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第23話「苦しめるんじゃねえよ」


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時刻は日没ギリギリ。

カッツェを出て馬を休ませつつ森を抜け、ようやくビスープ王国に到着した。

王国の入口に居た2人の門番に事情を説明し待たされること約10分。

中からトラシーベを含めた5人が姿を現した。


「1人で来いと言ったはずヨ。なんで2人居るヨ?」


「申し訳ありません。どれだけ危険があるか分からず、そのような場所に1人で行くことを妻が許しませんでした。

逆の立場だとしても僕も必ず同行するほど愛し合っているもので、1人で先立たれることのないようにとお連れしました。」


深々と頭を下げるとトラシーベは少し考えるような表情をした。

相手が主導を握っている交渉において、間違いなくタブーを犯しているのは承知の上だ。

それでもアーニャを残して先に逝くことはできない。

今回の件で仮に俺の身に何かがあったとしたら、アーニャも共に死を選ぶ。

死す時、同じ時同じ場所を選ばん。

言うまでもなく、逆の立場でも同じ。

それだけの覚悟はしてきたつもりだ。


「まあいいヨ。どのみちカッツェには知れ渡るヨ。」


「ありがとうございます。」


「では案内するヨ。もちろん変な気を起こしたら、その場で首が飛ぶと覚悟しておくといいヨ。」


そう言い、来た方向へ踵を返すトラシーベ。

まずは最初の関門突破ではあるが、この門から先は完全な敵陣。

言われた通り変な気を起こそうものなら、100%生きて外には出られないだろう。



トラシーベの傍に居た4人が俺たちをダイヤの形に囲み、トラシーベの後を歩いて進む。

向かう先にはビスープ王国の城だろうか、一際大きな建物があった。

石造りの巨大な建物は日没後の辺りの暗さと相まって威圧感たっぷりだ。

その建物への階段を登って門をくぐり、城内へと足を踏み入れる。

蝋燭の灯りを頼りに進み、大きな扉の前で立ち止まる。

ビスープ王国の王との対面だろうか。

アーニャは緊張のあまり、普段よりも強い力で俺の手を握っていた。


高い天井には窓がついており、日没直後の綺麗な夜空が見える。

電気がついていれば素晴らしい風景なのだろうが、ひとまずは通ってきた通路よりは多くの蝋燭が灯されていて多少明るい程度だった。

その向かいの壁に座り、こちらを見据える男。

そしてそれを取り巻く男が3人、女が1人。

あれがおそらく北の大連合のトップ達なのだろう。

ビスープ王がまずはこちらに向けて口を開いた。


「今回の友好関係を断っただけでなく、トラシーベの後を尾行したのはなぜヨ?」


女性が出している男声かと思えるほどには違和感を感じる高めの声。

二次元に浸っていた頃にはよく聞いていたような声だ。

そしてトラシーベの口癖なのかと思えば、ビスープ王国の方言なのかな。

西の方では方言は聞かなかったので、てっきり大陸で共通しているものかと思っていたヨ。


「お断りさせて頂いたのは、東の同盟が背後に居る可能性を考慮したためです。

我々が行っている政策は場を仕切れる人員、腕利きの技術者、どんな仕事でもこなせる器用な軍があれば実行出来てしまいます。

東の同盟がそれを持ち合わせており情報が漏洩した場合、それこそ手を付けられなくなる最強の国家が誕生してしまうので、それを未然に防ぐためです。

尾行したのは僕の判断で、どの国が背後に居るのかを知っておきたいと感じたからです。

まさか接点のない北の大連合だとは思いもよりませんでしたが。」


その説明にビスープ王を囲む4人が納得の顔と取れる顔をした。

現状でさえ手が付けられるとは言い難い戦力を持った東の同盟に資金が加わってしまえば、簡単に天下統一してしまう未来が見える。

それは攻められている北の大連合も感じている部分だろう。


「接点のないとは言うがな。

フリード軍が敗北するまでは、この世界の3大勢力として数えられていて均衡が保たれてたんだ。

それを弱小国が1人の犠牲も出さずに圧勝ときたもんだ。

そりゃ東も焦って動き始めるっての。」


なるほど、言われてみれば確かに。

三国志の3つの大国のうち1つが名前も知らない地方の弱小国に敗れて傘下に入るようなものか。

それは残された2つの国は何事かと探りを入れたり、負けじと戦力を伸ばそうとするだろう。

つまりはこの世界の現状は、そうなっているということか。

いくらこちらが攻められた側だとしても、結果だけ見れば大ごとなのだ。

そして探りを入れてきたのが、今回の北の大連合の一件。


ここまでの少ない情報だが、シェイミは間違いなく無事だろう。

言い方は悪いが、俺と直接コンタクトを取るためのエサとして利用されたのだ。

ひとまずは安心だが、あとはこの場をどう切り抜けるかだな。


「今の北の大連合のように、こちらも少ない領地を奪われないよう必死だったもので。

その時の戦の作戦も僕が考えました。

とりあえず腹の探り合いは時間を無駄に費やすだけです。

これだけの面々が集まっているのですから、腹を割って話しましょう。」


「アッハハハハ!!いいねえ。

捕虜も居る、敵陣の中心、囲まれて逃げ場もない状況。

これだけ不利な盤面だってのに1つも臆さないとは気に入ったぜ!

ウチは北の大連合キグルーシャ王国、ミラ・シャンブレース・キグルーシャだ。

ミラでいいぜ。」


ビスープ王の右隣りに居たミラさんは、笑顔でこちらに名乗ってくれた。

なんというか豪快な人だ。

海賊のような身なりでボサボサの青く長い髪、額から鼻にかけての大きな傷が特徴的だ。


「フェルト王国タロー隊隊長、多摩太郎です。

こちらは妻のアナスタシア・クロイツ・フェルト。」


紹介され華麗にお辞儀をするアーニャ。

俺が筆頭軍師でないことに驚かれて、あんまり目立ちはしなかったが。

ひとまずフェルト・カッツェ同盟の発展を担い、その中でフリード軍が攻めて来たので撃退。

それに関する外交だったため、俺の方に今回の話が回されたのだと説明。

ミラさんも開いた口が塞がらないといった表情だ。


「いや待て待て、発展までは分かる。

軽く流してるけどフリード軍の半数以上が攻めてきたのを撃退ってお前、どれほど凄いことやらかしたか理解してるのか?」


理解も何も、さっき言った通り必死だったんだよ。

パソコンの事についてはこちらから言うつもりはないし。

とりあえずシェイミが無事だろうことは分かったし、さっさと本題を話して連れて帰りたいものなんだけどな。

長くなりそうだし、こちらから切り出すか。


「ひとまず僕のことを説明できましたし、今回ここに呼ばれた本題をお話ししませんか?

それと捕虜となっている僕の部下は開放してもらえるんですよね。」


そう言うとビスープ王がトラシーベに合図し、しばらくしてシェイミを連れて戻ってきた。

俺を見るなり声をあげて大泣きをして抱き着いてきたシェイミをあやし、アーニャに預ける。

怖い想いをさせてごめんな。



「本題は俺から話そう。

北の大連合ルシリス帝国、マキシ・ネブカ・ルシリスだ。」


そう言い一歩前に出てきたのは、いかにも騎士といった格好の男。

フリードがRPG中級装備であれば、その少し上のランクの装備といったところだ。

青い鎧に腰に下げられた大剣、短めの青い髪に鋭い目。

ルシリス帝国は北の大連合の中でも一番南に位置しており、東の同盟との国境の国だ。


「お前さんも既に知っているとは思うが、東が俺たちの領土に攻め入り始めている。

全勢力をあげて攻めてこられたら、俺たちはおそらく1年持たずに敗北するだろう。

そこで、本来であれば我々の領土の資金のために政策を教えてもらおうと思っていたのだ。

しかしそれが叶わぬのであれば、軍事的な支援を頼めないだろうか。

もちろん今すぐに攻めこめと言っているわけではないのだが、こちらに割かれるはずであった戦力を分散してほしいんだ。

さすがの東も2つの大軍を相手にできるほどの戦力はないだろうしな。」


言わんとしていることは分かる。

確かに俺たちと北の大連合が手を合わせれば、東の同盟を苦しめることはできると思う。

それでも戦は戦。

少なからず血は流れる。

こちらにメリットなしでは承諾できないのは当然だ。


それを説明すると苦虫を潰したような表情をするマキシさん。

民の命を預かる立場の者としてこちらの言い分は理解はできる。

しかし現状を鑑みて、東の巨大化をこれ以上のものにしてしまうとたちまち天下統一に王手をかけられる。

その気持ちで揺れているってところだろう。

まあ気持ちは分かるけどな。


「すまない、虫が良すぎるよな。

だが俺たちも民のためにこうして出来る限り動いている。

それだけは理解していてほしい。」


「そこを疑うつもりは一切ありませんよ。

こちらにもメリットがあれば答えは違ったのでしょうけど、申し訳ありません。

ではこれにて話しは終わりですね、失礼します。」


3人で頭を下げ、カッツェに戻ろうと踵を返す。

その姿を追うものは部屋の中には誰も居なかった。

しかし、勢いよく外から部屋の扉が開かれた。

そこに居たのは息を切らせたスクードだった。


「タロー様!!」


俺とアーニャに駆け寄り片手で俺たちの手を掴み、疲労で膝から崩れ落ちるスクード。

何事かとアーニャと目を合わせる。

そして、その後の言葉に一瞬理解が追いつかなかった。


「東の同盟がフェルト王国に急襲!!

現在カーデラ様含め王国騎士団が応戦中、カッツェからもイルシャ様を含めた増援部隊が救援に向かっております!!」


アーニャが小さな悲鳴を上げるまで、何を言われているのか分からなかった。

先ほどまで話していた話はなんだったのだろう。

北の大連合が手ごわいからと、こちらに攻撃を開始したとでも言うつもりか。

握ったアーニャの手が震えだす。

シェイミが俺の服のすそを掴んで辛そうな顔で俺を見上げる。


俺の家族、そして仲間を苦しめるんじゃねえよ。

この2日で正直胃に穴が開きそうなほどのストレスをため込んでいた俺にこの一報は、冷静な判断を狂わせるのに十分だった。


「マキシさん。

さっきの話しですけど、前言撤回します。

家族に手を出されて、黙っていられるほど大人じゃないみたいです。

東の同盟を、全力で潰しに行きます。

スクード。ご苦労だった、ゆっくり休んでくれ。

アーニャ、シェイミ!いきなりで悪いが、フェルトに行くぞ。」


「「はい!!」」




拙い作品ですが、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。

今後ともよろしくお願いいたします!

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