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第32話「人間極限まで疲れると」


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昼過ぎにフェルト王国へ到着し、未だに元気のないシャンドラ様へ挨拶を済ませた。

生涯の友を亡くしたショックは俺には分からないが、隊のメンバーがと思うと同じように暗くなってしまうかもしれない。

俺たちだけでも元気に振る舞い、国民に心配かけないようにしないとだな。


場を仕切ってくれていたイルシャと合流し、現状を把握。

先ほど到着したばかりでそれぞれの部屋に割り振ったところだそうだ。

作業開始はもう少し先になりそうなので、俺たちもフェルト城や空いている部屋に荷物を置きに移動。

準備が終わり次第とんぼ返りで作業地へと戻ってきた。



季節は秋ということで、米を植える時期は過ぎてしまっているので今回は小麦畑を作る。

小麦の生産量が上がればパン屋や麺類にもチャレンジできるのが大きい。

ということであらかじめ用意した超広大な土地に小麦畑を作っていく作業だ。

カッツェやアーケなどと比べるとフェルトは住んでいる人の数は多くはない。

おかげで城下町から少し南側の使われていない土地をすんなりと利用できた。


この前ビスープ王国に行った際、小麦の種子は大量に購入することができた。

あまりにも多くて持って帰ることができなかったので送ってもらったのだが、この広さではもしかしたら足りないかもしれない。

まあその場合はアーニャが持っている種を植えて育てていけばいいか。


ということでフリード、フェルトの兵士さんにも手伝ってもらい、合計300人程度での作業。

ここまで大所帯だと情報の伝達や仕切りが難しいと思っていたのだが、ジャークやアーケの方々がいくつかのグループに分かれて教えながらやってくれた。


ひとまず今日は日没までの時間もなかったこともあり、堆肥を撒いて終了。

ジャーク曰く、小麦は土の酸度が高いと成長しにくいらしい。

アルカリ性のものを撒けばいいのかと思ったが、石灰で事足りるとのこと。

アーケから土づくりに必要な肥料は大量に持ってきてくれているので、それを使わせてもらうとしよう。

それも大がかりな作業になるが、明日手分けして終わらせよう。


そろそろ頭があがらない人が多すぎて、常に頭を下げながら生活しなければならないかもしれない。



-----


作業も終わりフェルト城へと戻ってきた。

転生してきた時には大きく感じていたが、アーケやジューンなどの大きな街を見てしまったから分かる。

フェルト城はそんなに大きな造りではない。

部屋の数もタロー隊のメンバー1人に1つは配れず、2人で1つの部屋に泊まらせてもらうことになった。

俺は当然アーニャとだ。


「カッツェで体験しておいてよかったわ。

あれがなかったら今頃お布団に突っ伏してたかも。」


「ぐへえって言ってたもんな。」


「そんなこと覚えてないで忘れてよー!」


ポカポカと軽くたたかれてしまった。

全然痛くなくてただただ可愛い。

少なくともあと1か月は諸々で時間がかかるだろうけど、果たして俺はその間我慢できるのだろうか。

でもさすがにシャンドラ様と同じ屋根の下で、というのも怖いもの知らずすぎるか。

頑張って我慢しよう。


晩御飯はアルシェとダッカスが作ってくれた牛丼とお味噌汁、そしてアーケから頂いたお漬物。

あまりにも大人数なためおかわりは用意できなかったらしい。

見合った労働はしてくれてるとはいえ、実際食費がバカにならない。

フェルトの牛丼屋を一旦休業して、出張してもらうのも視野に入れておこう。

といってもシャーリー特製超特大鍋で煮込みや汁物は一回の作業で済む。

牛丼屋を開業するにあたって作ってもらったものだが、とても役に立っている。

アルシェとダッカスの負担が増えないようにしつつで考えておこう。

相談役のルミエとナージャがお留守番なのが痛いけど。


食べ終わってアーニャといちゃついていると、イルシャとシェイミが部屋に遊びにきた。

せっかく2人きりだったのに、とは思ったものの。

シェイミにはこの前の一件で怖い想いをさせてしまったし、試食会以降特に仲良くしてくれているイルシャも一緒だしな。


シェイミが持ってきた、子どもたちに人気の絵札遊びで盛り上がった。

現代でいうトランプと将棋を合わせたようなものだが、これが意外と知れば知るほど奥が深い。

戦を経験したから分かってしまう。

これは遊びながら戦を学ぶためのものだ。

子どもたちはそこまで理解していないだろうけど、こういう教育法もあるんだな。

今後の参考にしておこう。


そのゲームはアーニャがめちゃくちゃ強く、何度やっても誰も勝てなかった。

子どもの頃に出かけられなかったことが多く、メイドさんたちと遊び倒していたらしい。

やっぱりアーニャは隊を率いた方がいいんじゃないか?

まあ今となってはそんな危険なことやらせたくないと思ってしまうけど。

ちなみに俺も最初こそ苦戦をしていたが、徐々にコツをつかみ始めてなんとかイルシャに勝つことができた。

イルシャはなんというか頭を使わずに自ら突っ込むことが多かったからな。

あまりこういう戦場全体を考えるものは向いてないのかもしれない。

とりあえずはシェイミがとても楽しそうだったので良いか。

結局遊び疲れて寝てしまったシェイミをイルシャが抱えて部屋に戻るまでたくさん遊んだ。



-----


翌朝。

夜に頭を使いすぎてあまり寝れなかったというアーニャをおぶって作業地へ。

実はイルシャよりも大きいものをもっており、背中に当たる感触に朝から幸せを感じられた。


アルシェとダッカスが朝ごはんを配膳していたので手伝いながら自分たちも頂く。

お味噌汁は美味しいのだが、別の汁物も教えてみるとしよう。

皆が片付けている間に汁物を検索して、2人にレシピをメモしてもらった。

材料が揃えばできそうなので、大いに期待するとしよう。


そこからは石灰を撒いては混ぜて撒いては混ぜ。

かなりの重労働だが、栄養分としてもう1種類同じことをしなければならないようだ。

それを聞いた俺を含めた未経験者からは悲鳴があがったのは言うまでもない。

だがジャークが一生懸命教えてくれているのだ。

その上に立つ者として逃げ出すわけにもいかない。

皆に声をかけつつ、自分も鼓舞しながらなんとか最後まで乗り切った。

明日は全身筋肉痛だな。



「もう無理、1歩も動けない・・・。」


お風呂に入り晩御飯を食べて部屋に戻ってきたところで、ベッドに身を投げ出したアーニャがうつぶせで嘆いた。

気持ちは大いに分かるけど1つしかないベッドのど真ん中でそう言われると、俺は床で寝なければならなくなる。

そこはなんとかして少し動いてほしいものだ。

とはいえアーニャも疲れているのは事実。

たまには俺もマッサージのお返しをするとしよう。



「あっ、タロー・・・そこ、いい・・・っ!」


「ここか、ここがいいのか。」


「そう、そこ!!ああっ・・・」


「気持ちよさそうだな、アーニャ。」


「うん、気持ちいい・・・!ああっ、もうだめえええ!!」



バアアアン─


「あれだけの作業の後にどれだけお盛んなんじゃクルァ!!」


勢いよくドアが開き、イルシャが飛び込んできた。

前回の失敗から学んだのか、今度はちゃんと壊さずに開けたね。

まあ、またマッサージなんだけど。

気持ちよさそうな顔でぐでんと横たわるアーニャの上にまたがっているとはいえな。


「・・・はあ、またなのね。

仲が良いのはいいけど、隣の部屋まで卑猥な声が丸聞こえよ。」


「卑猥に聞こえるのはそういうことを常に考えているってことよね?」


「あら、前にも言ったけどタローとなら私はいつでもどこでも構わないわよ。

それに人間って極限まで疲れると意外とせいよk」


「最後まで言わせねえし、そこは人として構えよ。」


「そりゃアタシだってそうだけど・・・。」



ひとまずアーニャの最後の小さい声は聞こえなかったフリをして、変態を部屋から追いだし攻守交替。

アーニャのテクニックの前にあられもない声を出してしまい、隣の部屋から壁ドンされたのは言うまでもない。

・・・石造りの壁なのに、ちょっとヒビ入ったよ?


『怪力の神子』の力を改めて見せつけられた。

イルシャには絶対に直接殴られるようなことはしないでおこう。



そう決意しながら、マッサージ後の気持ちよさに意識が薄れていった。




なんかいいねが増えてる・・・!笑

★評価もいただけたようで、めちゃくちゃ嬉しいです。

ありがとうございます!

引き続き応援してくださるととても喜びます。


拙い作品ですが、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。

今後ともよろしくお願いいたします!

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