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女神と番  作者: 紫月 あやめ
出逢い編
3/61

-2- 魔力

エレイン視点

 わたしの魔力はいらないものだった。魔力なんてものより、両親はわたしが男であることを望んでいた。それくらい、幼いころから分かっていた。


 幼いわたしは「わたしは男の子になる!」と宣言していた。言葉を喋り始めた頃の話だ。その頃から、武術や剣術を学び始めるも、わたしはあまりそういった方面の才能はないらしい。口に出さないながらも、両親が心の奥で落胆していることを分かっていた。


 わたしに魔術の才能がある、と知らされた時の両親の様子を、今でもはっきりと覚えている。瞬間的に、拒絶に近い反応を示した。その後に、喜びの表現に変わったが、わたしは最初の本音を見逃さなかった。


「何故、この子が」「女の子なのに」


 声には出さない両親の心の声――軍人は強さを誇る。両親の思想は質実剛健さに準拠している。魔力などといった、ふわふわしたものなんて。魔術師に対する差別用語のひとつに、"化け物"というものがある。


 別に、両親から冷たく当たられたわけではないし、十分に教育環境を整えてもらい、才能を磨かせてくれた――政府の導きもあるが。魔術の才能がある子供は、速やかに政府の管轄下に入れられる。両親は、両親自身が理想とする軍人像を諦め、わたしに新しい軍人像を当てはめた。


 魔術の訓練は性に合って楽しかった。夢中になった。ともあれば、人の思いを読んでしまいかねない繊細さが、魔術というテリトリーでは有用になるのだ。


 外の期待に応えるように。両親の期待に応えるように。魔術を扱うことは嫌いではないが、少しずつ、重苦しくなっていった。


 男だったら良かったのに。魔力なんてなかったら良かったのに。

 そうだったら、両親は喜んでくれたのに。人生のレールなど敷かれなかったのに。普通の女の子として生きられたかもしれないのに。


 その思いに気づかないようにしたり、気づいたり。そんなことをしている間に、体はすっかり女性として成長した。繊細さは、すべて魔術に預けた。わたしらしさは、すべて魔術という神聖な不可侵のテリトリーへ預けた。


 日常のわたしは、女性らしさを受容しきれず、感情を抑えることに終始した。女に生まれてしまい、魔力を持ってしまった、葛藤。そういった感情を感じることを自分に許さずに過ごす間に、わたしの感情はあまり動かなくなっていた。

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