも、嬉しい。)
俺は 少し照れくさくなりながらも、ぎゅっと母の腕を握った。
父は相変わらず帝国への対応で忙しく、出迎えはなかった。
その日は 丸一日、母と語り合った。
——この1年間、俺が何をしてきたのか。
母は 目を細めながら、静かに俺の話を聞いていた。
「……コア、大きくなったわね。」
「え?」
「顔つきが、随分としっかりしてきた。」
俺は 母の言葉を聞いて、ほんの少しだけ誇らしくなった。
翌日、俺は ギルバードのもとを訪れた。
ギルバードは 俺の顔を見るなり、興奮した様子で話しかけてきた。
「オーク村の統治、お見事です! コア様!!」
「これでクトーマ家の北部領地は、着実に発展していくはずです!」
「……ああ、それで父上の評価は?」
「それについて、アーク様から伝言を預かっています!」
ギルバードは 少し咳払いをしてから、父の言葉を真似た。
『なんかよくわからんけど、オーク村うまく統治できてそうだったから、本格的にクトーマ家の経営を任せる。』
「……だそうです!」
俺は ずっこけそうになった。
(そんな適当なら、最初から任せてくれればよかったのに……!)
まあ、オーク村の統治は結果的に良い経験になったし、文句は言わないでおこう。
「……そ、そうか。」
俺は 気を取り直して、ギルバードを見据える。
「よし! これから俺が領地経営をする!」
「まずは、領地の状況を詳しく教えてくれ!」
ギルバードが 領地の問題点を挙げていく。
1, 王国への税金がとても少ない
→ その代わり、帝国に対する防衛を任されている。
2, 辺境で作物が育ちにくい
→ 食料問題 & 収入不足。
3, 軍隊が最低限しかいない
→ 帝国との戦いが本格化したら、すぐに崩壊する。
4, 領民の教育が不十分
→ 読み書きすらできない者が多い。
(……やはり、一番の問題は 4 か。)
「ギルバード。」
俺は ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「食糧問題と軍隊の強化は、俺がこれまでやってきたことを領地全体で展開して解決する。」
「だから、お前は 教育だけに集中してくれ。」
「具体的には?」
「まず、領地の中心地に学校を建てる。」
「そして、各村町から 一番頭のいいヤツを選び、教育する。」
「とりあえず、教育内容は できるだけ実用的なものに絞れ。」
「……なるほど。」
ギルバードは 深く頷いた。
「教育を受けた者たちが、やがて各村に戻り、学んだことを広めていく……そういう計画ですね?」
「その通り。」
「……承知しました。私にお任せください。」
こうして、クトーマ領の新たな改革が始まる。




