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第33話「この世界に生きて、この世界で死ぬ」


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昨日のアーニャのマッサージのおかげか、全身筋肉痛を覚悟していたが身体が重い程度で済んでいる。

起きたアーニャと2人で柔軟体操をしてさらにケアをしておいた。

身体を伸ばすとだいぶ気持ちいいな。

疲労が溜まってるみたいなので、土ができるまでの時間は休暇に充ててもいいかもしれない。

働きづめでいざという時に力が出せないのは、この戦国という環境では致命傷だからな。


いつも通りに作業場へと到着し、朝ごはんの配膳を手伝う。

アルシェとダッカスも朝から晩まで料理しっぱなしになってしまっている。

やはり牛丼屋の皆に手伝ってもらって休みを回すことにしよう。

2人からは全然要らないのに、と言われてしまったけど。

それに甘えて働き続けて倒れられても困るんだ、と珍しく真顔で説得すると納得してくれた。

今後も2人には隊の皆の元気の源で居てもらいたい。

もちろん自分たちで店を立ち上げたいと言われたら当然許可するところではあるのだが、本人たちはそれを望んでいるわけではないからな。

疲労の蓄積で倒れたら、自分たちがやりたい皆の食事を作るということもできなくなってしまうんだ。

うちはブラック企業じゃないからな。

そういうところはきちんと管理していかないとだ。


今日の作業はそこまで大がかりなものはないが、隊のメンバーや兵士さんたちは心なしか身体の動きがおかしい。

慣れていない作業で全身筋肉痛に襲われているのだろう。

特にホリィなんかは疲労と寝不足なのだろうか、酷い顔をしていた。

アーニャと2人で互いにマッサージをした分、俺たちはまだ動けているけど。


仕事のフォローしながら各所を駆けまわり、前向きな声をかけていく。

そんな俺たちの姿を見てか、動きの鈍かったメンバーもだんだんとやる気に満ちてきた。

やはり自分がやっている姿を見せることで、下もついてくるのだ。

フリード国の復興の際のフリードの行動を見習ってやってみたのだが、かなりの効果があった。

流石大国を治めているリーダーだな。

俺はまだ人の上に立って間もない弱卒だ。

見習えるものは全て吸収して実践するくらいでないといけない。


「さあ、もうひと頑張りだ!

今日の作業が終われば土が完成するまで休暇だから、もう少し頑張ろう!」


俺の言葉に頷いたり、笑顔になったり。

早くもそんないいチームが出来上がりつつあるな。



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その日の作業も終わり、部屋でアーニャと互いにマッサージをした。

身体のケアはしておくに越したことはないからな。

その後は今後の作業工程を頭に入れるべく、パソコンとにらめっこをしているところだ。

土をならして種をまいてという作業ではあるのだが、あの広大な土地すべてにとなるとかなりの大仕事だ。

日本で何気なくうどんやパンを食べていたが、それもこの大変な作業をしてくれる人たちが居るからこそなんだよな。

収穫のできる機械など存在していないので、現代よりもさらに手間がかかる。

まあそれをできるのも良い体験だろう。

電気がないところや不便な部分はありつつも、なんでもプラスに捉えていかないとな。

逆にこんな生活を体験できるなんて、日本に居たら有り得ないからな。

楽しんだもん勝ちだと思えるようになったんだ。


さてある程度頭に入れたところで、アーニャが飛び込んできた。

俺が調べものをしている間は邪魔をしないようにしてくれていたのだが、やはり寂しかったらしい。

頭を撫でられるのが好きなようで、抱き寄せて頭を撫でるとふにゃっとして喜ぶ。

アーニャのこんな顔は外では絶対に見れないだけに、俺だけの特権だな。

結婚してからもどんどんアーニャのことが好きになる。

とてもいいことではあるのだが、なかなか1つになれる時間が取れずにモヤモヤも溜まるんだよな。

魔法使いには厳しい環境だ。


そんな俺の気持ちが届いたのか、部屋のドアがノックされる音で2人して超反応で離れる。

イルシャとシェイミが例のゲームを持って遊びに来た。

シェイミも前回ここでやったことで戦の勉強だと気づいたようで、戦場で役に立つためにたくさんやりたいのだそうだ。

昨日もホリィと寝るまでやっていたらしい。

ホリィが死にそうな顔をしていたのはそれが理由か。


アーニャの指導のもと、シェイミの腕はどんどんあがっていった。

実際の戦場ではないにしても、色々な作戦に触れられるというだけでも自身の立ち回りを想像できる。

スクードやアーニャは感覚派で、決められた行動をするよりは自分の直感を信じて行動するタイプ。

なのでこういったものはあまり実際の戦場では役に立たないかもしれない。

しかしシェイミは遊撃という立場であり、多くのシチュエーションを考えその中から最適解に近いものを選ばなくてはならない。

なので、このゲームでの想像が今のシェイミにはとても有意義なのだろう。


「私が突っ込んで敵の将を打ち破れば良いだけだもん!」


とシェイミに負けて涙目になりながら言い訳をするイルシャもまた可愛い。

ゲームで負けて泣きそうになるなんて、よっぽどの負けず嫌いだな。



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最近は早起きが続いていたものの、今日からは休暇ということもあり昼前まで寝て過ごした。

身体のケアはしていたが、体力自体はどうにもならないからな。

たくさん寝て回復しておかなければ。

習慣となっていたアーニャとのストレッチも終え、久々のフェルトでの休暇だ。

カッツェほど街の発展が進められていないからそちらに着手したいところではあるが、皆に休暇を言い渡した手前俺が働くわけにもいかない。

そんな姿を見られたら絶対に皆もついてきてしまうからな。

カーデラ様が居れば発展に関しては任せられたのだけど、それは言っても仕方のないことだ。

こんな弱気では、次に会った時に怒られてしまうか。


ひとまず今日は一度牛丼屋に行って事情を説明し、休業してもらうことにしよう。

人手を借りて営業を回すことは可能ではあるが、それでは残されたメンバーに不満がでてしまう。

それを回避するには休業して全体の休みを回しつつ手伝ってもらう方がいい。

働く人も笑顔で居られる国でなければならないからな。


アーニャに説明して一緒にフェルト王国の牛丼屋に行き、現状を報告。

店長さんと話を詰め、土が完成する5日後から手伝いに来てもらうことにした。

今日も多くの男性客で賑わっているので、休業のお知らせポスターはアーニャが作ることに。

未だにこの国の文字は書けないんだ、すまんな。

正直パソコンでどうにでもなるから覚える気もないので、たぶん俺は死ぬまで書けないと思う。

店内の休憩スペースを借りて書き、店頭の見える位置に張り出して終了となった。



牛丼屋のスタッフさんたちに挨拶をして街を目的もなくふらふらとしているのだが、さっき文字のくだりを思った時に気付いてしまった。

死ぬまで書けない、と。


この世界に生きて、この世界で死ぬという覚悟。

結婚してアーニャを生涯幸せにすると誓った時からか。

もしくは隊を預かることになってからか。

いつからかは正直分からない。

だが間違いなく、元の世界に戻る方法を探すという選択肢が俺の中になくなっていた。


隊を預かる身としてとか、仲介所事業を投げ出したくないとか、アーニャたちの事があるからとか。

言い訳を考えようとすればいくらでも出てくると思う。

それでもそんな全ての理由を抜きにしても、間違いなく日本に居た頃よりは充実感を感じている。


道を踏み外したオタクであり、一流企業に内定が決まったというわけでもない。

だからこそと言うべきか、戻っても今より絶対に楽しいとは思えないのだ。



ふと気づくと、カーデラ様のお墓の前に立っていた。

普段は俺を引っ張るアーニャが、珍しく俺の後ろから着いてきてくれていたようだ。

そんなことにも気づかずに考えに没頭していたのか。


フェルト王国で育ち、隊の皆に囲まれてアーニャと結ばれた今。

この俺にはもったいないくらいに可愛いお嫁さんを、生涯幸せにする。

そしてリカンダを統一し、俺の中で唯一の王であるシャンドラ様を全国の王にする。


「それが俺、多摩太郎がリカンダに呼ばれた使命ですよね。・・・お父さん。」


言い終えた途端、気持ちのいい秋風が吹いて俺たちを揺らした。

きっと俺たちのことを応援してくれているんだろうな。


アーニャの優しい微笑みに見守られながら。

空で優しく微笑んでくれているであろうカーデラ様に見守られながら。

皆にいっぱい支えられながら。


「必ずリカンダを戦の起こらない平和な世界にしよう、アーニャ。」


「うん、絶対するわ!

タローが成すこと全て、一番近くで支えさせてね。」


俺1人では決して成すことができない夢。

それに向けて今一度、全力で歩みを進めよう。



★評価とブックマーク、いいね!ありがとうございます・・・!

ここ数日で一気に増えて、驚きと嬉しさでいっぱいです。

本当に皆さまありがとうございます!

もっと多くの方に少しでも楽しんでいただけるように精進してまいります。


拙い作品ですが、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。

今後ともよろしくお願いいたします!

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