表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/18

6.あたしは反撃できるらしい。②

「その点についてはふたつ、訂正させてほしいんだけど」


 まずは一本指を立てる。


「ひとつ。あたしが(くろ)()()の座に就くのは無理。なぜなら(くろ)()()はあたしじゃなく――」

「っ⁉ ちょっとネフェリアさん⁉ なにを――」


 ようやく言葉を発したシビリアーナを、あたしは当然ガン無視した。


「――あたしじゃなく、そこの腹黒陰険女だから。彼女が(くろ)()()。真っ黒々」

「なっ……」

「まことかそれは⁉」

「どういうことだシビリアーナ!」


 ざわめく神官たち。

 彼らの注目を浴びて、シビリアーナは紅潮した顔を引きつらせた。


「なっ……そっ……ちょ、ちょっとネフェリアさん! いきなり戻ってきたかと思えば、なんて無礼なことを!」

「無礼もなにも事実だから。あたしが(しろ)()()であんたが(くろ)()()。最初からずっとそうだった。あんたのぶりっ子に付き合って、あたしが見た目の役割を代わってあげてただけ」


 あたしはくるくると指を回しながら、「ねー?」とパトリックに同意を求める。パトリックは「わっふ!」と大きくうなずいてくれた。


「で、もうひとつ」


 ぴっと指を一本、追加で立てる。二本の指でくるくると空気を混ぜながら、


「あたしは白だろうと黒だろうと、()()の座に就く気は更々ない。だってあたしは()使()()()()()使()だから」


 胸元に手をやり、ここぞとばかりに(がい)(とう)を脱ぎ捨てる。

 同時に背中からはじける解放感。


「おおっ……」

「まさか……」


 感嘆と畏怖の声。実に心地いい。

 あたしは漆黒の翼を存分に伸ばし――なんか後ろにいた人っぽいなにかを痛烈にはたいてしまった気がするけど、まあ気にしない――シビリアーナお得意の優雅な一礼を()()してみせた。


「傾聴傾聴ー。タルタラ様は諸事情により、()使(つか)いの座を降りられました。その後継はタルタラ様直々のご指名をいただいた、あたしネフェリアが務めさせていただきまーす」

「え……?」

「つまりはシビリアーナ。(くろ)()()のあんたはあたしに加護を乞わねばならないってわけ」

「な……そんな馬鹿なことっ……」


 口をぱくぱくさせるシビリアーナ。


「信じられない? じゃあ共鳴してみよっか」


 付き人の少年の肩にもたれながら、あたしはぞんざいに右手を振る。するとシビリアーナの金髪が、純白に輝き始めた。()使(つか)いと()()のつながりを示す印だ。


「これは……本物じゃ! 本物の()使(つか)いじゃ!」

「ええいシビリアーナ! 早く契約を交わさぬか!」

「そんな……でも……」

「早く!」


 ぐずぐずと「でも」を連発するシビリアーナに、神官たちが「早く早く」と契約を迫る。

 さすがのシビリアーナも、その流れには逆らえなかったようだ。発光の収まった髪をなでつけ、渋々……といった様子でまぶたを下ろす。


「では……お願い、します」

「ごめん小さくて聞こえない!」

「お願い……しますわネフェリアさん――」

「さん⁉」

「……ネフェリア様。わたくしと契約して、加護をお与えてください」


 ふふっ……ふふふっ。

 あたしは少年から、ゆらりと身体(からだ)を離し――歓喜を爆発させた。


「ぶぁっかじゃないのぉ! そんなのお断りぃっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ