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4.あたしは御使いになれるらしい。①

◇ ◇ ◇


 あたしが堕天使に転化してから数カ月が過ぎた。

 その間なにをしていたかというと、タルタラ様の元で、それはそれは真面目に堕天使としての修行に励んでいた。

 なんでもタルタラ様の方も、元々はそのつもりであたしを()()()()()(発言ママ)らしい。そろそろ()使(つか)いの後継者を育てようかと考えていた矢先に、新進気鋭なドス黒オーラ(発言ママ!)を感知したとか。


 一度気になって「じゃあどうしてあたしに天使化の可能性を教えてくれたんですか。もし天使に転化していたら、あなたにとっては助け損じゃないですか?」と聞いてみたことがあった。

 タルタラ様は快活に笑って答えた。


()ちて天界から距離を置いているとはいえ、一応わらわも天界人じゃからな。そこは公平に機会を与える。まあだが正直なところ、(ぬし)が堕天使に完全転化してくれてよかった。万が一天使化してしまっておったら、かけた手間への腹立たしさで反射的に滅してしまうところじゃった」


 堕天使様は実に堕天使様だった。


 まあそういう訳で一応期待の新人として、修行には愚直に励んだ。

 朝目覚めてはシビリアーナを(のろ)い、タルタラ様から教わった念の練り方を(ちゅう)(じつ)に復習。昼食後はシビリアーナの肖像画に()(ばり)をぶすぶすと刺し、午後はタルタラ様に借りた教書で天界についての知識を蓄え、夕食前にはシビリアーナの不幸を願い、就寝前にもシビリアーナの不幸を願う。夢の中ではシビリアーナを殺した数だけ羊を数えた。


 積もり積もったシビリアーナへの恨みを毎日、全身全霊ぶつけていたが、そこはそれ、あの女には強力な加護がある。

 強力な加護――そう、つまりはタルタラ様だ。


 タルタラ様は闇の()使(つか)いとして、シビリアーナに加護を与えている。

 それが不思議だった。

 シビリアーナがあたしを殺したことはタルタラ様に無関係だとしても、(くろ)()()であることを恥じ、隠し、(しろ)()()のふりをするあの女に、どうしてタルタラ様が肩入れするのか謎だった。

 答えはこうだ。


「その突き抜けた性悪さが気に入った」


 堕天使様は性悪がお好き。

 そんなこんなで、タルタラ様に教えてもらった術式や念を用いて、タルタラ様の加護に正面突破を仕掛けるという不思議な関係が、あたしたちの間に構築されていた。


◇ ◇ ◇


 タルタラ様は良い師だった。本人は認めないだろうけど、意外に面倒見はいいし、優しいところもある。


 特にパトリックにはベタ()れなのか、なにかにつけて世話を焼いていた。これまた本人は否定していたが、パトリックに構う時は顔のパーツがふにゃふにゃと定まっていないからバレバレだった。

 そんなタルタラ様を身近で見るようになったから、いつの間にか風聞から(いだ)いていた恐れは消えていた。


 だけどそんな折、『爪剝ぎの堕天使』を思い出すような出来事があった。


◇ ◇ ◇

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