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イノチノマタギ  作者: 凪雨タクヤ
20/31

狂気からの脱出

フラフラと沈みかけの太陽を背に正門を出る。

坂の下のほうからガーランドとネネ姉さんが驚いた表情で駆けあがってくる。


「ネネ姉さん!大丈夫なの?体調が悪そうだったのに。」

僕はフレデリカの肩を持ちながら言う。

「ナギトさんたちの方が心配ですよ!あの轟音と閃光は一体・・・。」

ネネ姉さんは車酔いが治ったような表情だった。

きっとそこまで重症ではないにしろ身体にムチ撃って駆けつけてくれたのだろう。

「お前らその傷どうしたんだ?!トリカエサマとやらとやり合ったのか?」

「うん。やっぱり旅人の失踪も彼らの犠牲になってたようなんだ。リカちゃんも襲われて・・・。トリカエサマはなんとか倒したんだけど・・・。」


そこまで言うと、二人は驚いた顔をしたが、ヘロヘロの僕らを見て先にトレーラーに戻ることを優先したようだ。さぁ行こうとガーランドがリカを抱える。

ネネ姉さんは僕にヒーリング魔法を掛ける。


行きであの王国騎士と戦った坂を下りる。

ガーランドがトリカエサマはフレデリカが倒したのかと聞くので、そうだと答える。

疲れた体をいたわりながら説明をするが、フレデリカが呻きながら違うわよと口をはさむ。


説明をしながら自分でもさきほどの現象を思い返す。

あの銃はいったい何だったのだろうか。

とにかく僕は、あの調子づいた神が憎かった。

憎くて憎くてしょうがなくて、体中の皮膚という皮膚から憎しみの液体が流れでてきそうな

くらいの殺意が芽生えた。


僕はその対象が人間だったらと思うと、ゾッとした。

きっとあの神を確実に葬らんとする僕の意思は、同じように引き金を引いただろう。


しかし、そんな感情が実態化したかのようにあの銃は現れた。

そして僕は、馴染んだものを生活で使うように引き金を引いて、あの神は粉々になった。


坂を下ると、村が見えてきた。

あの村人たちに睨まれる前にさっさと逃げ出してしまいたい。

だけど何日も歩きっぱなしのように体が重いので、このままベッドに横たわってしまいたいという感情もある。


しかしなんだか村の様子がおかしい。

祭りでもやっているような騒がしさがある。

ここにたどり着いたときに感じた妙な静けさや雰囲気が感じられない。

もっと何か恐ろしいことが起こっているような予感がして胸騒ぎが止まらない。


いったい何が

そう言おうとした瞬間だった。


ウガアアアアアアア!という叫び声がこだまする。

村人が火だるまになりながらこちらに走ってきて、そのまま息絶えた。

「なんなんだコレ・・・!」

戦闘に慣れているガーランドやネネ姉さんも戦慄している。

すると村の稜線上からわああと合戦でもしているかのような声が聞こえてきた。

そこまで足を運ぶと、なんと村人が殺し合いをしていた。


村人は手に鎌や包丁を手にして互いを刺し合い、その両方ともが狂気に満ちた顔をしている。

大声をあげながら、

「もうトリカエサマはいないんだぁ!」「トリカエサマバンザアアアアアイ!!」などと口走っている。


僕らを見つけるや否や、取っ組み合いをしている数人の村人が襲い掛かってきた。

ガーランドがすかさず防御し、大斧で村人を真っ二つにする。

僕とフレデリカは茫然として佇むことしかできない。


「ガーランド!やめさせろ!どうなっているんだ!」

僕はたまらず声を荒げる。

「わからん!だがあのトリカエサマとかいう神様がいなくなって、

リミッターのようなものが外れたのかもしれん!とにかく逃げるぞ!」


この村全体が敵というか脅威になり立ちはだかってくる。


-そりゃああれだけ崇拝されていたカミサマが突然いなくなったら、村人達もさぞ絶望するだろうね-

いじわるな魔女の声が響く。

そんな・・・僕はこんなことを望んでいたわけじゃない・・・!

-でも、結果的にはそうなった。-

・・・クソッ!


ネネ姉さんは防御結界や攻撃魔法を巧みに使いこなし、ガーランドはフレデリカを庇いながら大斧を振るっている。

フレデリカもなんとか銃を撃ち込んで村人を始末していく。

僕はといえば・・・


ズドン!

と一発僕に切りかかってきた村人に銃弾が当たり、砕け散っていく。

「何してるの!ナギトくん!!引き金を引いて!!」

フレデリカが守ってくれたようだ。

彼女に言われて銃口を他の村人に向ける。

だけど・・・


-彼らは人間だ-


僕は引き金を引くことができない。

すると数人の村人が塊となって押し寄せてきた。

やられる・・・!

そう思った瞬間、目の前の地面が吹き飛んだ。

ドゴォーン!という轟音が響く。


振り返ると、トレーラー上部の砲台がこちらに向いている。

どうやらテツが物凄い精度で砲撃をして村人たちを吹き飛ばしたようだ。

この機に乗じてトレーラーに乗り込み、すぐに車を走らせる。


ある程度の距離を行くと、先ほどの村の狂気から逃れたような感触があり、

一時的な落ち着きを皆取り戻した。


「なんとかなったな。」

ガーランドが口を開く。

「今日はなんというか、皆だいぶキツイ状況に置かれたようだ。この先の予約した宿営地で休もう。」

全員が淀んだ空気の中で険しい顔をしている。

砲台から降りてきたテツも状況をある程度察したのか神妙な面持ちだ。


「ねぇ、あの村人たちは・・・。」

フレデリカが問う。

少しの沈黙が流れた後、ネネ姉さんが答えた。

「彼らの精神とトリカエサマという神はおそらく繋がっていたんだと思います。教会で閃光が発せられたのと同時にその繋がりが途切れるのを感じたので・・・。おそらくもう、彼らの中に生存者はいないと思います。」

僕は横目でその話を聞いている。


「あのトリカエサマという神様は・・・」

「トリカエサマは・・・!」

僕は少し間を置いて、

「”カミサマ”じゃあなかったよ。」


と言った。

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