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第12話「職業説明会」


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仲介所の見学を終えた俺たちは、建設に関わったタロー隊のメンバー全員に明日から5日間の全休を言い渡した。

6日後の職業説明会の際を手伝ってもらうため、それまでに勤続疲労をなくしておくようにと通達。

メンバーの中から急な休みを持て余すといった声もあったが、今後戦も控えている可能性があるため有事の際に動けるように疲労はきちんと取っておくこと。

と説明すると納得してもらえた。

まあ、嘘は言ってないしな。


事実、フリードの軍が準備を始めているとの情報だ。

おそらく3か月後にはタロー隊総出で出撃となるだろう。

その時のために軽めの鍛錬でもしながら過ごしてくれればいい。

もちろん息抜きに充てるのもよし。

とにかく大仕事を終えた後は労ってあげたいんだ。



そんなこんなで自分たちも身体を休めるため、フェルト王宮へと戻ってきた。

アーニャはお風呂に入ってくるとのことで、自室で対フリード軍の作戦をいくつか考えるとしよう。


3人の軍師が厄介だとイルシャは言っていた。

だが今までイルシャの軍が防衛戦で勝利を収めていたのを考えると、そこまでの切れ者というわけでもないのかもしれない。

もちろん油断するつもりはないが、この時代で俺より策を練れる奴など居ないだろう。

過去の叡智の結晶が知れるのは、俺だけなのだから。

奇襲でさえなければ、どんな策だろうと相手からの後手で弱点を調べられる。

これがどれだけのアドバンテージかは、言うまでもない。


ということで考えるべきは攻撃面だな。

白兵戦はイルシャが居るから問題なさそうだ。

攻城戦や奇襲を担えるようにしておこう。

休むと決めたはずなのに、結局アーニャが風呂からあがってくるまで頭を休ませることができなかった。

皆に言った手前、これは反省しないとだな。



その日は王宮でシャンドラ様たちと一緒に食事を摂り、終始和やかな雰囲気で過ごせた。

シャンドラ様も今はやることの節目なので、一旦肩の荷を下ろせたといったところかな。

オルネスも前より絡んで来なくなったし、カーデラ様もお元気そうで何より。

カッツェのタロー隊の家も良いが、こっちの世界ではやっぱりここが自分の家のように落ち着く。

アーニャがカッツェでの出来事を楽しそうに話し、シャンドラ様が嬉しそうに聞いている。

ほほえましい光景だな、ホント。

将来自分の子どもができた時、こんな時間を大切にしてあげたいと心から思うよ。



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翌日はアーニャと共に街の様子を見に歩いて回った。

以前と比べて、より活気が出てきたと思う。

これも俺たちが裏であれこれ手を尽くしてきている結果だと思うと嬉しくなる。

過ごしている皆の笑顔を見れて、気分も晴れやかになるというものだ。


城下町はあまり大きくないとはいえ、土地自体は多く余っている。

そこを畑や牧場に変えることができれば、食糧自給率も大きく跳ね上げることができるだろう。

ただまあ、休むためなのでこれ以上の考察はよそう。

今日はアーニャと楽しくお散歩すると決めているのだ。

楽しそうに街を歩き、たくさんの人に挨拶をされて笑顔で返すアーニャ。

とても上機嫌だな。

とりあえず今日の目的としていた野菜の種を購入し、家庭菜園の準備も万端。

カッツェに戻ったら早速始めるとしよう。


「あー、楽しかった!今日はありがとうね、タマタロー!」

「どういたしまして。エスコートされっぱなしだったけどな。」

「いいわよ、そんなの。自分がしたいようにできる方が息抜きになるもの。」


それもそうか。

俺も今日はアーニャに付き添って自由に歩くのがしたいことだったし、互いに良いのであれば何も問題はない。

たまにはこんな感じで何もしない休日ってのもいいものだな。



2日目はシェイミたちと共に南西の森へとでかけた。

RPGのようにモンスターが出てくるわけでもないので、軽い遠足みたいなものだ。

積もる話もあったようで、色んな話を聞くことができた。

不満などのマイナスな話ではなく、隊に入れてから毎日が充実しているなどの明るい話。

こうして隊員の言葉を身近で聞くことができるのは、今そして今後のタロー隊にとってとても有意義だ。

どんな話も聞いてくれる上司というのは、いい上司の必須スキルだからな。

親身になって聞いてあげなくては。


続く3日目。

カーデラ様に頼んで剣の稽古をお願いしていた。

一国の戦士長だけあり実力差は雲泥の差という言葉では表せないほど明らかだったが、試行錯誤を繰り返して夕方には一太刀浴びせることができた。

まあその前に何百という数浴びているのだが。

大の字になり息も絶え絶えな状態の俺に、アーニャがタオルを渡してくれた。


「タマタローはまだまだよわっちいわね。」

「だからこうして稽古つけてもらってるんだよ。」


そんなやりとりもありつつ、カーデラ様との稽古は終了。

そのままカーデラ様と共に風呂に入ることに。

男の裸には興味のない俺だが、鍛え上げられた肉体、戦場で受けたであろう無数の傷を見て言葉を失った。

どれほどの戦場を駆け、そしてシャンドラ様を護ってきたのか。

俺もここまでの筋肉とはいかないが、いずれは肩を並べて闘いたいものだ。



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次の日から準備を始め、ようやく職業説明会の本番。

宮殿前の広場にはこれでもかと人が集まっている。

それを見て緊張が限界を超えるアーニャを落ち着かせつつ、隊のメンバーに整備を任せているところだ。

100人以上は集まっているようで、それ以上は数えるのを辞めたらしい。

この大人数の前できちんと説明できるものだろうか。

俺なら無理だ。100%どもるね。

余の中の校長先生のメンタルはどうなってるんだ。


「アーニャ、そろそろ時間だ。」

「無理、ホント吐きそう・・・。」

「練習通りやれば大丈夫だよ。俺も隣に居るから。」

「もう!吐いたら責任取って掃除してよね!」

「ほう、フェルトの姫様はこの程度の演説もできないと?」

「な・・・んですって?!」

「はい、元気になったな。信頼してるよ。」

「後で覚えてなさいよ!!」


ズカズカと広場が一望できるテラスへと歩いていくアーニャ。

覚えるもなにもないさ。

この程度の演説、アーニャならできて当たり前だと本気で思っているからそう言えるんだから。



「今日は職業説明会に来てくれてありがとう。

先の闘いでカッツェ帝国と同盟関係を結ぶことができました。

それに伴い両国の繁栄を担うため、色々な職業を作り、国で管理することとなったのは皆さんご存じかと思います。

今日はその職業について、どんな仕事があるのか、どんな仕事内容なのかを説明する場とさせていただこうかと思っているわ。」


先ほどまで机に突っ伏して蒼い顔をしていた人とは思えないほど立派な口上。

ゆっくりと、そして丁寧に、そして楽しそうに説明する様は本当に魅力的な女の子だ。

本当に国のためになると信じてるという気持ちが聞いていて分かる。

ここに集まった人たち全員が、それぞれが望む仕事に就けるといいな。



「1日に全員ってのはできないですけど、1週間以内に面接までこぎつけられるように計らっておくわ。

それでは以上で職業説明会を終了します。

ご清聴ありがとうございました!」


アーニャの立派な演説に、どこからともなく大きな拍手があがった。

まんざらでもなさそうな笑顔をしながらお辞儀をして中に戻ってくるアーニャ。

緊張の糸が切れたのか。

テラスへと続くドアを閉めた瞬間、ドアに寄りかかりずるずるとへたり込んでしまった。


「お疲れ様、アーニャ。本当に立派だったぞ。」

「ここ数年で一番疲れたわ。」

「シャンドラ様なんてずっと泣いてるもん。本当によく頑張ったな。」


そう言って汗だくの頭を撫でる。

一瞬で顔を真っ赤にし、手を振り払われた。


「あーもう、緊張で汗だくよ!お風呂入ってくるわ!」


真っ赤になった顔を俺には見せないような角度に振り向き、手で仰ぎつつお風呂へと向かって行った。


「2人とも本当に仲が良いな。」

「カーデラ様、茶化さないでくださいよ。隊の仲間であり、一番頼れる相棒です。」

「ふははは、相棒ねえ?」

「カーデラ様こそ、これから面接の日々ですから頑張ってくださいね。」

「おう、そこはばっちりこなしてみせよう。」


ドンと胸元を拳で叩き、任せろとポーズをするカーデラ様。

となればフェルト王国で現状出来ることは終わりだな。

夕方にでもアーニャと共にカッツェに戻るとしよう。


向こうもイルシャが説明会を終えた頃だし、労ってやらないとな。

これからも忙しくなるな。


頼れる仲間たちと共に乗り切っていこう。



拙い作品ですが、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。

今後ともよろしくお願いいたします!

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