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第27話「今見ている光景のように美しく」


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「アンタねえ、本当に私のことを何だと思ってるの?」


「超天才美人職人。」


「私は鍛冶師だー!!

・・・まあいいわ、今度は何を作らせようってのよ?」


たい焼きの型とクレープの生地を伸ばす木の棒・・・長いからヘラでいいや。

その2つを提案しにアーニャと共にシャーリーのもとを訪れた際のやりとりだ。

なんだかんだでやってくれるシャーリーには頭があがらんね。

実際今の国の戦力ではどう頑張っても扱えない量の武器を作り終わっているので、時間に余裕がありそうだ。

まあそんなタイミングだからこそ来たのだけど。

何に使うためのものかまできちんと説明しておこう。


「なるほど、それは美味そうだ。

疲れて集中力が切れると団子を食べていたんだが、流石に飽きてきていたからな。

それ以外の選択肢を作れるのであればまあいいか。

3日ほど時間もらうからな。」


こんな無茶振りをしているのに3日で仕上げるなんて、やはり天才だなこの人。

フェルトでアーニャと結婚報告をした時にイルシャが言っていた言葉だが、こんな才能のある人の子を残さないのはフェルトにとってマイナスなのではないだろうか。


「アーニャ、なんでシャーリーさんってこんなに仕事もできる美人なのに決まったお相手いないの?」


「基本的に籠ってるからじゃないかしら。特にタローのせいで。」


「アーニャ正解。もうこんな歳じゃもらってくれる男なんて居ないだろうし、半分諦めてるけどな。」


まだ20歳が何を言うか。

リカンダの結婚する適性年齢は分からないが、日本じゃ成人したばっかりだぞ。

そんなこれからって時に諦めるなんてもったいないじゃないか。

でも人それぞれ考えはあるか。

ここは冗談でも言ってごまかしておくとしよう。


「俺のせいなら責任とって嫁にもらいましょうか?なーんて。」


カランカランッ


シャーリーが手に持っていた仕事道具を落とし、こちらを見てフリーズしていた。

あれ、なんか思ってたのと違う。

アーニャを見ると「良いんじゃない?」とニヤニヤしながら言われた。

なんでそこでにやつく。


「ほ、本当か・・・?」


ギシギシと音が聞こえそうな、ゆっくりとした首の動きでこちらに顔を向けるシャーリー。

今間違いなく冗談でした、なんて言える空気ではないよな。

思わず頷きを返すと、シャーリーがいきなり飛び込んできた。


「お前にそう言ってもらえるように、出会った日からずっとずっと頑張ってきたんだぞ・・・。

この仕事を完璧にこなせればタローは喜んでくれるかなって考えながらな。

6年も頑張りすぎたおかげで大金持ちになっちゃったわよ・・・。」


「出会った日からなの?」


「一目惚れしたんだってさ。

アタシは同い年で一緒に育ってきたからあんまり分からなかったけど、当時から今までずっとカッコいいって言ってるわよ。

それにこれだけ功績を残してる人物が見合いの1つもないわけないじゃない。

100は超えてるはずだけど、全て断ってたのよ。」


「アーニャ、それは言わない約束!」


まじか。

仕事にストイックな人だと思っていたが、まさか俺の頼みだからだったってことか。

ここまで来ては後に引けないよな。

今までの仕事で不満に思ったことなどただの一度もない。

それが自分のためだと知れて嬉しかったのも事実だ。

きっちり答えるとしよう。


「正直に言うと、アーニャほど愛情があるかと言われればノーと答える。

でも同じくらい絶対的な信頼をしているかと問われればイエスだ。

シャーリーほどの魅力的な女性が俺の頼みを聞いて仕事をしてくれるだけというのは、気持ちを聞いてしまった以上は耐えられない。

そして今後誰と結婚することになろうとも、アーニャを1番に愛すると決めているんだ。

これが今の俺の気持ちだけど、それでも大丈夫か?」


「タローがいい・・・です。

貴方のために腕を揮いたいと、ずっと思ってるもの。」


何度も俺の腕の中で大きく頷くシャーリー。

まさかあの戦から2週間程度でこんな話になるとは思わなかった。


カーデラ様、俺はどうやら欲望に忠実のようです。


「まだアーニャと結婚したばっかりで家もできあがってないから、すぐにってわけにもいかないけど。

それにイルシャのことも同じように待たせちゃってるしな。

それでもよければ、もう少し待っててくれると嬉しいよ。」


「6年待ってたことに比べたら、そんなのなんでもないわよ。

それまできっちり仕事をこなしておくわ。」


「いつもありがとうな。これからもよろしく頼みます。」


「アタシたちを見てる隊の皆の気持ちが、少しだけ分かった気がするわ・・・。」


そんなこんなで、新たな婚約者ができました。

全員を愛せる男に、俺はなる。



-----


シャーリーの仕事が終わるまでの間に、こちらも試作品の材料を買い集めておかなければ。

ほとんどはカッツェの商店街で揃ったものの、生クリームに使う材料と苺は手に入らなかった。

ビスープ王国に行って交渉するとしよう。

自然が豊かなだけあり、そういった物も用意はあるだろう。

将来的にはフェルトで作れればベストだな。

出発する前にレシピをダッカスに渡してイメージしてもらっておくことも忘れないでおく。


ということで翌日、馬に乗りビスープ王国に向かった。

今度こそ2人ではダメだと、隊のメンバーも着いてきたが。

まあ何もないとは思うが、他国を見ておくのも勉強になるし良いだろう。

前回ほど急いでないとはいえ、またいつ東が攻めてくるか分からない状況には変わりない。

いつでも戻れる準備だけは全員でしておいた。



「おお、それならどっちもあるヨ。

また新しい商売始めるのヨ?

いいねえ、安くする代わりにこっちにも教えてほしいヨ。」


ビスープ王国に到着し、トラシーベに相談するとそんな答えが返ってきた。

これを教えるだけで安く済むのであれば、こちらとしては万々歳だ。

レシピを紙に書いて渡し、3日後に試作するからとお誘いをしておいた。

あとはフリード側にも渡しておかないとだな。

ひとまず必要なものを購入し、今日は全員で泊まっていくことにした。


城に泊まらせてもらうのは申し訳ないので、宿屋を借りることに。

国として潤っている方ではないとはいえ、輸出で大きな利益を得ている国だ。

それなりの質は保たれている。

俺たちとも良い取引相手になってくれているし、これからも続けていきたいところだ。

宿でそれぞれ食事を摂り、今後の発展のためにたくさん話す。


少し前までは全員が暗い顔をしていたが、ここ最近は前向きな意見が多く飛び交うようになった。

東はフェルトから西はジューンまで、大きく横に伸びた陣営。

土地はたくさんあるのでやれることも多い。

それぞれの街に設置した道場から徴兵することも必要だし、フェルトのように自給率をさらに上げることで無駄な土地を減らすのはどうかという意見も出た。

それぞれが国のために何が必要で、何ができるかを考えている。



カーデラ様が命を懸けて護ったこの景色は、普段から一緒に居る俺ですら輝いて見える。

空からの景色はいかがですか。

きっと優しく微笑みながら見守ってくれているだろうな。


俺も空から見る時がいつかは来るだろう。

その時に見る景色が今見ている光景のように美しく、そして誇らしく思えるように頑張ろう。



たくさんのブックマークや★評価、本当にありがとうございます!

おかげさまでめちゃくちゃ楽しく書けてます!

まだまだポイントの数字的には大きくはないですが、これからも楽しんでいただけたら幸いです。


拙い作品ですが、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。

今後ともよろしくお願いいたします!

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