第37話「自らが踏み出すことで引っ張っていきたい」
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今日はいよいよ種まき。
アーニャも待ってましたと言わんばかりにとても機嫌がいい。
野菜の時もそうだったけど、何かを育てることに楽しみを覚えているみたいだ。
俺も今後のフェルトの発展という意味ではとても楽しみに思っているだけに、今日の作業は気合いが入っている。
寝る前に田植えの際に気を付けることを調べて頭に叩き込んだほどにはね。
作業場へと到着して皆に声をかけて回る。
初めてだから不安だという人も居れば、アーニャのように楽しみだと思っている人も居て。
そんな皆に楽しもうと声をかけて互いに笑顔になっていく。
これこそが俺の求める平和な国の姿なだけに、やっていることが間違っていないと再認識できた。
いよいよ作業に入るということで、アーケの皆さんから説明を受けている。
気を付けなければいけないのは10センチ間隔で埋めていくこと。
そして撒いた肥料の粒と種子が直接触れないようにしていくこと。
これくらいだ。
あとは撒いた種の上にパラパラと土をかぶせれば終了。
言葉にするのは簡単だけど、土地が広大なので結構な重労働だ。
当然屈む体制が多くなるから、腰に負担もかかる。
身体には十分気を付けるようにとお達しがあり、作業が開始された。
1列の畝にアーニャが種子を撒いていき、俺が数センチの穴を空けて撒かれた種に土をかぶせる。
地味な作業ではあるが、アーニャがとても楽しそうにしているので俺も楽しく作業ができた。
意外とこういった共同作業の経験はなかったからな。
そういう意味でもとても有意義だ。
途中から俺も慣れてきたこと、そしてこの世界に来てからずっと一緒に居るアーニャとのコンビネーションもあってか、他のチームよりも早く畝1列の種まきが終了した。
他のチームのお手伝いもしつつ、ひとまず1面の種まきが終了したところでお昼ご飯の時間となった。
これがあと3面あるのだから、用意した土地の広さがうかがえる。
今日はもう1面やって明日もう2面といったところだろうな。
アルシェたちが作ってくれたご飯をアーニャと食べていると、アーケの人たちから沢山声をかけられた。
俺たちがアーケに寄ったこともあり、結構顔を知られているようだ。
中には結婚を祝福してくれる声もあって嬉しさと恥ずかしさでいっぱいだったけど。
今度アーケの料理の作り方を教わる約束もできたし、賑やかで実りのある時間を過ごせた。
食べ終わり作業開始時間まで鍛錬してくると言うダッカスとホリィを見送ったり、途中から様子を見に来たルミエと一緒に木陰でお茶を飲んだり。
大変な作業をしつつではあるが、常に自分たちのペースで過ごせている。
これは隊の皆の強みだよな。
午後の種まきは先ほどよりも慣れたこともあり全体的にかなりスピーディーに終えることができた。
あとは今日から明日にかけて雨が降らなければ、明日で2面種を撒いて終了。
それが終われば1か月はできることもないので一度カッツェに戻る予定だ。
ひとまずは今日は解散ということで、アーニャと手をつなぎ城に向けて歩く。
明後日には夢のマイホーム生活が待っているので、気分はうきうきだ。
決して表には出さないようにしているが。
「なんかとっても機嫌いいわね、タロー。」
うちの奥さんには隠し事はできないみたいだ。
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恒例のマッサージを終え。
前回のルミエに見られたことから反省して、いちゃいちゃは控えようということでまったり過ごしているといつものようにシェイミとイルシャが訪れた。
今日は違うゲームを持ってきたようだ。
両手で前に突き出し俺たちに見せながら、満面の笑みで「今日はこれをやりましょう!」と言ってくるシェイミの可愛さに陥落した俺とアーニャは即座に2人を招き入れた。
なんというか、2人して母性や父性を感じる部分が似通っていて嬉しいね。
アーニャは元々孤児院に足を運んでいたこともあり、面倒見がいい。
俺も隊の隊長として色んなことを教えてきただけあって同じようなもの。
そういった面では似た者同士なんだな。
さて、前回はトランプと将棋を合わせたようなゲームだった。
実際に山札から決まった数の手札を引き、それをプレイヤーごとに戦場に配置していく。
カードには兵や作戦などの種類があり、弱点となる兵の種類をぶつけて有利不利が発生したり、作戦を実行することで不利だった盤面を覆すこともできたりと中々に作りこまれたものだ。
しかし手札がある以上、どうしてもランダム性があること。
そして2人しか対戦できないというのが強いてあげられる弱点だった。
今回持ってきたのは〇生ゲームやモノポ〇ーを連想させるようなボードゲーム。
ルーレットや決まった道を通ったりするものではなく、自身の国の土地を発展させていくようなものだ。
まずプレイヤー全員が決まった金額の所持金、それぞれの国と時間が異なる砂時計を3つ持ったところからスタート。
そこから決められた施設を立てていくことである程度自由に発展させることができる。
何よりこのゲームの面白いところはターン制ではなく、時間制ということ。
手持ちの砂時計には30秒、1分、3分の3種類あり、それぞれが建物を建設する際に必要になる。
例えば市場1つを建設するのには1番短い30秒の砂時計が落ち切ればいい。
代わりに城などの大きな建物となると、1番長い3分の砂時計を複数回落とす必要があるものもある。
砂時計が残っているうちはどんな行動もできるが、全てを使っている際は行動が出来ない。
こんな具合に時間さえ許せば自分のやりたいように国を繁栄させることができるのだ。
そしてゲーム開始から1時間を図る砂時計が落ち切った時点でゲーム終了。
その時点での最高収益を出したプレイヤーの勝ちとなる。
全ての建物にそれぞれの利点があり、市場は国の金銭収益が加算され農場は兵糧収益が増加する。
時間はかかるものの、城を建てれば国全体の収益が1.5倍になったり。
市場を建設するのに一番長い3分の砂時計を使用して建設した場合は収益が元々の3倍になったり。
建設できる建物はかなりの数が用意されていて、どれも決まった効果が付与されているため自由度はかなり高い。
ゲーム開始直後から試行錯誤を重ねながら建設を続けていく。
といっても途中から砂時計の使い方の重要さに気付いたので、序盤は大きく離された結果。
実際に国を繁栄させている立場なだけに負けられないと意気込んで挑んだものの、やはりアーニャには勝てなかった。
それでも僅差の2位と大健闘だと思う。
シェイミは途中までとてもスムーズに建設していたものの、アーニャに大きく離されたタイミングで焦りが出たのか砂時計の使い方を間違えてロスしてしまっていた。
イルシャはゲームでも豪快だった。
城が3つ建ってる国なんて見たことないぞ。
惨敗という結果ではあるが、本人は城3つにどや顔をしていた。
負けても自分のやりたいことを貫く姿勢は素晴らしいね。
ゲームは楽しむものだから、これも楽しみ方の1つだ。
アーニャの国は全てにおいてバランスよく建てられており、兵糧収益で俺に負けただけで金銭収益と建設数は断トツの1位。
兵糧収益では勝てたものの、総合的なポイントでは数ポイント届かずだった。
正直この世界のゲームはかなりレベルが高いと思う。
戦国時代にあるのが不思議なくらいの出来だが、どれも時代に合った作りになっている。
この前の戦を学べるゲーム然り、今回は街の発展を学べるゲームだ。
それでも子どもにも人気が出るように分かりやすく、そして可愛く絵が描かれている。
今回も難しめのゲームではあったものの、全員が話しながらできるという点で高評価だ。
全員の発展具合も見ながらできるので観察しようと思えばできるし、イルシャのようにやりたいようにもできる。
何よりランダム性がないのがいいね。
まるで日本で作ったものを持ってきたのかと思えるくらいだ。
だがまあ1回遊ぶのに1時間、そしてずっと考え続けているだけあって疲労感は大きい。
明日の種まきに影響が出ないよう、今日はそこでゲームは終了。
シェイミが眠気を催すまで色んなことを話して過ごした。
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翌日。
晴天に恵まれ、昨日と同じ作業をしていくも1面を終えたところで種がなくなってしまった。
残りの1面には野菜を植えようということで、アーニャが持っていた白菜とレタスの種を撒くことに。
フェルトやカッツェでこまめに野菜の種を買っておいて正解だったな。
自分の買った野菜を植えられるということでいつも以上に上機嫌のアーニャだが、意外と育てるのには苦労しそうとのこと。
害虫が寄りやすい葉物なだけに、管理を徹底しなければならないようだ。
そこらへんはアーケの皆さんが買って出てくれたので一安心。
連日の種まきにかなり腰周辺が悲鳴をあげていたので、後でアーニャとマッサージをしておかないとな。
城に戻り身体のケアを済ませ、明日にはマイホームとご対面できると思うと居ても立っても居られない。
カッツェへと帰る支度を早々に済ませ、ここまでの達成感に浸っているところだ。
10歳の頃の姿でこの世界に飛ばされ、右も左も分からない状態。
そこから6年。
自分で言うのもなんだが、フェルト王国の中心人物にまでのし上がれた。
色んな人と出会ってたくさん助けられ、将来を心配することのないお金を稼げて、最愛の人と結ばれて。
これからもフェルトの繁栄のために尽力するつもりだし、アーニャとイルシャ、そしてシャーリーも同じ気持ちだ。
今はまだ魔法使いだが、これから先は自分の子どもを授かる可能性は大いにあるだろう。
奥さんたち、そして未来の子ども。
そんな大切な家族を幸せにしたいと心から思っている。
暮らす国民全員が笑顔の絶えない平和な国。
それを体現するためには、まずは自分からってな。
これから東との戦もあるだろう。
今は北とは懇意にさせてもらっているが、未来はどうなるか分からない。
それでも自分たちが幸せであるためには通らなくてはならない道。
どの国がどのような思考を持っているか分からないが、フェルト王国同盟は平和のために進むだけだ。
前進の手助けに。
そして自らが踏み出すことで引っ張っていきたい。
この愛すべき仲間たちと一緒にな。
引っ越しでバタバタしてましたが、ようやく投稿できました。
早くも剣の舞に追いつきそうな評価ポイントを頂けて嬉しい限りです!
本当にありがとうございます、励みになります。
拙い作品ですが、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。
今後ともよろしくお願いいたします!




