第25話◇女神様に誓って
「実は、俺は彼のことも調べているんだよ。そして会計に関わっているというのなら、君にも確認したいことが、いくつかできてしまった」
ヨトウさんが調べられている……?
イデアたち、探偵団の人たちに?森での殺人事件だけでなく?
「ま、待って。それって一体どういう……」
そんな言い方だと、イデアは南ストレリチア領の会計のことで「改めて調べなければならない」ほどの、かなり悪い情報を耳にしているみたいじゃない……?
「女神様に誓って、この山小屋内での会話は他人に話さないと、誓えるかい?」
「……ええ」
ドキドキと、嫌な感じで私の胸の鼓動が早まっている。
イデアはほんの少しためらっていたけれど、やがて意を決したようで、私に向き直る。
この時点で、あまり対外的には聞かれたくない話なのだと分かってしまう。
きっと良くないニュースだと。
「君の叔父、モルヒ公爵には、現在、脱税・背任・隣の帝国の者との違法な輸出入品の取り引きなどの容疑がかけられている。俺たちは国からの依頼でその調査にも来ているんだよ」
イデアが語る。
その胸ポケットから出されて広げられた書類、それは確かに捜査令状で、近衛騎士団の青騎士隊に宛てて出されたものだった。
「これは……!!そんな、まさか本当に!?叔父様……!!」
青騎士隊は王太子付きの騎士たちで……つまり、アルウィン殿下。
アルウィン殿下が直々に動いている。
その指示でイデアたちもここにいる、ということだ。
一周目の時にアルウィン殿下がこの領地にいた理由のひとつは、これだったのかもしれない。
一周目も叔父様は国からの疑いを持たれていて、捜査もされていたのかもしれない。
最近叔父様によく書類を任されている私には、その書類が間違いなく正式な手続きで発行されたものだと分かってしまった。
そしてその証拠に、書類の一番下の行にはアストラル王国の国家組織専用の特別な魔法印が押されていた。
法務省と財務省という二つの省、そして宰相様の印まで。
三つもの印鑑がそこに押されていて、まるで国威を示すかのように光っていた。
「知らなかった?」
「ええ……。でも、私も見せてもらえなかった会計書類が」
「ヨトウとモルヒ公、二人だけで扱っていて、君はこの犯罪に関わっていない?」
問われて、私は大きく頷く。
だって、確実に関わっていないんだもの。
「女神様と陛下に誓うわ。書類を書いた経緯も、書いた書類の中身も、覚えているから全部取り調べてくれていい」
「そうか」
イデアが応えて。その発言の重みをしっかりと受け止めてくれた。
この国においては「女神様と陛下に誓って」、この文言こそが、最大限重く真実を述べる時の誓いの言葉だから。
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