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第11話「約束」


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翌朝、タロー隊の本拠地(仮)にイルシャとナージャが訪れた。

これから始まる大がかりな人員募集の詳細を決定するためだ。

イルシャ曰く、カッツェでは既に多くの人材が集まっているらしい。

元々鉱山の近くにあるカッツェでは商業が盛んではなかったため、女性や子ども、力仕事を引退した男性あたりの就ける職業が多くない。


そこに今回の多数の職業の募集。

働きたくてもなかなか働きづらかった人たちにとって、嬉しい一報とのことだ。

失望させないためにも、きちんと決めておかなければ。



「・・・とまあこんなところだな。

多めに人員を割かなくちゃいけない仕事はさっきナージャに伝えた通りだ。」


「そうですね、現状ではこれくらいかと。

発掘に関してはメインでシャーリーさんの工房の方々が請け負って頂けるのは助かりますね。」


「専門の知識も要るからな。

まず一番に人員を割かなくてはいけないのは仲介所の運営だし、それをシャーリーも分かっているからこその申し出だと思う。

本当にあの人には頭があがらないよ。」


ですね、とナージャと2人で話していると、いきなり後ろからイルシャに飛び乗られた。

この子は本当にそろそろ自分が怪力の神子なのだと自覚してほしいものだ。


「お前なあ、夜のベッドで慣れてなかったら即死ものだぞ。」

「ベッドってなに!?」

「うははは!まあそう言うな!腹が減っては難しいことは分からん!」

「あーそういえばそろそろそんな時間か。飯にするか。」

「ねえ、夜ってなに!?」

「今日は試しにぎゅどーんというものを作ってみたので、皆さまで食べましょう!」

「牛丼な、牛丼。」


「無視すんなコラー!!!」


アーニャちゃんドロップキック。

いや思いっきり腹に入って一瞬呼吸止まったんだけど・・・。

いつの間にかイルシャ離れてるし。

助けてくれてもいいんだよ?


俺とアーニャ、2人して涙目になりつつ事情を説明。

寂しいからと夜に枕を持ってイルシャが部屋に現れたこと。

ベッドが1つしかないので同じベッドで寝ていたこと。

抱き枕にされて三途の川を危うくわたりそうになってしまったこと。

きちんと順を追って説明したところ、アーニャは羨ましいがっているのか恐がっているのか分からない表情になった。

感情の抑え方を今度教えてあげるとしよう。



気を取り直して、アルシェが作ってくれた牛丼を皆で食べる。

作り方や味付けに関しては完璧に教えていたので、再現度90%といったところだろうか。

煮込まれた肉が良い感じに味が染み込み、それを炊き立てのご飯の上にたっぷりと乗せて煮込んだおつゆも上からかける。

しかし、何かが足りない。

他の皆は今まで食べたことのない味に感動していたが、少しだけ物足りなさを感じてしまった。

何が足りないのだろうか。

これは次回作ってもらうまでに必ず調べておかなくては。


ちなみにアーニャは2回おかわりしていたほど気に入っていた。

絶対に売れるとお墨付きももらえたのは前向き材料かな。



-----


それからというもの、職業説明会のための資料作りが始まり大忙しだ。

全ての職業の開始時間と終了時間の決定や、勤怠管理をする仕組みなどを作り上げていき、あっという間に時間が過ぎていった。

毎度こういうことをするたびに発想に驚かれるが、現代に生きていた俺にとっては当たり前のこと。

しかしその当たり前も、こうして最初に作り上げた人が居たから当時の当たり前になっていたのだ。

そう考えると、そういったものや仕組みを開発した人は本当にすごいと思う。

今の俺のようにチートで知識だけ得て作りだすのとは訳が違うのだから。


そんな苦労も味わいつつ、全ての準備が整った日の夕方。

フェルト王国から仲介所の建物が出来上がったと報告が入った。

晩御飯を食べつつ明日からまたフェルトに戻ると伝えたところ、速攻食べ終えて家に枕を取りに向かうイルシャ。

なんか恒例儀式みたいになってきたな。

俺は生きて明日を迎えられるのだろうか。



その夜、案の定イルシャが部屋に訪れた。

横になり日々の疲れから瞼が重くなってきた頃、イルシャが後ろからそっと抱き着いてきた。

頭を俺の後頭部につけ、絶対に顔が見えないようにしながら。


「フリードが戦の準備を整えているらしいわ。」

「・・・どこを相手に・・・って聞くのは野暮か。」

「隣接している他の国と友好関係を築いているし、100%カッツェでしょうね。」

「開戦の目安は分かるのか?」

「諜報員の話では、あと3か月といったところでしょうね。」


その声が。俺を掴む腕が。俺を包む身体が。

すべてが震えていた。

あんなにも楽しそうに闘うイルシャでも、開戦前は緊張するものなのか。


「スパイを送り込んでよくバレないな。」

「フリード自体は頭悪いから。その軍師3人が厄介なのよ。」

「さすが大国。軍師3人も居るのか。」

「今までは諜報員の情報を頼りに闘ってこれたけど・・・今は自分勝手に闘うだけじゃなくなっちゃったから。それを失うのが・・・怖い。」


その言葉を聞いて、震える小さい白い手をぎゅっと握る。

一国の王だったとはいえ、今の俺とは同い年の女の子なんだ。

たった15歳の女の子が、先陣を切って戦場を駆け回るなんて現代じゃ考えられない。

しかしそれが有り得る時代なんだ。

可能であれば、内政だけでなく力になってあげたい。

楽しそうに笑うイルシャと一緒に居るのは楽しいからな。


「イルシャは何も失わない。そのための俺たちなんだから、もっと頼ってくれよ。

逆に俺たちもイルシャが居ない生活なんてまっぴらごめんだからな。

・・・勝とう、一緒に。」


「うん・・・約束。」


その約束をして安心したのか、不安すぎて疲れていたのか。

直後にすうすうと寝息を立ててイルシャは眠ってしまった。

俺も連日の疲れから、後を追うようにすぐに意識はまどろんでいった。


震えた手から伝わるぬくもりは、朝起きても変わらずそこにあった。

敵がどれだけ強大だろうと、絶対にこの日常を壊させたりはしないからな。


絶対にだ。



-----


起きて準備を整え、アーニャと共にカッツェを後にしてフェルトへと向かう。

アーニャは今後の職業説明会の内容を頭に叩き込むのに必死になっている。

自分が説明した方が効果があると言い出し、そのまま今に至る。

あまりの情報の多さに、アーニャの頭から湯気が出始めた。

持っていたタオルを水筒の水で濡らして手渡すと、すかさずおでこを冷やす。

その後、タオルを首にまいてもう一度書類の山に向かい始めた。

なんというか、頭が上がらないのはシャーリーだけじゃないよな、ホント。



シャンドラ様にご挨拶を済ませ、完成した仲介所に向かう。

到着する前から見えてはいたが、建物の前に立って見て改めてでかいと思ってしまった。

多種多様な素材の在庫が管理できるように大きめに作ったとはいえ、漫画で見た冒険者ギルド顔負けの施設だ。

中学校の敷地くらいの大きさはあるんじゃないだろうか。

よくこんな短期間で完成したものだ。


「お待ちしておりました、タロー様。」

「久しぶり、シェイミ。本当にご苦労様。」


言いながら頭を撫でると、それはもう嬉しそうに目を細めて笑顔になった。

猫みたいだな、シェイミは。


「お疲れのところ悪いんだが、このポスターを町中に張り出してくれるか?

もちろんみんなで分担してやってくれ。絶対に1人でやろうとするなよ。」

「かしこまりました!必ず分担して今日中に終わらせます。」


これの張り出しさえ終われば職業説明会まで5日空く。

その間、建設組は全休にしてあげないとな。

ブラック国家にするつもりなど毛頭ない。

現世のいいところは吸収し反映、悪いところは見習ってはいけない。

これが今のこの時代に生きる俺の掲げる幸せな国造りだ。


というのをシェイミに伝えて納得してもらうまでに時間がかかってしまったけどな。

うちの隊の皆は働き者が多くて助かる分、注意していかないとな。


俺も5日のうちにできることを進めておかなくては、と思ったのだがトップが体現できていないのでは下も着いてこないだろう。

ここのところ休めていなかったし、3日ほどは久しぶりの休暇を取るとしよう。


仲介所を見学しながら、そんなことを考えて。

楽しそうに見るもの全てに目を輝かせるアーニャの可愛らしい部分を見ながら、後について行った。



拙い作品ですが、最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。

今後ともよろしくお願いいたします!

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