第42話◇尾行バレちゃう……!?
宿屋に到着後は、食事をしながら全員で軽く情報交換する。
ちなみに、セオさんから頂いたりんごは、みんなでデザートとして美味しく頂いたのだった。
美味し過ぎた結果、アップルさんは「自力でも買いに行くし、今後は定期的にお取り寄せする」と息巻いていて、かなり気に入ったみたい。
店の場所を聞かれたから教えておいたのだけど、突然に大量発注が来ちゃって、セオさんびっくりするかもしれないわ……。
そんなふうにりんごを頂いていた時だった。
コツンコツンと窓のところで音がした。
何だろうと思っていたら、紙で折られた鳥?がガラスを叩いていた。
窓を開けると、どう見ても紙なのに、パタパタと本当の鳥みたいにウィリアムさんの手元に。
業務連絡のための特別な魔導具で「伝書紙鳩」って言うんだって。
伝書鳩と同じ役割を果たしてくれるみたい。
それは青騎士隊の監視担当の人からの「まだヨトウは屋敷にいる、当初の予定通りだ」という連絡だった。
まるでそれが時間的な合図だったかのように、私たちは食事を終えると、全員がそれぞれ手早く変装を済ませる。
「そいじゃ、ちょっと行ってみるかねぇ」
まずはとてもセクシーなお洋服を着た美女になったルークさんが出て行った。
「イリスちゃんは行ってはいけないよ」とシーニャさんから言われている歓楽街を通って調査をこなすつもりらしい。
その後、とっておきの新情報の酒場・日の出亭にも顔を出すようだ。
どう見ても女の人にしか思えないし、声も少し高くなっている。
すごい。
そして次に、見た目だけはまるで「おじいちゃんと孫」みたいになったウィリアムさんとアップルさんが出て行く。
ヨトウさんと繋がっている人たちが密輸品を集めている倉庫があるらしくて、そこも調べるらしい。
そして私とイデアも宿屋を出て、南ストレリチアの屋敷へと向かった。
二人とも変装済み、首元には「限りなく身に付けた人の存在感を薄くするストール」が巻いてある。
チィにはストールの影響が及ばないので、ヨトウさんから死角になる場所に止まり場を探しながら、自力で飛んで移動して追ってきている。
屋敷の近くに差し掛かると、正門が見える木陰に同じくストールを身に付けた女の人が立っていて、イデアと私に気付くと、さりげなく目配せして去っていった。
きっと青騎士隊の女性隊員の人なんだと思う。
十数分後、書類を入れるバッグを手にしたヨトウさんが出てきた。
「来た……」
声を潜めているイデアにつられるように、私もなるだけ息や足音を殺すようにする。
首のストールは単に「限りなく身に付けた人の存在感を薄くする」だけだから、静かに追うに越したことはないのだ。
私たちは少し離れた場所から監視しつつ、そのまま距離を保ちながら、尾行を開始する。
今日のヨトウさんは特に寄り道をすることもなく、直接邸宅に帰るつもりのようで、足早だった。
ほどなく邸宅に到着して、このままヨトウさんが今日は誰にも会わないんだったら、尾行は空振りだったかも……と思いかけたその時。
怪しい男が道端でヨトウさんに声をかけてきた。
どうやら彼は帰宅を待ち伏せしていたみたいだ。
一見商人風で、でも領地に根を下ろして商売をしている、街でお店を切り盛りしている人たちとは、全然違う。
「商人の男の人」と聞いて思い起こすウィスプ商会の会長様とも、違う雰囲気だ。
そして何より――その男の頬には、トカゲの入れ墨がくっきりと入っていた。
「ヒ、ッ……!!」
思わず引き攣った悲鳴が口を突く。
「イリス!?」
私の異常に、イデアが声をかけてきているけれど、棒立ちになったまま動けない。
これまで一度も忘れたことはない、トカゲの入れ墨。
輪郭の黒と鮮やかな赤色が目を引くそれを、私は既に見知っている。
それと全く同じものを、前回、私は私を刺し殺した男の足に見たのだ。
あの男とは全く似ていない。
全くの別人みたいだ。
でも、あの人は、あの暗殺者と同じ組織に属している、仲間である可能性が高い。
トカゲの入れ墨の一派は、間違いなく、私の死に関わっている。
そして彼らはヨトウさんばかりか、叔父様とも繋がっている可能性がある。
前回だけでなく、今回も――私は入れ墨のあの男に、殺されてしまうのかもしれない……?
「――っ、誰だ!?」
気配を悟られてしまったのか、ヨトウさんの叫びが上がる。
だめ、私のせいで見つかっちゃう……!!
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