第36話◇魔法鑑定は叔父様への罠
その後、話の流れで私がアップルさんに「四属性全ての魔法が使える」ということは叔父様には隠している、という話をチィと伝えると、何も隠していない私の全ての魔力を、改めてこのタイミングで鑑定して貰えることになった。
私は例の、かつてお母様から教わったあの歌の通りに歌いながら、同時に四属性全ての魔法を表現して見せる。
「これは……!!紛れもなく四属性分、精霊魔法……!!しかも『風』は白の魔法陣!!女神様の加護を受けた『風』属性保持者にしか使えないという、通称『女神様の息吹』じゃないか……!!これはイリスくんが加護持ちだっていう、決定的な魔法証明になるね!!」
全てを見届けたアップルさんがそう評価を口にすると、何だか皆がザワッとなった。
「緑じゃない!えっ、『風』って普通は、緑の魔法陣じゃないの?!だって、ウィリアムが氷魔法使う時に『風』と『水』の魔法陣が出るけど、『風』の方は緑じゃん!」
「俺には加護はないからな。しかし何人もの風魔法使いとの戦闘を経験してきた俺でも、白の魔法陣は初めて見る」
「実は過去の文献には記述があるんだけどねぇ、でもそれも何百年も前のことで、前例としてはその一件だけだったよ」
興奮気味にイデア以外の全員が身を乗り出してきて口々に語り出すから、逆に私はびっくりしてしまう。
「ええっ、むしろ、普通は緑なの?!私の魔法陣だけ?!チィも言ってくれなかったし、イデアだって……!!」
完全に、みんな白なんだと思い込んでたんだけど。
魔法書の、私が読んだところまでは、魔法陣の色については全く書いてなかったし。
イデアも何も言わなかったし……!!
私の問いに、チィは『ああ、そういえばそうだったわ。でも私には女神様の……白の方が自然なのよね』と、首を傾げていた。
そしてイデアはというと、少し気まずそうにしつつも、こくりと頷いた。
「女神様の加護の現れだろうな、とは内心思っていたよ」
イデアはあえて言わなかったことを、私に少し申し訳なく思っているようだ。
「ただ、そこに言及すると、自分も同じく女神様の加護を受けてるってことを説明しなくてはならなかったから……。だから、初めて出会ったその日には言えなかったんだよ」
「だんちょーの加護、利用されないように一部の人にしか教えてはいけません、って国や教会から通達されてるもんねぇ」
「そうだったんだ……」
私はルークさんの説明で納得する。
それならしかたないよね。
そして私の加護も、今後同じような扱いになるんだろうなぁ……。
『ね?他の属性を隠しても『風』だけでかなりの衝撃が与えられるわけよ。だったら、他は一族の中の敵と効果的に戦えるように隠しておく。いい手でしょ?』
ふふん、とチィがホワホワの胸を張った。
すると、とても真面目な表情でウィリアムさんが肯定する。
「そうだな。『風』の魔法しか使えない、と侮っていたら他の種類の魔法が出てくる……しかも何が出てくるか分からないわけだから、やりようによってはかなり効果的な戦法になる」
『でっしょお~?まだ魔法を覚えたばかりのイリスだからこそ、相手も侮ってるし情報も知らないから、何してくるか予測できなくて余計に効果的ってわけ!』
意外なことに、チィとウィリアムさんが意気投合していた。
どこからどうみても真面目軍人らしいウィリアムさんが、バサバサ・ピコピコと身振り手振り尾羽振りして小さな女の子みたいな声で話す小鳥と、すごく真剣な顔で戦闘について語り合っているのは、ちょっと面白いかもしれない。
「なるほどね。じゃあ、今度屋敷に魔法官として訪れてモルヒ公の前でイリスくんの魔法鑑定をして見せる時は、『女神様の息吹』を思いっきり見せつけてびびらせる、そういうことでいいのかな?なるほど、なるほど……」
いつの間にか私たちにつられるように、アップルさんも少し悪い笑顔になってきていた。
「女神様の加護を持つ者を、それを知っていて害する、となると、処罰の対象になるからね。王家にも教会本部にも知られる以上、君に対する待遇も変え得ざるを得ないと思うよ」
「魔法官からの正式な通達受けちゃったら、さすがにモルヒ公にも保護者代理としての義務が生じるからねぇ。だからこそ、絶対に魔法官を呼びたくなかったんだろうけど」
イデアとルークさんもこう言ってくれて。
そうなるといいな、と私は強く、心から願ったのだった。
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