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第17話「ここに居る皆と出会えたことが幸せです」


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翌日、クロスリーに見送られつつジューンを出発した。

ここからはまた2か月ほどの馬車旅。

昨日の今日でアーニャと目を合わせるのも気まずいかと思っていたのだが、昨晩部屋で作戦会議を行った。

結果、逆に新婚旅行なのだと思って存分に楽しむと2人で決めた。

確かにここまでの遠出はこれから先何回できるか分からないからな。

来るときは面と向かって座っていたものの、帰りの今は隣に座って手を繋いで座っている。

現世ではリア充爆発しろ、とあれほど思っていたのにな。

いざ自分がそちら側になると、これは気恥ずかしいが良いものだ。

今更ながら異世界転生様様だ。


とはいえ話す内容は昨日の今日では特に変わらないのも事実。

こんなにも可愛い嫁さんが出来たというのに、話す内容は今まで通り国に関してのことばかりだ。

まあその方が俺たちらしいとは思うが。


変わったことと言えば、立ち寄った街での振る舞いだろうか。

今まではアーニャが行きたいところに向かっていくのを俺が着いて行くということがほとんどだった。

だが今は手をつなぎながら、アーニャがあそこに行きたいと言うようになった。

当然断ることはないのでやっていること自体はあまり変わらないのだが、手を繋いでいることと意思表示をしてくれるおかげで、よりアーニャのことが分かるようになった気がする。

このお店見たいのかな、これ食べたいのかな、など小さなことばかりだけどな。

それでも俺たちにとっては大きく確かな一歩だ。



ジューンを出てから2週間ほどが経ち、とある街の宿に泊まることになった。

ゆっくりとご飯を食べ、2人で一緒にお風呂に入り同じベッドで寝る。

なんというか今まで散々恥ずかしがっていたアーニャ(今もだが)が、こんなにも許してくれるとは。

互いに年頃なだけに、そんな夜を過ごしておいて我慢できるわけもないのだが、そこは2人できちんと話していた。


「正直に言うと、子どもを産んだらタローともお別れしなきゃいけなくなるのは辛いわね。

いっぱい愛してほしいし、たくさんタローとの子どもも欲しいのだけど。

でも後先考えずにしてしまったら、互いに後悔すると思うから・・・。」


「そうだな。まあするにしても避妊をしたり、色んな方法を考えていかなきゃだな。」


「ヒニンってなに?」


「おおう・・・前途多難だ。」


こんな会話ののち、まあ色々と説明したり?

嫁とはいえ、女の子にこんな下の会話をする日が来るだなんて思わなかった。

普通に説明してしまうあたり、俺の羞恥心パラメータはほぼ皆無らしい。

アーニャは茹ダコのように真っ赤になっていたけど。

シャーリーにゴムを作れないか試してもらおうか本気で悩むところだ。



そんな賑やかで楽しかった道中を終え、2か月後。

シャンドラ様に報告するために、カッツェを通り過ぎフェルトへと帰ってきた。

まだ時刻は18時を過ぎたくらいだ。

これくらいなら謁見に行ってもあまり失礼にはならないだろう。



-----


コンコン─


「入れ。」


相変わらず低くて渋い声。

その相手に今から娘さんを僕にください、と言いに行くのだけど。

緊張のあまり思わず扉を開ける手が止まってしまった。

アーニャが両手で俺の手を掴み、笑顔で「大丈夫よ」と声をかけてくれるほどには緊張が出ていたらしい。

意を決して扉を押し開ける。

もちろん、アーニャの右手を繋いだままだ。


「多摩太郎、ただいまジューンより帰還致しました。」


「はるばるご苦労だった・・・と言いたいところだが、それより先に言うべきことがあるだろう。」


シャンドラ様の低い声に心臓が跳ねた。

嫁にもらってくれとは言われたものの、確かな許可を得ずに婚約をしたのだから、やはり思うところがあるといったところだろうか。


「はい。ジューンに到着した日に成人を迎えました。

そしてアーニャ・・・フェルト家が抱える大きな枷について教えていただきました。」


「それを知ってタローはどうした。」


「正直驚きました・・・けど、それだけです。

それを聞いて気持ちが変わるようなことは全くありませんでした。

その運命を受け入れたうえで結婚してくださいと伝え、本人から了承も得ました。

本日はその報告に伺った次第でございます。」


言い終えて深呼吸をし、一発殴られるくらいの覚悟はできた。

どんな罵倒を浴びせられようとも大丈夫だ、たぶん。


「ぷっ・・・フハハハハハ!!」


そんな覚悟をあざ笑うかのような、シャンドラ様の爆笑。

思わず顔をあげてシャンドラ様を見ると、笑ってはいるが目からは大粒の涙がこぼれていた。


「いやすまぬな、タロー。

本当はアーニャから早馬にて先に報告をもらっていたんだ。

タローの覚悟を聞きたかっただけなのだよ、許せ。」


思わずアーニャを見ると、ペロッと舌を小さく出してウィンクされた。

俺に内緒でいつの間に。

隠し事はよくないとは思うけど可愛いからいいや。

俺のことを思ってやってくれたことだしな。


「既に宴の準備はできておる!

愛娘と息子のために、今日はとことんまで騒ごうじゃないか!!」


その言葉を合図に、どこからともなくタロー隊の面々が大量の料理を運んできた。

中にはイルシャとナージャ、シャーリーの姿もあった。


「知らなかったのは俺だけか・・・」


「あはは、ごめんね。タローのことだから緊張しちゃうだろうなって思って。」


「大丈夫だよ、ありがとう。」


アーニャの頭を撫でながら、慌ただしく一気に準備している面々に目をやる。

皆自分のことのように嬉しそうな顔をしてるな。

イルシャとシェイミが若干暗い顔でブツブツ言っているのが気になるが。


そんなこんなで準備を終え、乾杯の挨拶としてアーニャと共に皆の前に立つ。

あの事を話していいかと聞くと、笑顔で頷いてくれた。


「あー、今日はお忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。」

「タロー様、固いです!」


ホリィのその言葉に会場が笑いに包まれる。

恥ずかしさが今になってこみ上げてきたんだよ。

少しくらい許してほしい。


「皆さんの中でご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、実はフェルト家の母親は子どもを産むと死に至るという代償を持っているんです。

流石にそれを聞いた時は驚きました。

だけどこれからもアーニャには自分の隣で笑顔で居てほしい。

一番傍で、シャンドラ様の掲げる平和な世界という夢を支えてほしい。

そんな願いで結婚をしました。

僕にとっての王はシャンドラ様だけですから。

そんな優しい王にこの世界に呼ばれ、その娘であるアーニャと出会えたこと。

そしてこの6年間でここに居る皆さんと出会えたこと。

この世界に来て色んな出会いがあったけど、ここに居る皆と出会えたことが幸せです。

皆が自分の事のように喜んでくれることが、本当に嬉しい。

心からありがとう、と言わせてください。

それでは、今日は日が昇るまで騒ぎまくりましょう!乾杯!!」


「「「かんぱーい!!!」」」


満面の笑顔の者、涙ぐむ者、号泣している王様、酒や料理をかっ食らう者。

様々な顔が見えるが志は皆同じで、それがまた不思議に感じて。


隣で涙を浮かべながら満面の笑みのアーニャ。

この笑顔を護ることが、俺がこの世界に呼ばれた意味かもしれないな。

そんなことを思いつつ、料理を食べる。

こんな幸せがいつまでも続きますように。



「子を成すことができないのは仕方ないけど、タロー程の優秀な雄の遺伝子を後世に継がせないのはこの国のためにならないと思うのよ。」


「まあ一理あるな。」


「ということはその遺伝子をたくさん継がせるためにも、奥さんは多いほうがいいってことよね、シャンドラ様?」



シャンドラ様と酔っ払ったイルシャの会話に、会場の女性陣の目の色が変わった気がする。


し、幸せがいつまでも続くといいな・・・?



拙い作品ですが、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。

今後ともよろしくお願いいたします!

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