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キラキラ辛辣少女は曇天侯爵に夢中。

作者: 蒼空猫

ふわっと皆様の暇つぶしになれば幸いです!!

書きたい所を好きに書きました。

はつらつと元気なお馬鹿可愛い女の子がクールと思われがちな男の子を振り回すお話しが好きです。






『まだまだ暑さの残る晩夏の候。

婚約者殿はいかがお過ごしでしょうか。


貧弱な貴方様の事です。

暑さにやられ碌にご飯も召し上がらずに体調を崩していないか心配です。』



領地の視察も兼ねて北部の避暑地で少し早めの夏期休暇を過ごす私の元に手紙が届いた。


庭の木陰でお茶を楽しみながらそっと封を開ければ

“親愛なるヘンリー様”と始まった婚約者からのそれに思わず表情が綻ぶ。



薄桃色で端がレースのように繊細な切り絵を施された5枚の便箋にはびっしりと余白なくメッセージが書き連ねられ、まだ幼さの残る綺麗な字は読み手の事を考え丁寧に書かれた事が伺える。



「・・・貧弱って」


苦笑交じりに呟けば近くにいた執事にクスリと笑われてしまった。


しかし和やかムードは手紙を読み進めるにつれ一転、不穏な空気を醸し出す。

初めは彼女が飼っている茶トラ猫の話や参加した茶会での出来事、最近見たオペラの話などごく普通の話だったのだが時々雲行きが怪しくなり私は嫌な予感がした。


『先日のマロン伯爵家の夜会のエスコートは従弟のコリンにお願いしましたの。


夜会は駄目ね。誰と踊ってみてもヘンリー様を考えてしまって、とても恋しくなりました。嗚呼、ヘンリー様は今頃どうされているのかしら。


また体調を崩されていないかしら。え、待ってほんとに大丈夫かしら。

視察に行かれた先で貧血で倒れられたりしていないかしら。本当に不安になってきた。

ヘンリー様は天然人たらしだから、もしかしたら助けてくれた方や看病してくれた女性の心を射止めてしまったかも知れない。


嗚呼、心配、本当に!いろんな意味で心配‼早くお会いしたいわ。


長くなってしまったので今回はこの辺で。ヘンリー様ご自愛くださいませ。』



「最後の方、また荒ぶってたな・・・」


「ヘンリー坊ちゃまは婚約者様に愛されておいでですな」


「坊ちゃまはやめてくれ。」




手紙の最後に書かれた文字に思わずふわりと微笑めば、後ろから苦笑を浮かべた家令が来客を告げた。









***





「“追伸 近々お父様にお許しを頂きヘンリー様に会いに参ります”」



例の手紙を口に出して読み上げる。



「手紙が着いたのは今日だ。今日の今日で何故君がいる、リジ―?」


「だって・・・早くお会いしたかったのですもの。

手紙を書いてすぐに立ちました」



苦笑した家令が連れてきたのは私を見て目を輝かせる婚約者のエリザベスだった。



「公爵閣下はなんと?」


「お父様なら心配ご無用ですわ!ヘンリー様にお会いしたいと言ったらすんなりと了承してくれました」



嗚呼と頭を押さえる。

あのオジサンは一人娘に甘いんだった。

後で私からも連絡を入れなければいけないな。


たっぷりと間をおいて溜息を吐いてからエリザベスにお説教を始める。



「いいかい、リジー。君が来てくれるのは嬉しいが迎え入れるための準備がいる。使用人にだって迷惑がかかるだろう。」


「ごめんなさい。失念しておりました。」


「・・・、」


しゅんと叱られた子犬のような彼女。

柔らかな金髪にまるで夏の空を映したような綺麗な青い瞳を縁取る長い睫毛が彼女の白い頬に影を落とす。


潤んだ瞳が上目遣いに私の様子を伺う。


「(困った)」



私も大概この6個も年下の婚約者に甘い。



「・・・、反省した?」


「ええ、とっても。」


「これからは思い立ってすぐ行動してはいけないよ?」


「気を付けますわ」


「(ほんとかなぁ)」


そう答えた彼女に私は苦笑を浮かべて負けを確認する。

周りにいた執事たちが気をきかせてさりげなく立ち去ったのを確認して私は手を広げた。



「おいで、リジー」


「っはい!!」


勢い良く胸に飛び込んできた婚約者をぎゅうっと抱き留めて私は笑った



「会いたかったよ」


「私はその倍以上会いたかったですのよ!!」


「そっか。」


紳士らしくなく豪快に笑ってしまった私にきょとんとするリジー。

嗚呼、可愛いな。



「だから、ちゃぁんとお顔を見せて下さいまし」


「(えー)」


私の頬をリジ―の小さな手が包み込み至近距離で顔を眺められる。

まじまじと私を見つめる視線は真剣そのもの。


眺められること数分。

ほぅと息を吐きだしたリジーはうっとりと私の頬を撫でながら語りだす。



「嗚呼、やっぱり素敵だわ。常闇のような黒い髪をセットもせず無造作に靡かせているところも、曇天のように濁ったその何を考えているかわからないような瞳も青白く不健康そうなお肌もすべて最高ね」


「それ、ほめているのか?」




かくして、愛しの婚約者たちの休暇は始まった。


のちに婚約者の父も二人の休暇に参戦してきたり、貧血でヘンリーが倒れたり、ヘンリーの従妹にエリザベスが嫉妬したりなんて事が起きるのだがそれはまた別のお話。






書きたかった部分はホント最後のエリザベスがヘンリーを褒め?まくる所だけでした。(笑)


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