表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/18

6.あたしは反撃できるらしい。④

「なにをですの?」


 いぶかしげに聞き返してくるシビリアーナ。

 あたしはとうとう我慢できずに、ぷぷっと吹き出した。


「あんた……あんたさ……五歳過ぎてもおねしょしてたらしいじゃーん!」

「なっ……」

「高貴な高貴なシビリアーナちゃん。兄姉(きょうだい)たちからは、チビリアーナって呼ばれてからかわれてたんだってねー♪」

「なっそっなっ、ななななななんっ……」


 紅潮してた顔色がせっかく元に戻りかけてたのに、一瞬にして彼女の顔が再び、ぼっと朱に染まる。


 周りの神官たちはできるだけ平静を装っているようだが、所在なさげに視線をそらす者、吹き出すのをこらえている者、引き気味な者とそれぞれ色が違っている。


 やっば。マジ楽しいわこれ。

 タルタラ様のように読心術を使えるようになりたくて、シビリアーナの姉で実践した成果がこれだけなのはしょぼくれてるけど、その内容はあたしにとっては格好のいじりどころだった。


 あたしはシビリアーナに近寄って、彼女の肩に腕を回した。


「まあこればっかりは体質とかもあるもんねえ、気に病むことないと思うよチビリアーナちゃん♪ あたしは軽蔑しないよチビリアーナちゃん♪」

「う、うるさいですわ! いえそもそも、よくもそんなデタラメぬけぬけとっ……」


 突き飛ばすようにあたしから離れるシビリアーナ。

 それと逆行するように、神官たちが詰め寄ってきた。


「ネフェリア様」

「お願いでございます、加護をお与えください」

「せめて次なる(しろ)()()を見つけるまでは……」


 もみ手の彼らに向かってあたしは唇を突き出した。


「えー、嫌だよ。チビリアーナちゃんに加護を与えるなんて」

「そ、それでは()()をすげ替えますから、それで(なに)(とぞ)……」

「な、なんですって⁉」


 シビリアーナが悲鳴を上げる。


「そうだそれがいい」

「こやつは愚かな()()から役割を偽った(うそ)つき女。別のふさわしい()()を探すべきだ」

「なにを馬鹿なことを言ってますの⁉ 許されませんわよそんな横暴っ!」


 そうだそうだと同調が広がる中、シビリアーナだけがきんきんと金切り声を上げている。

 そんな様子をたっぷり満足いくまで視界に収めた後、あたしは切り捨てるように言い放った。


「何度頼まれたって同じ。あたしはいかなる(くろ)()()にも加護を与えないよ」

「しかしそれでは――」

「でもね、そっちにはもっといい話」


 神官の言葉を遮り、にっこり笑う。


(くろ)()()なしで、あたしが(じか)に加護を届けてあげる」

(じか)にですと?」

「そ。つまりは介在なしのダイレクト加護。おお、お得だねえ!」

「わう!」


 合いの手ありがとパトリック♪


「幸いにも家は近所だし? あたしが毎日通って仕事をこなしてあげるよ」

「お、おお……」

「それなら……」

「いやむしろその方が、国の繁栄には望ましい……」

「ちょ、ちょっと皆さん! 冷静に考えてくださいな!」

「口を慎め、貴様はもう()()ではない。ただのチビリアーナだ」

「シビリアーナですわっ!」


 神官たちにすげなく扱われ、シビリアーナはちょっと涙目だ。


「あ、ちなみにだけど」


 あたしは頃合いを見計らって口を開いた。


(しろ)()()は復活させるつもりなんでよろしくね。こっちも()使(つか)いが代わったんで、心機一転みんなで頑張るつもりだよ」

「なに、光の()使(つか)いも代わられたのか⁉」

「一体どの天使様に……?」


 ざわめく神官たち。

 あたしはふふんと顎を上げ、付き人のローブを剝ぎ取った。

 その一瞬で、少年であったはずの者が姿を変える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ