第五話 「エリックと魔物襲来(3)」
「団長、ゴブリンの群れが村を荒らしならがら接近中です!」
「分かった!全員配置につけ!死ぬことはゆるさんぞ!」
団員が配置につくと同時に、北からやってきたチビリンの群れとの戦闘が始まった。
「全員、いくぞー!」
「おおー!」
ウォートンが叫んだのと同時に、団員たちがゴブリンに飛び込んでいき、それぞれがチビリンに切りかかっていく。
人数はゴブリン20体対自衛団40人と有利だが、たかがゴブリンされどゴブリン、チビリンたちはすばしっこいので集団、特に乱戦に強いので、戦況は五分五分だった。
そんな状況を打破するべくウォートンは剣技によってゴブリンたちを蹴散らしていく。
「全員死ぬな!」
一人、また一人と倒れていく。戦っている奴らにも疲れが見えてきた。
しかしウォートンはピンチになっている団員のところに助けに行く、
「うわぁぁあ!」
ついこの前は言ったばかりの新人が今にも殺されようとしていた。
「ちっ!”剣技・飛”!!」
剣の振る風圧によって剣の勝ちをした刃が飛んでいく。
結局さっき助けた新人も死んでしまった。
チビリンを倒し終わったときに残っていたのはウォートンを含めた30人だった。
「くそっ、すまないお前ら。」
戦闘によって死んでいった者たちを悔やみながら、残った人に命令を出そうとしたときに、エリックたちが戦っている方向から大きな音がした。
エリックたちのところで、何かがあったのだと悟り、助けが必要かもしれないと思い残っている団員に命令を下した。
「半分はここで警戒にあたれ!もう半分は俺についてこい!」
「はい。わかりました。ご武運を!」
ウォートンたちはエリックたちが無事出あることを祈りながらダッシュで戦場に向かって行った。
「厳しいねぇ。”暴風魔法・エアフィスト”!」
そうつぶやいたのはエリックだった。
最初にいた団員は40人から半分くらいまでに減っていた。
デブリンを倒した所まではよかった、しかし一息つこうとしたところにゴブリンジェネラルが現れたのだ。
「しかも、相性の悪い、チビリンジェネラルなんだよね。」
チビリンジェネラルの攻撃は普通のチビリンに比べてとても速い。
現に発見した瞬間に、2人鋭い爪で体を二つに裂かれている、残った人も攻撃をしのぐことはできても、攻撃に転じることが出来ない。
スピードならエリックも負けていないが、味方を助けながら戦うとなると、どうしてもチビリンジェネラルに後れを取ってしまう。
この瞬間にも二人やられた。
全員ともボロボロでエリックが回復魔法を使わなかったらとっくに死んでいる者もいるだろう。
(となると僕が鍵か)
この状況で攻撃できるのは、エリックただ一人である。
相手はC級の魔物で、生半可な攻撃じゃダメージは通らない。
(じゃあ、これならどうだ!)
「”暴風魔法・エアフィスト”!」
チビリンジェネラルは素早い攻撃を繰り出してくる。なのでチビリンジェネラルが移動する場所を予測して魔法を打つ。いわゆる偏差打ちというやつだ。
これが見事に決まる。
しかし、チビリンジェネラルがひるんだのも一瞬。油断した団員がすぐに切り刻まれ、チビリンジェネラルは雄たけびを上げた。
「ちっ!」
後ろから攻撃しようと回ったがチビリンジェネラルはある程度の攻撃を加えたからなのかヘイトがすべて自分に向くようになった。
(この方が都合がいい!)
「みんな!こいつを今から倒す!だから頼む!10秒だけ時間を稼いでくれ!」
「分かりました!」
そういってチビリンジェネラルに生き残っている団員が突撃していく。
死んでいった者たちの気持ちを汲みながらその怒りをチビリンジェネラルにぶつける。
僕は膨大な魔力量を消費して、中級暴風魔法の中で一番威力の高いものを放とうとしていた。
(よし魔力がたまった!)
耐えていた一人がまた切り刻まれたところで、エリックの中で最高火力の魔法を放った。
「“暴風魔法・ヴォルテックストライク!!“」
暴風魔法ヴォルテックスストライクとは斬撃を伴う旋風を巻き起こし、敵に大ダメージを与える魔法である。
「ガラァァァァアァァ」
チビリンジェネラルは、ヴォルテックスストライクが直撃しもがき苦しんでいる。
(よし、決まった!)
残りのチビリンジェネラルの体力は少しだろうと思いとどめを刺そうとしたとき、チビリンジェネラルが急に走り出した。
逃げるのかと思いほっとしたが、向かっている方向は避難所の方向だった。
(そういえば少し知能のある魔物は追い込まれたときに逃げたり弱者から狙ったりする)
どうにかして倒さないといけない、しかしもう攻撃魔法を打てるだけの魔力量が残っていない。
ふと避難所を見ると一番前にいるのはロイではないか。
(まずい!)
と思った時には体が動いていた。