第34話◇作戦会議はお茶会をしながら
一通りチィのことを説明した後、私は皆様を山小屋に案内することにした。
チィとも相談した結果、イデアの仲間たちが彼の「女神様の加護」を知っていて現状問題がないのなら、イリスのことも伝えても問題ないのでは?という結論になったから。
というわけで、私は自分に『女神様の加護』があることとその証拠の指輪を示して、同じくイデアの剣もそうだという話を既に知っているとも全員に伝えた。
その確認の後、私は山小屋のドアノブに右手をかざす。
するといつも通りに、カチッと例の音が響いて鍵が開いた。
「ふぉぉぉぉ……!!団長が女神様に頂いた加護の『剣』という形は、初代王・アストルのこともあるし知っていたが、この『建物』丸ごとひとつ分が、全部をひっくるめての加護だとは……!!この方向性の『女神様の加護』パターンをこの身をもって体感できるとは、初めてだよ……!!」
それを後ろから凝視していたアップルさんが、とても興奮した声を上げる。
「なるほど、その指輪が鍵になっているのか」
「ほええ、中はこんなふうになってたんだ~?」
アップルさんほどではないけれど、ウィリアムさんもルークさんも興味深そうにキョロキョロと部屋中を見回した。
イデアだけはもう何度も入っていて知っているから、探検はせず、寄り添ってくれるみたいに私の隣にずっといる。
「ほらね、大丈夫だ」
顔合わせの前、心配になっていた私に「うちの団員はもう全員イリスのことを認めているし、絶対大丈夫だよ」と言ってくれていたイデアだったけど、本当に彼の言う通り、心配に思うことは何もなかった。
出されている椅子は今回は五脚。
ティーセットもブランケットもしっかり五人分、女神様が用意して下さっていた。
テーブルも心なしか大きくなっている気がするわ……。
一通りルームツアー状態をみんなが楽しんでいる間に、私は人数分のお茶を用意する。
わぁ……何だか、すごくわくわくして楽しいわ。
同じ年頃の子たち複数人と集まってこんなにワイワイするのは、両親が繋がっていた他家の貴族のお屋敷に遊びに行った子供の頃以来だ。
過去に思いを馳せて。
そして今楽しそうに暖炉の中を覗いたり、ブランケットを手にしたり椅子に座ったり、思い思いに会話している笑顔の皆様を見て、私はとてもほっとしたような、優しい気持ちになった。
そして、私を加えて第一回目の作戦会議が始まる。
イデアが中心となって、他のメンバーが補足する形で、今のところの探偵団としての細かい方針を私に伝えてくれる。
「それでね、ヨトウの捕縛のため、奴の人となりや行動を把握するために、聞き込みと尾行をしようと思っているんだ」
「そうそう、尾行ね。ただ、ヨトウを尾行するのに、いまいち目立ちすぎるんだよな~。俺ら」
ルークさんが「顔がかっこよすぎてつらいなんて、罪深いよね……フフ」なんてぽそりと呟いたけれど、特に誰も何も言わなかったから、私も特に触れずにそのまま話を聞こうとしていると、ルークさんが少し大きめの声で拗ねた。
「ちょっ、誰か、せめて流さないで何か言ってよ……!!」
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