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第39話「ありのままの自分を尊重してくれる人」


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イルシャが家に来た日の夜。

昨日ようやく魔法使いを卒業したというのに、今日はイルシャとの初夜を迎えた。

やはりというべきか、普段の強気なイルシャとはまったくの別人のようで。

自分も初めてだと言ってはいたが、最後の最後まで全てを受け入れてくれた。

事後の心から幸せそうな顔をしてくれたイルシャもまた、大切にしていこう。


翌日、シャーリーに迎える準備ができたと報告しに行くと、それはもう嬉しそうにはにかむものだからドキドキしっぱなしだった。

全員が全員違うタイプで可愛いって凄いな。

それがみんな俺の奥さんだなんて幸せすぎる。


シャーリーはオーダーメイドの注文が入ったとのことで今日明日で引っ越しというのは難しいらしい。

一週間はかかるらしいので、それまでは気長に待つとしよう。



それを待っている間は、特に夜は隊の皆と過ごす機会が多かった。

アーニャとイルシャと3人で食卓を囲んでもいいのだが、如何せん全員舌が肥えていた。

常日頃からアルシェとダッカスという超一流の料理人が作ったものを食べていただけあり、自分たちで作ったものを食べるという意欲がわかない。

もちろん奥さんたちが俺のために作ってくれたとあれば話は別だけどな。

とりあえず晩飯は以前と同じように隊の家で食べ、終えたら自分たちの家に戻るという生活だ。

マイホームに移り住むことになるときは寂しがっていた隊員たちも、1日1回顔が見れると安心するとのことでなんだかんだ喜んでくれている。

俺もこの6年間ずっと一緒に居ただけあり、皆の顔を見ないと不安になってしまうしな。

もはや家族だと思っているくらいだ。


常駐しているホリィやジャークたちとは違って弟子の面倒を見てから遅くに帰ってくるルミエとはなかなか会えないが、たまに会うと積もり積もった話をしてくれる。

弟子の成功や失敗に一喜一憂する姿が可愛らしい。

仕事帰りに寄るナージャも、相談事をメモしておいて会った際にまとめて聞くスタンスのようだ。

どちらも1週間で2度ほどしか会えなくなっているだけありコミュニケーション不足が少々心配ではあるが、元々の頭の良さもある2人だ。

緊急時であれば遠慮なく訪ねてきてくれと伝えてあるし、基本的には自分たちで解決してしまうだろう。

優秀な部下たちに囲まれて本当に助けられてるな。



別件でアーケでも遂にクレープ屋事業が開始されたらしい。

農業で助けに来てくれている人たちが絶対に売れると太鼓判を押しているだけあり、状況はおいそれと見にはいけない距離なものの心配はあまりしていない。

カッツェで成功しているからな。

目新しいものに興味を惹かれるのは既に分かっているし、後はどれだけお客さんを逃さずに回せるかくらいだろう。


他には北の大同盟のミラさんからの手紙が届いた。

やはりと言うべきか、東の同盟からの攻撃が再開されたらしい。

ひとまずはこちらからの救援は必要ないらしいが、来たる時に備えておいてほしいというものだった。

前回会ったのはカンド川の戦いの時だ。

あの時はカーデラ様のこともあったので、今はまだ戦いに出ないようにと配慮してくれているのかもしれない。

その時が来れば必ず敵は討つ気ではいるが、国としての力が足りていないのも事実。

攻めるのであれば北とタイミングを合わせたうえでフリードからも戦力を総動員で行かなければ、惨敗を喫するだけだろう。

おそらく現状で東に勝っている部分は、国の資産だけだろうからな。


そんなこんなで色々あったが、約一週間後。

ついにシャーリーが我が家に移り住むことになった。



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「荷物すくなっ!」


朝早く。

大きめのカバン1つを両手に持って越してきたシャーリーに、荷解きを手伝おうとしたアーニャの叫び。

仕事関係の道具一式、私服が3着、仕事着5枚、以上。

女子力の無さが凄い・・・!

いや私服はクレープ屋の時も思ったけど可愛いんだけども、家具とかどうしてたんだろう。


「工房に住みこんでたから布団やら大体あそこに揃ってたんだもの。

仕事で帰れないこともあるだろうから、あそこのはあのまま置いておきたいのよね。

ということでここで使うものを買いに行きたいのだけど・・・。」


もじもじとするシャーリー。

あーまあ工具とか重かっただろうし、朝一番で来てくれたから行くタイミングもなかったのだろう。

そういうときはそわそわするのは分かる。


「トイレなら廊下の突き当たベッ・・・!」


「タロー、荷物持ちとして付き合ってあげなさい。」


イルシャの肘うちが俺の鳩尾にクリーンヒットした。

荷物持ちなら貴女の方が適任なのでは・・・?

と言いたい気持ちはあるが、呼吸ができていないのでそれもかなわず。

毎回思うが、俺じゃなかったら三途の川渡ってるぞたぶん。



ということでシャーリーと2人で街を散策することに。

顔を真っ赤にして若干俯きながら隣を歩くシャーリー。

身体の前に組んだ手をもじもじと動かし続けている。


「なんか、変な感じだな。

今まではビジネスパートナーだったのに、今日からその・・・ふ、夫婦なわけだろ。

しかもその初日に2人きりで外を歩くなんて・・・なんというか・・・ちょっと恥ずかしいな。」


ハハ、とはにかみながら頬をかくシャーリー。

年上のお姉さんではあるのだが、こういった経験は仕事一筋で今までなかったのだ。

緊張したり恥ずかしいと思ったりするのは仕方ないか。

少しでも緊張をほぐせるようにと、少々強引に手をつなぐと驚きの表情の後、さらに顔を真っ赤にしてしまった。

逆効果に見えるが、嬉しそうに口元がにやついてるのを見て安心した。

そのまま仲良く買い物を続け、購入したものを明日には届けてもらうように依頼して帰宅。


街行く人たちは顔見知りばかりなので、たくさんの祝福の声をかけてもらえた。

その陰で男性からは妬みの視線もたくさんプレゼントされた。

意外と言っては失礼だけど、シャーリーもかなりの人気者なんだな。

仕事も完璧で美人なだけに、狙っていた男性は実は多いのかもしれない。

それに加えてアーニャ、イルシャとも結婚しているだけあり、今後は嫉妬の視線をかいくぐる術を磨かないと精神が持たないな。

まあ、どれだけ妬まれようともあげないけどな。



そしてシャーリーとの初夜。

互いに緊張していたものの、出会った頃からの話をしているうちに和んでいった。


「本当に一目惚れだったんだ。

カッコいいし、アーニャが認めた人だから信頼できるし、何よりわたしの仕事姿を見ても顔色1つ変えなかっただろう?

意外とああいう格好で会うと見下されるというか、なめられることも多くてな。

あとは笑いをこらえたりする奴らも居る。

この人はありのままの自分を尊重してくれる人なのかな、って期待しちゃったんだよ。

・・・だから・・・その・・・。」


「俺もシャーリーのありのままを見たいし、変に飾る必要なんてない。

仕事にプライドを持っているのは素晴らしいことだよ。

他の誰が笑ったり見下したりしたとしても、俺は今も昔もシャーリーの仕事ぶりはカッコいいと思ってるぞ。」


その言葉を皮切りに、とんでもなく甘えられた。

仕事中のクールなイメージとは全く想像もつかないが、実は超がつくほどの甘えたがりらしい。

でも甘えられるのも好きとのこと。

アーニャも甘えん坊ではあるけど、どちらかというと優位に立ちたがりな性格だしな。

イルシャはなんというか、俺の全てを受け入れるという言葉の通りだし。

対等で互いに甘えられるというのは、まるで恋人のような感じだった。


特殊な思考の持ち主じゃなくて本当に良かった。

むしろ一番普通でいてくれてありがとうございます・・・!

前途多難なのはイルシャだけで済みそうだ。



そこからさらに時は流れ。

シウバ様の誕生日やら、ホリィとジャークが付き合い始めたとかいろいろあったけど。


植えた小麦の芽が出たとの報告が入る。

いよいよ次の工程へと進むため、フェルト王国へと向かう。


存分にマイホーム生活を満喫できたし、戦のことも考えずに済んだ。

かなり羽根を伸ばせた有意義な休暇だったな。



え、なんか仕事で忙殺されている間に結構ポイント伸びてる・・・!

★評価を結構頂けたのかな笑

皆さま本当に応援ありがとうございます・・・!

今回は遅くなってしまいましたが、引き続き楽しみながら更新を続けていこうと思います。

少しでも読んでくれた方が楽しめて頂けたら幸いです。


拙い作品ですが、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。

今後ともよろしくお願いいたします!

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