第七話 「剣の修行(1)」
葬式が終わり、以前のような活気が村に戻ってきたころ、ウォートンはロイを呼び出した。
そしてロイに言った。
「お前はまだ、5歳のガキだ。」
「はい、父さん。」
「まだ何もできないただの子供だ。」
「はい。」
「しかし、お前はエリックと約束をしただろう。強くなるとな。」
「はい!俺は必ず強くなります。」
「そこに迷いはないな。」
「はい!」
「…わかった。ついてこい。」
ウォートンはロイの決意を知っていた。
エリックの死はロイとって大きな悲しみだったが、それがロイを成長させる糧にもなった。
ウォートンはロイに剣の修行をつけることにした。
ロイを成長させエリックの友として、ロイを一人前の戦士にすることを誓った。
「ついたぞ。ここだ。」
と連れてきたのは。村のはずれにあるところだった。
「父さんここは?」
「ここは俺ら自衛団の剣道場だ。お前にはここに今日から通ってもらう。」
ウォートンはそういうと同時に、中に入っていった。そこには50の人くらいの屈強な男たちがいた。
「おはようみんな。」
「おはようございます。団長。…と誰ですかこの子供。」
「こいつは、俺の息子のロイだ。今日から、ここに通わせることにした。」
「団長の息子さんでしたか。何歳でしたっけ?」
「5歳だ。」
「いくらなんでも早すぎませんか?」
「いや、俺はロイを強くしてやりたい。何事も早いほうがいい。みんなもロイのことは、何か気が付いたら言ってやってくれ。」
「分かりました。」
「あと、ロイと手合わせするときは、本気でやってくれ。それがこいつの為でもある。みな、この前みたいにならないように、各自、稽古を怠るな!」
「はい!団長!」
「さてロイ、お前は俺と手合わせをしよう。」
「はい!」
「では、俺からいくぞ!」
と次の瞬間には、目の前に詰め寄ってきた。
「え?」
気づいた時には腹部に強い衝撃が来ていた。
「ぐはっ」
俺は一撃くらっただけで地に膝を付けてしまった。
そこから何度も連撃を食らった。
俺は、必死に食らいつく。
が、強すぎて反撃できずに攻撃を受けて、なんども倒れる。
「おい、ロイ。立て。受けてるだけじゃ強くはなれないぞ。」
「おらぁぁぁ!」
俺は無造作にウォートンに向かって剣を突き出した。
が、いとも簡単に止められた。
「だめだ。全然だめだ。まず、型がなっていない。そして一つ一つの動きがとろい。剣を振るだけで、何も考えていない。それでは強くはなれない。」
「ちっ、まだまだぁ!」
「遅い。」
「くらえぇ!」
「遅い。」
このやり取りをいつまで繰り返しただろうか。
気が付けば日が西に傾いていた。
「明日もやるぞ。」
容赦なくウォートンが声をかけてくる。
「は、はい。」
「しかし、最後のほうは様になっていたぞ。ま、剣士としては、全然だめだけどな。」
「ありがとうございます。」
「…帰るか。」
「はい!」
俺は、今日を通じて、ウォートンが少し好きになっていった。
まだまだ未熟な俺に、手加減なしで本気で稽古をつけてくれる。
そんな父親に感謝でいっぱいだった。
日々の修行が続く中、ロイは少しずつ剣の技術を磨いていった。
ウォートンは時に厳しく、時に優しく、ロイを導いた。