第六話 「エリックと魔物襲来(4)」
俺はものすごく興奮していた。
死者が出ている中でいうのは不謹慎かもしれないけれど、父さんの剣技とエリックさんの巨大魔法、両方ともに引かれるものがあった。
エリックさんに関しては死んでもおかしくない状況だったのに生き残って、より尊敬するようになった。
そう浮かれた気持ちでいたから、魔物の接近に気が付けなかったのかも知れない。
ロイの目の前にはいつの間にかチビリンジェネラルがいた。
「うわぁぁぁあぁぁ」
この瞬間自分端は死を悟った。
(異世界に転生してきてこんなところで死ぬのかよ、俺)
しかし、その凶悪な爪は俺には届かなかった。
俺の目の前には人がいた。その顔はよく知っている顔だった。
「エリックさん!」
俺が叫ぶと同時に俺は持っていた練習用の木剣を投げつけた。
魔物はエリックさんと俺を交互に見てにやりと笑った。
その時俺は、魔物の根源にある魔の力を、恐怖を知った気がした。
そこへ剣が一閃、チビリンオークの首をはねた。
「大丈夫か!ロイ!」
「う、うんでもエリックさんが!」
「ははは…へましちまった。ごめん。」
「おまえ、ロイをかばって…」
「たぶん俺はもう長くない。」
「そんな縁起でもないことを言うな。早くけがなんて治してまたバカ騒ぎしようぜ。」
ウォートンが泣きそうな声で言う。
「いや、無理だ。内臓がズタズタで肺も片方いかれちまった。」
「そんなぁ。僕がもっと注意してればこんなことにならなかったのに。いや僕が死ねばよかったんだ。」
「いや、それは違う。ロイ。お前には未来がある。少なくともこんな俺よりかは、な。」
「でも!」
「じゃあ1つ願いを聞いてくれるかな。」
「エリックさんのことは何でもかなえます。」
「君が、もっと強くなっていつか守るべきものが出来た時、守ってあげられるようにしなさい。」
「はい、先生。」
「ウォートン、ヒューイをよろしくたのむ、あいつ一人で抱え込むタイプだからさ。」
「了解した。」
「先に待ってるぞ。」
その夜、エリックさんは息を引き取った。
エリックさんの最後の言葉がロイの心に深く刻まれた。
彼は涙を流しながらも、エリックさんの願いを胸に誓った。
死んでしまった人たちの葬式の、遺体を焼いている炎が静かに揺れる中、ロイはエリックさんの遺体を見つめていた。
ロイは決意を新たにし、自分の成長のために、エリックさんが守りたかったものを守るために、自分自身を鍛えることを誓った。
ロイは前に進むしかなかった。エリックさんの願いを果たすために。
「エリックさん、見ていてください。私は強くなります。そして、いつか必ず…」
彼の言葉は風に乗って遠くへと飛んでいった。
次はロイが修行します。