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イノチノマタギ  作者: 凪雨タクヤ
23/31

覚悟と決意

ちょい今回は短めかな!

男は自分の白髭を手でいじりながら現場を見つめている。

そして僕らの方に気づくと、二度見をして笑顔を見せた。

「おいおい、ガーランドさんじゃあないかよ!」

「バッジ巡査長じゃないかよぉ!!」


二人は親しい中だったのか肩を抱き合って挨拶をする。

背中をバンバンと叩く音が、お互いのてのひらの大きさを物語っている。


「巡査長は昔の話だ。もう警部まであがっちまったよ。部下をしごく毎日はしんどいだけだ。」

バッジと呼ばれた白髭の男は満足そうな顔で語っている。


ガーランドも旧友に会えてうれしそうだ。

「あんときアンタがいなかったら俺達の部隊は動くことができなかったからなぁ。」

「何言ってんだよ。陸軍ですでに頭角を現してたオマエだったら結局どうにかしてただろうが。」


しばらく話したあと、僕達をほったらかしていたことに気づいて、おっとそうだったマタギの方がいるんだったとこちらに注意を向ける。

バッジは胸のバッジを見せて(全然駄洒落を言うつもりはないんだけど)身分を証明して挨拶する。


「はじめまして、マタギの方。どうやら災難だったようだね。この街に来てすぐこんな事故に巻き込まれるなんて・・・。」

バッジは顔を傾けて遠い目で店の方を眺める。


どうしよう。これやった原因が僕だなんて言えない。

野次馬や店の調査をせかせかとしている人たちが大変そうにしているのを見てなお一層いいだせなくなる。

どうしたものかと手をこまねいていたら、フレデリカが主張した。

「バッジさん、すみません。コレやったのアタシ達なんです。」

バッジが眉をひそめてガーランドの方を見る。

「・・・あぁそうだ。俺らだよバッジ。すまない謝るよ。」


するとバッジは首を振る。

「いやそれはいいんだが、ここに帝国のエージェントが居ただろ?ソイツの目的を探るのが仕事だ。」

幸い人的被害はないしなと付け加えて、さらに続ける。

「ドランド帝国の秘密部隊が、ゲトの里で目撃されたらしい。」


ゲトの里という単語を聞いた瞬間、ネルの耳がピクっと反応した。

「ゲトの里というと・・・龍神が統べる里でしたわよね・・・。」

ネネ姉さんは知っているようだ。

しかも、あまりよくない印象があるのかただならぬ空気感を感じる。

ガーランドが腕を組みながら少し俯いたあと

「あぁ・・・前に俺が調査部隊で行ったときに痛い目にあったとこだ。」


痛い目というとやはり戦闘になったということだろうか。

しかしこの口調から察するに、あのトリカエサマの村のような近寄りがたい、触れたくないといった印象だ。


「そのゲトの里の奴らとここに来た奴らを調査しに来たんだが、到着したらこの有様だった。もっとも、マタギの方が居たってことは魔力がらみのハナシなんだろうがな。」

とバッジは続けた。


ガーランド商業旅団はバッジとさらにいくつか情報のやりとりをしてから離れることになった。

「ゲトの里に行くぞ。」

ガーランドが腕を組みながら佇んで、淡々と言う。

「ホントにいいのかよ?オイラあいつら嫌いっていうか・・・ガーランドが一番行きたくないんじゃないのかよぉ。」

テツがガーランドを気遣うように言う。


事情のわからない僕のためにネネ姉さんが説明をしてくれた。

「ナギトさん・・・ゲトの里、というか龍神は非常にプライドの高い連中なんです。特にオークや亜人種をひどく差別している連中で・・・」

「それで前に"痛い目"にあったんだね。」

「はい・・・。」


僕は、そこまで聞いておおよそ事情を把握した。

つまりオークであるガーランドがゲトの里に行って、そこの住人か龍神かわからないが、

そいつらに迫害の限りをされた・・・みたいなことなんだと思った。

もし迫害というレベルでなくても、差別的な何かをされたに違いない。


僕は静かに怒りの炎を燃やしていた。

それは自分を気遣ってくれたガーランド商業旅団を侮辱されたことだけではなく、

その"龍神"を自称している連中のことが気に入らなかった。

トリカエサマと同じような、都合の悪い他者を徹底的に虐げる神を自称するモノが。


精神の空間が少し歪み、あの魔女が姿を現す。

<残りカスのオマエもいっちょまえに怒るんだな。飄々として自分が虐げるときは見向きもしないクセに>

彼の性格が少し移ったのかな。だとしたら少し嬉しいような気もする。


・・・しまった。完全に感情が顔に出てしまっていた。

でもネネ姉さんはそんな僕を見て

「ナギトさん、ありがとうございます。私の大切な人のために、怒りを抱えていただいて・・・。」

そう言って、笑顔を見せてくれた。


僕はこの人達に守られている。

だけど同時に、この人達を守りたいと思った。


「ガーランド。それでもゲトの里に行くということは、そこに宝玉があるんだね。」

僕は覚悟を持った表情で聞く。

「そうだ。だから行きたい行きたくない関係なく、行かねばならんのだ。」

僕は彼の目を見ながらうなずく。


「皆。僕はこの世界で宝玉を集めて、マタギノイノチに行かないといけない。この世界の人に教えてもらった、人から授かった使命だけど、僕はこの使命を全うしたい。ゲトの里についてきて欲しい。」

何故だろう。自分の中の何かが変わったのか、覚悟が決まったのか、普段後ろめたく生きていた僕からこの台詞が自然と出てきたのだった。

フレデリカやテツが、ネネやガーランドが、真剣な眼差しで突然まばゆく光る希望を見たかのような視線を送る。

ネルはいつもと変わらない感じだが、何かを感じ取っていたように思える。

いずれにせよ、"ガーランド商業旅団"ではなく、この"榊凪斗"が行こうと言い出したことになり、一行の気持ちは前に向いていた。


傾きかけた夕日の赤い光が山やスーディの街を切っていく。

エンジンがかかるとトレーラーは夕日に向けて走り出した。

僕らには覚悟があった。どんな困難をも受け入れる覚悟が。


だけど僕らのこの先の旅路が、悲しみと絶望を纏って降りかかるなんて、この時は考えてもみなかった。


バッジさんこの先出てくるのかな。多分出てくるけど。

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