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第22話 闘争劇

 死屍累々。

 その言葉が今の現場に対して正しいだろう。



「たまげたな……まさかここまでだったとは……」



 アレクは門前の広場を見渡し呟いた。

 何百人と武装した兵士、そしてそれを上回る数のアイスウルフが此処に集結している。



(数十分で此処までになるとは……だがこんなになればマズイだろうな)



 あまりの大事。徐々に被害が広がって行けば良かったが、これでは早過ぎる。


 アレクはこの事態を深刻に見ていた。その理由はーー。



「ッ!」



 その時、大人数が此方の方に近づいて来る微かな足音を、アレクが捉える。


 聞こえて来た方向に視線を向ければ、頭からローブを纏った杖を持った者達が大勢此方に行進しているのが見えた。



「……軍か」



 ローブにはこの国で何度見たか分からない、孤高の狼を形取った紋章が描かれていた。


 しかし、アレクの目に見えたのはそれだけでは無い。


 この世界では魔法が存在する。

 魔法の利用価値は日常生活による、利便性を高める事。そして、戦闘への利用価値。


 イカラムが有する青色のオーラを纏った魔法師団が今……この世界での武器がアレクへと牙を向こうとしていた。



『お前ら! 今だ!!』



 魔法軍の方から声が響き、何故か周りに居た兵士達が一斉に後退する。



(ヤバイッ!!!)



 自分の周りに居るのはアイスウルフだけという状況に危機感を覚えたアレクは、強く地面を蹴って転がる様に建物の陰へと隠れた。


 数秒後。




 ドォォォォォォォンンッ!!!




 放たれる建物さえも覆う大きな水球が、アイスウルフの軍団の中心に降り注ぐ。


 水量は重さ。

 それは何トンという重さになり、水球が直撃したアイスウルフは身体中の骨を粉々にし、その水球の水は周りに洪水の様な波を生み、広場に居るアイスウルフ達を一掃した。



「ハハッ、マジかよ……」



 死屍累々だった筈の広場には何も無い。

 アイスウルフの死体、気絶していた騎士、公共物でさえもが何も無く、ヒビ割れた地面だけが広がっていた。


 アレクは魔法の認識を改める。

 今まで見た魔法は、全て日常・戦闘の補助による活用だった。それなのに、まさか此処まで強力な魔法が使えるとは思ってもいなかったのだ。


 だがそれと同時に、この光景を見てアレクは口角を釣り上げた。



(もし、俺が魔法を使えるようになったらどうなるんだ?)



 力という一点に於いて、武を極めた自身に敵う者は居なかった。

 だが、この世界で力を競い合う形は一つではない。


『魔法』

 この力がどれだけ自身を強くするのか……未来を想像し思わず高揚する。



「なるべく早くに『宣誓』を受けないとな」



 アレクが物思いに耽ていると、自身の近くで突然地面が爆ぜる。



「こっちだ!! こっちに居たぞ!!」

「チッ!」



 兵士に見つかり声を挙げられ、アレクは腰を低くして路地裏の奥へと駆け込む。


 これは烏合の衆を相手するのと違う。此方を明確に殺しに来ている。また戦意を失わせるのは至難の業。全員を倒すのは相当な労力が掛かる。身を隠すのが無難だろう。



(流石にあの人数の魔法使いとやり合うのは勘弁だ)



 まぁ、だからと言って逃げているだけでは無いが。


 四、五メートル離れてローブを着た者が追って来ている。これでは自分は攻撃する事は出来ないが、相手だけが攻撃出来る距離だ。


 アレクは曲がり角を曲がると、近くの空箱の上に置いてあった空ボトルを目に入り手に取った。



「ふんっ!」



 そして、アレクは曲がり角の方向にボトルを投げ込んだ。空ボトルは縦に回転しながら飛んで行き、見事に曲がり角を曲がった魔法使いの頭を砕いた。



「よしッ」



 力がない攻撃ではあるが、普通の人間が頭に空ボトルが当たったら一溜りもないだろう。


 曲がり角の奥、何人かの足音が聞こえて来る。追手だ。


 アレクはそれを聞いて、一息付いた後にまた走り出す。



「居たぞ!!」



 アレクの目的は場を混乱させる事、時間を稼ぐ事。直ぐに見失って貰っては困る。



 ~~~



「ふぅ。流石に疲れて来たな」



 逃げ続けて数十分は経ったか、アレクは壁に寄り掛かり空を見上げた。空は既に白んでおり、朝が来たことを示していた。



(時間は稼いだ……後はツクヨ達が上手くやっているかだが……)



 未だに身体は契約によって生じた身体の怠みが消えていない。その事を考えればまだ事は済んでいないという事だ。


 休んでいると、周りから人の気配がしてアレクは壁から離れ気を入れ直す。


 まだ時間は稼がないといけない。しかし、体力は底を着こうとしている……そろそろ魔法使いとの戦いに慣れていても良いだろう。


 そう考えたアレクは、駆け出す。



「ち、中断! 詠唱の早い魔法に切り替えろ!!」



 アレクの駆け出した前方。そこには魔法使いのパーティーが存在した。


 此処まで魔法使いと追いかけっこをした結果、まず第一に。



(魔法使いは、近距離での戦闘に慣れていない)



 アレクは魔法使いの脇腹へと拳を繰り出した。

 身体を鍛えた者なら、何ともないだろう子供の一撃に魔法使い達は悶絶する。


 魔法使いの基本は遠距離での強力な魔法を繰り出す事が主のようだった。


 つまり第二に、同士討ちにならないよう近距離では詠唱を短く、威力を低くするリスクを負わなければならない。



「ふっ、と……」



 最後の一人に一撃を喰らわすと、アレクは額から流れ落ちる汗を拭った。


 此処まで走り続けた脚は震え、拳を作った手には力も入らない。これ以上の戦闘は命を掛けなければならないかもしれない。


 しかし。



「今度はアイツ等か……」



 視界に入る集団、先頭に居る見た事のある顔に思わず溜息が出た。



「ヘヘッ! よおぉ? クソガキよぉ?」



 特徴的な猫背、口調。

 毒鼠の組員数十名と共に現れたのは、アレクを奴隷の身分へと落とした張本人、タインだった。

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