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第27話◇安心したわ、お茶しましょう?

「それを探すのが探偵助手としての初仕事、ってことね。屋敷の中で私が見られるところは、しっかり探しておくわ」

「よろしくね。今後またモルヒ公やヨトウと会計についての会話をすることがあるかもしれない。彼らの言動におかしいところがあれば、教えて欲しいかな」

「分かったわ」


 この件も私の今後の行く末に直結する話だから、結果的にこういうふうに国側の情報を得られる形できちんと捜査に関われることになったのは、多分いいことなんだと思うわ……。


「ただ、あまり目立つ動きをして、君が王家側についたと悟られてはいけないよ。君の身が危険に晒されてしまうかもしれない。だから、決して無理はしないで」

「ええ、そうね。気を付ける」


 あくまでも、普通に。

 普段通りに。


 いつも自分が住んでいる屋敷のはずだけど、これって何だか、まるで潜入捜査の任務に向かう捜査官みたいね。

 ちょっと面白くなってきたかも……!!


 とても重大な案件のはずだけど、死に戻り前の人生には起こらなかったことが、起こるのかもしれない。

 そんな状況にわくわくしてしまう気持ちが、全くないと言えば、嘘になる。


「だけど、イデアって、アルウィン殿下の部下の人だったのね?びっくりしたわ!」


 なあんだ、そうだったのね!!とすっかり安心して、私はこっそり心の中の緊張を解くことにした。


「えっ!?そっ……そう、だね。驚かせちゃったよね。ごめんね。というか、あの……実は、本当は、」

「ううん。私の方も正直、初対面の時は特に、警戒していたから……私も、良くない態度だったもの。ごめんなさい」


 疑ってしまって悪かったわ。

 彼がアルウィン殿下の側の人なら、絶対に襲撃者側じゃないんだもの。


「何だかホッとしちゃったわね。イデアも座って……お茶にしましょう?せっかくだし、この山小屋、ちゃんと使ってみたいわ」


 ちょうど暖炉の炎の火力が安定してきていて。

 これは今こそ、例のテーブルと椅子、そしてアイリス印のティーセットを使ってみる機会かも、と私は考える。


 そういえば、先日宿屋のシーニャさんと会った時にご厚意で頂いたお茶の葉を、この山小屋にストックしておこうと思って持ってきていたんだったわ。

 今から使ってみようかしら。


 私、もしイデアが敵だったら、立ち直れなくなっちゃってたかもしれない……。

 イデアの横は心地いいから。

 一緒にいられなくなるのは嫌だなって思っているから……。


 私がテーブルの上にカップやポットを並べていると、いつの間にか、じっとイデアに見つめられていて、胸の鼓動がドキンと大きく跳ねた。


 うう、凝視されるとどうしても意識しちゃうわ……。


 動揺が震えになって手元に出てこないようにと心がけながら、私はお茶の準備を進めていく。


「俺は……君が傷つくことだけは、望んでいないんだ」

「ん?なあに、イデア?どうしたの?」


 イデアは小声で何かを呟いていたけど、よく聞こえなくて、私は訊き返す。するとイデアはニコリと笑って見せた。


「……いや。単に俺もホッとしたな、っていう独り言だよ」



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