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イノチノマタギ  作者: 凪雨タクヤ
10/31

カルロ村

昼すぎにサンドイッチをもらい、お腹を満たしてから旅を再開させる。

あんな惨状を見たのに、不思議と人は腹を空かせるらしい。

もちろん僕、榊凪斗サカキナギトはグロ画像を見ながら食事するなんてことは好んでしないが。


ガーランド商業旅団の皆は慣れているんだろうか、モグモグとサンドイッチを頬張っている。

パンとトマト、レタスにベーコンと僕の世界にもある普通のサンドイッチだ。

トレーラーや売り物にする武器は観たことがない独特なものもあったが、自分が元居た世界と

同じようなモノは意外と多い。


「凪斗、サンドイッチどう?」

リカが笑顔で聞いてくる。

「うん!すっごく美味しいよ。サンドイッチ好きなんだよなぁ。特にこんな天気で旅をしながらなんて

美味しさ百倍だね。」

「そんなにサンドイッチ好きなの?じゃあサンドイッチマンだね!」

僕はあんなに漫才は上手くない。けど、この世界では通じないツッコミなんだろう。


吸血鬼の女の子やオークの大男とかと旅をしてるなんてまだ信じられないが、

一方で恐ろしいほど早く慣れてしまっている自分も居る。

種族や見た目が違っても、言葉を通わせて心を通じさせるのは本当に大事なんだな。

なんて思っていた。


トレーラが村の中にある駐車場に止まる。


「ついたよ!ここが最初の目的地、『カルロ村』だよ!」

リカが笑顔で村を紹介する。


-カルロ村-

農業、特にブドウの栽培が盛んなメリル連合王国首都郊外の村。

ここで作られるワインは格別であり、安い値段でも肉料理と一緒においしく

いただける。


「オイラはトレーラーの点検と砲塔の修理用品を買ってくるから、宝玉とタスク確認は頼むぜ!」

テツはどうやら別行動するようだ。

それぞれのメンバーが役割を持っていて、なんだか楽しい。

ところで、気になる点もあった。

タスクとはなんだろう。察するに、ガーランド商業旅団への依頼だろうか?


「ねぇ、ガーランド。タスクっていうのは?」

「あぁ、ウチにくる依頼だよ。いろいろモノの取引したり人や魔獣を討伐したり・・・。」

「”ヒト”も?」

「あぁ。どうせ目にすることになるからな。といっても無実の市民を殺すわけじゃないぞ?

滅亡教団やテロリスト、狂暴な殺人鬼とかだからな。完全な悪だ。」

完全な悪という言葉には少し違和感を覚えたが、もっと不可解なのは依頼内容だ。

僕らは商業旅団で、エルフのお姫様も同行していて、厄介事には巻き込まれたくないはず。

どうしてそんな危険な、僕の世界だったら特殊部隊が対応するような事案を引き受けるんだろう?


「そんな危険なことも引き受けるの?ネネ姉さんもいるんだよ?」

「ウフフ。凪斗さんお優しい。惚れちゃいそう。」

こんな素敵な人に言われるのはやはり照れる。

「安心しろ凪斗。姉さんを連れているだけあって、俺たちは強いぞ。

というか姉さんも超強力な魔法を使うから俺なんか非にならんくらい強いがな。」

すると、明らかにエルフのお姫様の態度が変わった。


「ちょっとガーランド!?私よりアナタ様のほうが立派なのよ!!たくましさでいえば本当に・・・アナタがステキなんですから!」

豹変の仕方がちょっと異常じゃないか?慎ましさが抜けた感じだ・・・。


「ナギト、気づいてるかもだけど、ネネ姉さんガーランドのことが好きなの・・・狂気的なくらい。」

リカが小声で教えてくれた。

僕は、あぁーなるほどという顔をする。


「もしネネ姉さんが森のわるーい魔女だったら、何人犠牲になるのかなってくらいだもん!姉さんの魔法ホントにすごいと思うよ!」

「リカちゃんも褒めてくれるのはありがたいですけど・・・。まぁそうね!要するに皆すごいってことですもんね!」

ネネ姉さんも納得したようだ。


「でも、この中で一番戦闘力が高いのは・・・リカちゃんですよね。」

え、そうなのか。一番可愛らしいのに。

このメイドさん風金髪赤目吸血鬼美少女が一番戦えるなんて信じられない。


「俺もリカも元王国兵士だからな。階級もお互い高かったぞ?どうだ凪斗、旅も安心できそうだろ?」

さらに驚き、二人が元兵士で階級も高い。それは当然討伐するといったタスクも来るワケだ。

そしてこの商業旅団がただの商売をする団体でなく、戦闘や魔法も専門にした民間の特殊部隊、PMCのような集団なのだと理解した。


僕はとんでもなくコワモテ集団の中に、もしかして紛れ込んでしまったのか。


すると、道端で対談している村人の少し老いた女性がガーランドに気づいた。

「あぁ!ガーランドさんですよね!?先ほど依頼を出したんですが・・・。消えた村人達を追ってほしいのよ・・・。」

もうすぐにでも泣き出しそうな顔と声のトーンだ。

そこで対談していた別の女性が説明を加える。

「ここ最近カルロ村の村人がね、特に若い子たちなんだけど・・・ある日突然学校に登校したっきり戻らないんですのよぉ・・・。」

「それは犯人のいる、つまり人か魔獣の仕業なのですか?」

ガーランドが神妙な面持ちで聞く。


「どうやら大半は学生達が消えるみたいなんですが、誰かに攫われたり無理やり連れていかれるといった現場を目撃した人が一人もいないんです。」

対談していた別の男が説明する

「向かいの村でも同じようなことが起きてるみたいで、そこのロッドさんというお宅の娘さんが、『大切な友達に会いに行く』と森に出かけていってそのまま帰ったこなかったそうなんです・・・。それで、2週間後に森でゾンビになっていたところを目撃されて・・・、クッ・・・。討伐されたそうです。」

おそらくそのお宅とは知り合い同士なのか、涙をグっと堪えているようだ。


「犯人は不明だが、操られるようにして森に学生が消えていく。魔粒子が関わっていそうだ。」

ガーランドは淡々と答える。

「お願いよぉガーランドさん。どうかもうこれ以上若い命を絶えさせないでやっとくれ・・・。

アタシら古いもんの命ならいくらでも差し出すから・・・。」

聞くところによると、ゾンビや魔物が森で異常に多くなっているので、地元の警察や冒険者も迂闊に手を出せなくなっているらしい。

王立騎士団か軍が動く案件になりそうだったが、ちょうどそこに名の知れたガーランド商業旅団が通りがかったそうだ。


「凪斗、聞いてたか?この事件を解決しにいく。お前もついてくるんだ。」

ガーランドが突然僕に話をふってきた。

え、僕が?と返す。


「そうだ。この手の話には宝玉が絡んでいる可能性が高い。魔粒子や魔法がらみの事件には特に注意していたほうがいいんだ。」

その話をすると、村人たちの顔つきが少し変わった。前向きなというよりは少し驚いたような表情をしている。


「なんと!この方がマタギ渡しでここにやってきたマタギの方かい!?」

-あぁ・・・!これはもしかしたらこの事件も、世界も救われることになるかもしれないぞ!

-かもしれないじゃなくて、なるんだよ!

-おぉマタギの方、どうか握手をさせてください!

-よくぞ参られましたね!

-大変でしょうけど、この村でゆっくりしていってね!


どうやら大歓迎のようだ。村人が続々集まってきては、僕に握手をしたり歓迎の言葉を投げかけてくれる。まだ何もしていないのに、救世主のような扱いをここでも受けて少し後ろめたさを感じる。


すっかりあたりも暗くなり、リカが予約をとっていた宿に着く。

民宿を少し小綺麗にした感じの、それでも部屋はホテルを思わせるような雰囲気だった。

大きな部屋の中に人数分のベッドがある。といってもネルはテツやネネ姉さんのベッドに潜り込んで寝るみたいだけども。


「凪斗さん、大人気でしたわね。」

ネネ姉さんが茶化したように言う。

「姉さん、やめてくださいよ。僕まだ何もしてないのに。

しかも姉さんだって村人さんから挨拶されたじゃないですか。皆人気みたいだけど・・・。」

「ナギト!ナギトはね!この世界のたくさんの住人から歓迎されるんだよ!だって救世主だもん!この村の人たちに限らずたくさん触れ合ってほしいな。それだけ皆の元気につながるから。」

リカが笑顔で語りかける。


確かに僕も元の世界でスーパースターや高級車を見かけたときは、見ただけでも幸せな気持ちになったっけ。それが今自分が出来ているとすると、やっぱりちょっと嬉しい。

そうして僕は、そっか、ならそうしようかなと返事をする。


テツとネルが合流して部屋に入ってきた。

ネルは相変わらず僕のほうをみてガルルル!と威嚇してくる。

愛想笑いでなんとか誤魔化す。


「テツ、すまないが宝玉がらみの事件だ。ネルとこの拠点にとどまってくれるか?」

ガーランドが事の詳細を話す。

「おう!いいぜ!気を付けてけよ!なるほどな。どうりで魔粒子の濃度が濃いとこがあったわけだ。」

魔法を使うときに反応する粒子、魔粒子が漂っていて、宝玉のような強い魔粒子を放つ個体や人が何らかの作用をこの村か住民にしているらしい。その反応が残ってて、テツお手製の測定器でそれがわかるようだ。

今晩、軽く休憩してから森に出て事の発端を見つけにいくことになった。


この時僕は、悲しみが連鎖してたどり着いたこの事件の真相をまだ何も知らなかった。


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