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萩の一夜  作者: 坂本梧朗
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第6話


 二学期に入ると生徒達も個性を表し始め、個々の生徒の抱えている問題も顕在化してくる。それが問題行動となる場合もある。クラスで問題を起こす生徒はもちろん岩谷だけではなかった。十月の初旬、野中という生徒の喫煙が発覚した。朝、遅刻をしてきて、制服の詰襟に学年組章が付いていないのを校門指導の教師に見咎められたのがきっかけだった。呼び止めたのに無視して行こうとしたのがその教師の心証を悪くした。職員室に連れて行かれ、鞄の中を調べられると、煙草とライターが見つかった。野中はそれを他の学校に通っている友達からもらったものと弁明したが、喫煙の事実は認めた。彼は一学期に無断免許取得で処分を受けており、今回は重い処分になることが予想された。処分を決める職員会議では、野中を挙げた教師は、発覚後の態度が悪く、調書の書き方もふざけ半分で反省が見られなかった、として退学を主張した。同調する教師もいた。照義は担任として、「変えられる可能性は十分にある」と反論した。同様な意見が二、三出て、結局、野中は生徒指導部の原案通り、無期停学となった。無期というのは反省状況に応じて停学期間が変るという意味だった。

 野中は外見上はおとなしく目立たない生徒だった。しかし学習意欲は殆どなく、進路も就職を希望していた。一年生の時、一時不登校傾向が見られた。原因は親の言い分では、担任教師の体罰にショックを受けたということだった。照義はこの事件で親に接してみて、両親ともに学校に対して強い不信感を抱いていることを感じた。親の態度は彼に不安と反発を覚えさせたが、野中本人はむしろ情緒的に不安定なひ弱さや、思慮の足りない稚さを感じさせる生徒だった。横着な態度が出ることも時にあったが、岩谷のように突っかかってくることはなく、それだけ照義もゆとりをもって接することができた。寡黙で、何を考えているのか捉えどころがないという面もある生徒だった。

 二度目の問題行動であり、職員会議で退学という意見も出たことを考えると、短い停学期間で済ませるわけにはいかなかった。野中の家庭謹慎は三週間余り続いた。その間照義は電車とバスを乗り継いで、片道四十分ほどかかる野中の家を四、五回訪問した。応対した母親は、不在の時も一、二度あったが、彼に一度もお茶を出さなかった。


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