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イノチノマタギ  作者: 凪雨タクヤ
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風の街「スーディ」

凪斗くん。トリカエサマの件でけっこうダメージもらってます。

次の街にいく道中からです。

少しずつエンジンの音が大きくなってくる。

たまにタイヤが地面の状態に合わせて音色を変える。舗装された道路は、この世界では限られた場所にしかないらしい。

ガーランドが無線で何かを報告しているみたいだ。話の内容はあまり聞きたくないが、レイヴンズとかトリカエサマという単語がうっすらと聞こえたので、どうやら昨日の村のことを報告しているみたいだった。


昨日は何故だかぐっすり眠れた。

たまにあるだろう?すっごく悲しいことがあったのになぜかよく眠れるっていう・・・。

きっと自分が認識している以上の疲れが溜まっていたんだろう。

でもあの村はなんというか、この世のくすんだどす黒い、見てはいけない気持ちの悪いモノ・・・を目にしたようなそんな気分にさせるものがあった。


目の前で襲い掛かってきたのは紛れもなく人間なのに、まるでケモノが駆除されているような具合でなぎ倒され、粉微塵になり、肉片になっていった・・・。


そんな状況だったのに、昨晩はあのキヲクの間には招待されなかった。

自分で行けばいいのに招待されない、なんて他責な考えなのだけども。


ガーランドがひとしきり報告を終えたのか、トレーラーに据え置きの無線を置いてフレデリカを呼ぶ。

「おーいリカ、運転変わってくれ。」


あれ?リカちゃんって年齢いくつだっけ?

そう一瞬考えたけど、吸血鬼なんだし見た目以上の年齢とかあるのかな?とか、そもそも車を運転できる年齢にどれくらいの制限があるのかなとか考えた。フレデリカがほいほーいと返事をして運転を交代する。ガチャガチャとレバーを慣れた手つきで操作して、またトレーラーが走り出す。


運転している彼女をしばらくの間見つめていた。

青空の中を走る彼女はなんだか未来に向けて走っているようだった。

無表情で何の気なしに運転しているように見えるんだけども、その姿に見とれてしまった。

こういう何気ない時間を眺めているのが、何故だかすごく幸せに感じる。


さすがに見つめすぎたのか、ルームミラーをチラと見たフレデリカと目が合う。

「ちょっと何よナギトさんアタシの美しい運転姿に見惚れちゃったワケ?」

フレデリカがからかう。

僕は、そうだよと答える。

「ちょっとやめてよぉ~アタシが調子乗っちゃうじゃないの。」

フレデリカは嬉しそうだ。


「ナギトさんはリカちゃんが本当に好きね。」

とネネ姉さんが言う。それに合わせて、ネネ姉さんの膝で寝ていたネルが「キモい。」と吐き捨てた。

僕は大層このオオカミの少女に嫌われているらしい。ネネ姉さんは取り成そうとしてくれてたが、僕は愛想笑いをすることしかできなかった。


ガーランドが砲塔の方から降りてきて、次の目的地について話してくれた。

次の街は風のまち「スーディ」というところらしい。

「この町はたくさんの風車や風力発電があってな。大きな谷の合間に作られた町だから常に絶景なんだ。」

「へぇ!いいなぁ。それは楽しみだよ。」

できれば晴れた日にその町で滞在してみたい。快晴の日にその絶景を楽しんでみたいと思った。

僕の目はきっとキラキラとしていたに違いない。


「あぁ・・・あんなことがあったからな・・・。俺たちもナギトに、少しはこの世界にきてよかったって思って欲しいんだ。」

ガーランドはどうやらあんな村や事件に巻き込んでしまって申し訳ないと思っているようだ。

フレデリカは顔色を変えずにまっすぐ前をみてトレーラーを走らせている。

「ナギトさん。本当につらいと思ったら無理せず言ってくださいね?私の魔法で傷は癒せても、心に負った傷までは治せないですから。」

ネネ姉さんも労わってくれてる。この人達は本当に強い。

戦闘がどうとかではなく、人として。

きっと今までも数々の経験をしてきたのだろう。

自分達のこともしっかり理解して、そのうえで僕を気遣ってくれている感覚がある。


「いやいや!いいんですよ!この世界ってなんだか彩があるっていうか、人も世界もとても綺麗だから。って、いつの間にか敬語になっちゃったけど。」

するとフレデリカは悲しそうに

「そんな綺麗すぎるってことはなかなかないんだけどね。」

と言いながら遠くを見つめた。

ネルがその台詞を聞いてピクっと反応した。


「まぁ!スーディはこの国でも観光客が来る名所だからな!もてなしも格別だぞ?マタギが居るって伝えてあるからな!」

ガーランドが自信ありげに語った。

この世界の人たちが自慢げに話す町は素直に楽しみだ。

しかし毎回毎回マタギだマタギだともてはやされるのは少し疲れる気もしないでもないけど・・・。


そうこうしているうちに、崖の下手にトレーラーが止まる。

トレーラーから降りるとすぐにそよ風より少し強いくらいの風が頬を撫でる。

ネネ姉さんやフレデリカの髪がフワっと浮かぶのが少し芸術的だ。


なるほど風の街というだけあって風車や風力発電のプロペラが幾枚も回っている。

こうしてみると改めて自分が元居た世界となんら変わらない風景を見ているような気がする。

グランドキャニオンにたくさんの風力発電設備をつくって街にすればおおよそ同じ景色が見れるのだろう。


街の方を眺めると、設備がよくておしゃれな大学のような綺麗さのある町だ。

この世界でも自然の力を利用した発電はクリーンなイメージがあるのだろうか?

一つ一つの建物も今までの村や町に比べてだいぶ進んでいるように思える。

空を見上げるとプロペラ機と思われる飛行機が雲の合間を飛んでいた。

ルプネグルグの懐中時計を見ると、3時17分を指している。


「ナギト!景色もいいけど先に街の役所に行こ!」

フレデリカに急かされて一行についていく。

役所はそこまで大きくない建物で、赤レンガと白い支柱が良いコントラストになっているところだった。

入ると正面に向かって対応する受付がある。


奥の受付の眼鏡を付けたライオンのような女性の亜人が「ガーランドさん、こちらです」と手を振っている。受付につくと滞在やタスクに関する話を少しした。その後すぐに受付の人が奥に行った後、一人の女性を連れてきた。


「はじめまして!本日スーディのご案内をさせていただきます。ニイジマと申します。」

そう話す赤髪で口紅をした大人な雰囲気を感じる聡明な女性は僕の方を見ている。服は濃い赤色をしたスーツのような恰好で、できるOLといったイメージだ。

「本日はマタギの方がお見えになったとのことで!私も初めて見ました。光栄に思います。」

そう言いながらニイジマはお辞儀をする。僕は、ああどうもと返事をしながらと軽い会釈をする。


「今日は、ナギト専属でスーディをご案内してくださるとか?」

ガーランドは前もってその話をしていたらしい。

「ええ!最新の護衛兼癒しのメイドアンドロイドを連れて参りました。この街にいる限り凪斗さんの安全は100%保証されてます。」

ニイジマさん(?)の自信たっぷりの顔をみる限りありったけの最新技術を詰め込みましたという感じらしい。でもその肝心のメイドロボはどこだろう?建物内にはいないみたいだ。


「えぇー!すげぇ!オイラ人型のアンドロイドは見たことないんだ!そこまでいってんだなぁ・・・。」

テツは目をキラキラさせている。

「ニイジマさん!でそのアンドロイドはどこにあるんだよぉ。」

ニイジマは車のキーのようなリモコンを取り出してスイッチを押す。すると役所の外にあったコンテナがグゥーンという低い音で上下に開いた。そこに規則正しく並んでいたメイドアンドロイドが続々と出てくる。少しも他の個体とブレない動きはまさにアンドロイドといった感じだった。


顔はあえてアンドロイドと伝わるようなデザインだが、皆綺麗な顔立ちで髪もそれぞれ個性があり、色がついているのもあって不快感はない。

先程護衛兼癒しということもあるのか16-19歳の女性をモチーフにしているような見た目だ。


「ほぁーすんげぇ!一体だけでも売ってくんねぇかな!」と手をわしわしさせるテツ。

「ちょっとテツ!この子たちが美少女ロボだからかなんか手つきが変態みたいだよ・・・。」

フレデリカのツッコミが入った。


「この最新アンドロイドは先ほども申し上げた通り、戦闘もこなせる万能型のタイプです。

BMOM-01A Gen2という型式なので、今回のお仕事が終わったらぜひお調べしてくださいね。

私達はビーマムと呼んでいます。ただ、この型はまだ一般には発表されてないのであなた方が最初の目撃者になりますかね。」

ガーランドがビーマムのロゴを一瞥すると、少し首を傾げた。


「では凪斗さん、こちらです。まずは近場のレストランでおおよそこの街について説明します。

魔法妨害装置も付いているので、凪斗さんはご安心してついてきてくださいね!」

ニイジマはにこやかな笑顔を見せた。


「いいないいなー凪斗!こんな綺麗で最新アンドロイドちゃんたちといちゃこらできてさー!」

「ごめんテツ。出来る限りこの子たちのこと聞いてみるよ。」

そう言って役所を出ようとした瞬間、ネルが僕のコートの裾を掴んだ。

僕は少し驚いて彼女のほうを見る。ネルはいつもの険悪な表情で、だけれども何かいつもと一層鋭い目つきで、「ホントにいいの?」と言った。


「えっ?」

僕は一瞬ネルが声を掛けた理由を考えたが、

ニイジマの、さぁ凪斗さんこちらですという声にそのままついて行った。

縦長のリムジンのような車にメイドアンドロイドとすし詰め状態で乗り込む。

アンドロイドは声も出せるようで、「ナギトサン、クルシクナイデスカ?」なんて

僕が好きだった声優の真矢ネルさんみたいな声で問いかけてくる。

リムジンが走り出して揺れる中、アンドロイドは僕の方を見て微笑みかけてくる。


他の受付がガーランドとフレデリカを呼んで、滞在日数やタスクの確認をする。

しかしガーランドはどこか腑に落ちないのか、考え事をしながら話を聞いている。

「ねぇ、ガーランド。どうかした?」

「あぁリカ。いや、大したことじゃあないんだが・・・あのアンドロイドがつけてたロゴ、どっかで見たことある気がするんだよな。」

「ロゴはわかんないけど、私もなんか引っかかる。比較的安全な街で、なんであそこまで重装備の戦闘ロボなんて連れてくるかなって。

機銃やらランチャーやら付いてたし、おまけに魔法妨害装置なんて・・・。」

そこまで言って、フレデリカとガーランドは目を合わせた。


「なぁネル!なんで凪斗を止めたんだ?オイラやっと仲良くなったのかって安心したぞ。」

「・・・あの女、火薬のにおいがした。」


彼らは気づいたのだった。

メイド型アンドロイドの装備が、ガーランド商業旅団と正面から戦えるだけのものであると。

そして、最重要護衛対象である榊凪斗を敵のど真ん中に放置してしまっている状況に。

僕もすごい可愛いメイドさん型アンドロイド欲しいです。

もちろん会話できる奴。

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