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イノチノマタギ  作者: 凪雨タクヤ
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龍神モルドレッド

この物語の終盤で凪雨タクヤが登場します。

「龍神モルドレッド・・・。」

僕とテツは驚いて一瞬神父の顔を見る。

彼の顔は真っ青で、もうどうしようもないという感じだった。

僕は懐中時計を取り出す。

時間は長針が12時のほう、つまり龍神モルドレッドの方を指している。

短針はグルグルと回っている。


「ウッフッフッフッ」

モルドレッドは不敵に笑っている。

「こんなところにもハムスターが3匹。いや、無礼な虫ケラか。我々の顔に泥を塗ったんですからね。」

彼女の顔は笑顔を見せているものの、どこか怒りを内包しているようなヤバさが見受けられた。


ヘイズ神父がうなだれながら僕らの前に出る。

そして小声で、しかし僕らにハッキリと

「私が会話で時間を稼ぎます。アナタ方は全力でお逃げください。」

と言った。


テツが「でもそうしたら村以外にも火災が!」

と返すと、

「もうこうなってしまっては無駄だ!」

とヘイズは声を荒げる。

「アナタ方には使命があるんでしょう!?生きてにげなきゃだめだ!!」


「ガタガタと五月蠅い。」

瞬間、モルドレッドから深紅の色をした細い針のようなものが三発飛んでくる。

そして同時に大口径の銃声が3発響いた。

僕が銃を抜いたのだ。シルバーの銃口から煙が出ている。


「ほう。龍の血の針を知っているのか。大した奴だな。」

チリンという音を立てて針が落ちる。

「凪斗が撃ち落としたのか!?」

テツは驚いた様子だ。


「残念ながらそれが何だか僕は知りません。ヤバいと思ったので撃ち落とした。」

僕は右に体を動かしながら散開する形になるように陣形を広げようとした。

一瞬の隙を見て僕に注意を引かせて彼らを逃がそうと思った。隙というものがあればだが・・・。


「何をしてるんです!!?早くお逃げなさい!」

ヘイズ神父が左手を掲げて魔法陣を展開する。

「何言ってんだよ!神父も一緒に!」テツが叫ぶ。

「全員で逃げるんだよ!!」僕が叫ぶ。


「逃がすわけないだろう。虫ケラ共。」

モルドレッドが右手を振ると、広範囲に広がる光の環が凄いスピードでこちらに迫ってきた。

光の環はプリズムやダイヤモンドのようにギラギラと光りながら七色の光をまばゆく放っている。

僕は片手で銃を突き出し、残りの3発を全てブチ込んだ。

しかし光をすり抜けていくだけで弾丸は光の環をはじくことはしなかった。

光の輪は大きすぎてとてもではないがかわし切れるものではない。


「避けられない!」

僕は両手をかざしてとっさに防御態勢をとる。

ズギン!という痛みと共に僕の身体は後ろに吹き飛ぶ。


ドザァ!と身体が地面に打ち付けられる感覚。

僕の眼鏡は衝撃で吹き飛んだ。

身体に暖かい液体がつたう感じがしたので目を開くと、そこにはあるべきものがなかった。


僕の右腕だ。


銃を握っていた僕の右腕が吹き飛び、血がだらだらと溢れて来ていた。

「う、うわあああああああああああああああアァァァァァアアアアアアアアア!!!!!!」

僕は痛みでのたうち回る。体を一度寝返りを打たせると、別の者が目に入った。

ここまでで残った二人の叫び声は聞こえない。

聞こえないのが不自然なのだ。


僕は自分の目に入ったものを理解するのに時間を要した。

人の下半身だった。

それは、テツの上半身が、僕の右腕のように吹き飛ばされて欠如しており、内臓と思われる真っ赤なものがだらりと垂れて、赤い液体を垂れ流していた。


「あ・・・あ・・・。」

僕は自分を制御できない。

あの時の魔女の言葉がループする。


<さぁ、絶望へと進め。オマエは何と言って死ぬのかな。>

<さぁ、絶望へと進め。オマエは何と言って死ぬのかな。>

<さぁ、絶望へと進め。オマエは何と言って死ぬのかな。>

<さぁ、絶望へと進め。オマエの仲間も死ぬ。>

<さぁ、絶望へと進め。オマエの仲間は何と言って死ぬのかな。>

<さぁ、オマエの番だ。何も言わずに死ね。>


僕は震えながら視線を神父の居たところに向ける。

そこには左腕があった。

左腕以外には何もなかった。

モルドレッドの方を見ると彼女は歩いて近づいてくる。


僕は左手で右腕を抑えながらうめき声をあげながらヨロヨロと立ち上がる。

彼女は歩みを止める。

「最後に何か言い残すことは?」

彼女は子供が無邪気に虫を殺すように笑顔を浮かべている。

虫ケラがどう悲痛な叫びをあげてもかまわずに手足をもいでいくような残忍さがそこにはあった。


「何でこんなことするんだ。」

僕は虚ろな目で問いかける。

彼女は質問に答えた。

「そりゃオマエ達虫けらが龍神に喧嘩を売ったからだろう?我が弟ガレスの首をあげ、邪教徒を里にいれ・・・。」

モルドレッドは服のヨゴレをさっと払う。

「挙句の果てには亜人種まで里に入れようとした。万死に値するだろう。あんな穢れたものを近づけおって。」


もはやこの会話には意味がなかった。

論理とかではないのだ。不条理な龍神の怒りに触れて、僕は死ぬ。

あの魔女が語った通りになった。

僕の旅はここで終わるのか。

でも、テツを守れなかった。僕はガーランド商業旅団に対して来世まで頭があがらないだろう。

こんなにも無力だったんだ、僕は。特別な力なんて何一つなかったんだ。


キヲクの間で魔女がつぶやく。

<やはり残りカスではこれが限界か。虚しいものだな。>


僕は虚ろな目から涙を流す。

そして僕はそっと口にした。

「君は優しいね。」

すると龍神モルドレッドは

「ん?」と眉ひとつ動かさず、まるで天気でも気にするように首を傾げた。

その声に、同情も驚きもない。あるのは、ほんのわずかな違和感――虫が潰れたことへの小さな疑問だけだった。


僕は涙を流しながら空虚に呟く。

「そこまで理不尽なら、災害みたいなものって割り切れるから・・・。」

龍神モルドレッドはもう僕に興味もないようだった。


「あ~そうね。じゃあ死んで?火葬してあげるから。」

彼女は左手をパチンと鳴らすと僕の足元から炎が現れ、僕の身体を包んでいく。

僕は虚空を見つめながら姿を消していく。

「あ・・・ガ・・・。」

そんなうめき声が最後だったと思う。

ドサッと僕の身体は倒れ込み、炭になっていくのだった。


モルドレッドは膝に両手をついてかがんで僕の燃えていく死体を見る。

「ねぇ。ここにマタギが来てるらしいじゃない。どこにいるか聞いてないかしら?」

先程の龍神の厳かな態度とは違って女性らしい、淑女のような話方だ。

だけど僕にはその声はすでに届いていなかった。

「あら?もしかして今燃えているアナタがマタギだったりする?ウフフ!キャハハハハ!そしたらもうちょっとお話してあげればよかった!!アハハハハハハハ!!!!」


龍神モルドレッドはおもちゃで遊ぶ子どものように笑う。

目の前では僕の身体が大きな炎に包まれている。

炎は一層強く燃えていく。同時に龍神の笑い声が夜空に響く。

炎はゆっくりと燃えるのをやめていく。


・・・しかし、炎は燃えるのをやめたのではなかった。

ゆっくりと炎は揺らめくのをやめていく。

同じように燃えている状態なのに、そのゆらめきだけがゆっくりになっていく。

龍神は目の前の現象を感知しはじめる。

先程の毛ほども気にしていない疑問とは違って、奇妙な現象に本物の疑問を抱き始める。


炎だけではない。

周囲の現象がゆっくりと時間を止めていく。

そしてついに目の前の炎は揺らめくのを完全に止め、炎の形をしたオブジェが存在しているような状態となった。

(これは・・・何!?体が全く動かない。意識だけが動いているような・・・。)

すると、龍神でさえも驚愕するものが現れる。


目前の止まった炎から、ヌっと人影が現れた。

それは先ほど自分が焼き殺した人と良く似ていた。よく似ていたが、何かが決定的に違った。

来ている服こそ同じだが、失ったはずの右腕は完全に元に戻っており、消失した服の部分から肌色の手が伸びていた。

髪は先ほどのマタギと思われる者とは少し違ってうねった髪型をしていた。

垂れた前髪から瞳が龍神を除いていた。


どんな闇よりも深いような漆黒の瞳は、静かな怒りと呆れを携えてこちらを睨みつけていた。

龍神は生まれて初めて恐怖を感じた。

影はゆっくりと歩いて龍神モルドレッドの目の前で止まった。


「どんな気分だよ。」

(・・・!?)

影が口を開いたことに驚愕する。

「強者に理不尽に虐げられる気分は。」

影は龍神の首を、先ほど吹き飛ばされた右腕でつかみ持ち上げる。

その瞬間あたりの時が動き始めた。


かの魔女も驚きの様子を隠せない。

「そんな・・・!ありえない!」

自分がいるキヲクの間を振り返る。

すると開かずの間となっていた扉が少しだけ開き、中から真っ赤な光が漏れていた。

「これは・・・!?」

ドロドロと何かが漏れるような音が響く。


「あ・・・がァ・・・」

モルドレッドは声をあげようとするが、首をしめつけられてうまく喋ることができない。


「聞こえねーよ。」

モルドレッドが口からよだれや泡を吹き始めながら苦悶の表情で影を見る。

「あ?だからさ、これ以上俺の友達を苦しめないでもらってもいいかな。」

その瞬間龍神は全力で影の手をにぎり声を振り絞った。

「オマエ何者なんだ!!??ただのマタギじゃないのか!??」

すると影は答えた。


"榊凪斗だよ。正真正銘の"


「ハァ・・・?どういう・・・

龍神モルドレッドが何かを喋りきる前に何らかの力が働き、龍神は力尽きる。

影は拘束していた右手を解いて、龍神だったものをドサっと落とした。

目の端でその涙を流しながら虚ろになった遺体を見て、振り返って神父とテツの遺体を見る。

「負けないでくれよな。相棒。」

そういって影は目をつぶり、その場にドタっと倒れた。


その場には静寂が訪れた。

先程僕の身体を焼いていた炎の残りカスが、地面の草や枯れ葉をしみじみと燃やしていた。


-ゲトの里近くの森林-

「どうも皆さんこんにちは!!!!ナイトオブレイヴンズ。レイヴン02の凪雨タクヤです!!本日の任務はゲトの里を襲う龍2体の討伐です!!モーホー!しびれ罠持ってったほうがよかったかなぁ。」

王立特殊部隊ナイトオブレイヴンズのナンバー02凪雨タクヤは任務に向かっていた。

耳に着けたインカムで王国の指揮所とやりとりする。

「レイヴン02、アナタが高速で森の中を移動するので偵察機がそちらを視認できません。」

オペレーターと思しき人物が凪雨を咎めつつ状況をつたえる。

「それに今回の相手はゲト山の龍神やその側近ですよ?そんな装備で大丈夫なんですか?」

「大丈夫だ、問題ない。」

凪雨タクヤは無線にも関わらず振り返って返事をする。

一瞬の静寂が訪れる。


「相手は人間からしたらずっと超位な存在だと言っているんです。大丈夫なんですか?」

オペレーターはイラつきを隠せない。

凪雨タクヤは振り返る。

「一番いいのを頼む。」

オペレーターは何も言わないことにした。


凪雨は大きくジャンプすると空中で回転(する必要のない)をしてゲト山の湖の畔に着地する。

02と書かれたナイトオブレイヴンズのロゴを背負い、ぬっと立ち上がる。

「おおっとこれは絶句!!龍神と思しき可愛い女の子とバラバラになった遺体に報告にあったマタギの方なんじゃあないの?これが俺の!!実況報告できる能力!!!"アナザー・イレブン"だ。」

ザっと無線の音が鳴る。

「見つけましたか、凪雨中佐。」

「うん。多分この人達でしょ?でもターゲットが見当たらないわ。」

凪雨は遺体と死んでるかどうかわからないマタギの身体に手のひらサイズの装置を付けた。

まわりをきょろきょろとした後、

「えぇ~どこにいるんだよぉう」と声をぐにゃりとまげて途方に暮れる。


その瞬間、空から龍の血の針がビュンと飛んできた。

凪雨はどこからともなく取り出したナイフでカキンカキン!と弾いた。


すると人型の、鎧と龍の尾をつけた二人の騎士が木の上に止まった。

「お前がモルドレッド様をやったのか。」

凪雨は首をだらんと龍騎士のほうに向ける。

「ボクじゃな~い~~~!!!僕じゃない~~僕じゃあなああいいい~!!!」

話が通じなそうない相手に龍騎士たちは会話を諦める。


「にわかには信じがたいが、こんなボンクレだからこそ侮れないかもしれん。とにかくモルドレッド様の遺体を回収するぞ。」

しかし、前に凪雨タクヤが立ちはだかる。

「それはできないZE。こいつらにつけた結界装置は何者にも突破できな-」

バリンという音と共に結界が破られた。

「何ィイイイ!!!!」


龍騎士たちはモルドレッドの遺体を持ち上げた。

「このマタギと思われる奴も連れて行こう。目覚めたら何か知っているかもしれん。」

そのまま持ち去ろうとするので、凪雨は銃弾を二発頭の鎧にブチ込んだ。

ズドンズドン!ガキンガキン!という跳弾の音が響く。

「勝手に遺体持ち出すのやめてもらっていいですか?」

凪雨が邪魔をすると、イラついた片方の騎士が手から槍を召喚し、凪雨のほうに突っ込んできた。

「邪魔だ!!さっさと死ねぃ!」


凪雨は持っていたナイフで槍の軌道を少し逸らすと、龍騎士の鎧の腹の部分に拳を入れた。

すると何かの能力が発動したのか、鎧が光始め、ジリジリと電撃が走る。

龍騎士は「ウガガガガ!」と電撃を浴びるような音を出して倒れ込んだ。


「最強同士の闘いってのは。」

凪雨タクヤが立ちはだかる。

残った龍騎士が身構える。

「バシバシ撃ち合うんじゃなくて、一撃で決まるんだよね。」

凪雨は手を振りかざすと黒い炎が現れ、さらにその中からロケットブースターのついたハルバードが現れた。

数回ハルバードを振りまわし、ポーズを決める。

「オマエ、今俺のこの武器をデ〇デ大王みたいって思っただろ。その通りだ。」


龍騎士は槍を構え、

「やはりお前がモルドレッド様を・・・何者だ。」

凪雨はフッと笑い、ハルバードを地面に突き刺す。

「俺は凪雨でもタクヤでもない!俺は、貴様を倒す者だ!!」

ドヤ顔をする凪雨を尻目に、龍騎士は会話を続ける。

「目的はなんだ。」

「お前らはやっちゃいけないことをした。龍神のプライドとかいうくだらないものを理由に。」

凪雨は息を深く吸って

「俺は、弱者を虐げる奴を決して許しはしない!!ドォーン!!!!!」

凪雨は両手を組むような形で掲げ、尻を突き出すポーズを取る。


遺体が転がる湖の畔にまた静寂が流れる。

龍騎士が覚悟ぉおおといいながら魔法を繰り広げて同時に突っ込んできた。

ハッとすると目の間に黒いハルバードが飛んでくる、龍騎士が弾き飛ばすと凪雨が回り込む動きを見せた。

それに合わせてバックステップでさらに距離を取ろうとすると、その動きにもついていく。

一瞬の動きだが、凪雨は鼻の穴を広げ、目を丸くして、つまり変顔で風を切っていく。

ズドンと地面に叩きつけると、凪雨は上空にジャンプし、

「とっておきだぁ。」

といって手から波動の弾を出して直撃させる。

さきほどのジリジリとした電撃が残り。騎士は静止した。


「龍神の護衛を倒すことができる能力!!!アナザー・イレブンだ。」

凪雨タクヤはオペレーターに、任務の達成を報告した。

俺・・・参上!!

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