雪
さわれば溶ける雪のような
結晶を
わたくしたちは既に知っていはしまいか
むしろ
知りすぎているくらいではないか
世界はあまりに粗雑に大味に創られているが
そう思うやいなや
不意に電灯は消されて
蓋は閉ざされる
そして瞼には鍵をかけられ
鍵は砂糖菓子よりやわく
滅壊する
太陽は機械仕掛けの
ひつじの皮をかぶったメフィストフェレス
いや話は既に逸れている
感傷がつねに正しく
感傷だけが正直なのだ
という
それこそ感傷的にならざるをえない
うつつを
どう思う
さわれば溶ける雪のような結晶を
わたくしたちはめいめい
まるで脳についた
疵痕みたいに所持している
たらら
たりらりらん
ぽえむの狼いんざハウス
めらんこりぃ
に
ほんとなら用は無い
それゆえに
おとなになり
せっくるに耽溺したはずなんすが
おそらくはさ
性器と性器を
粘膜と粘膜を
そうするように
感傷と感傷を
エスとエスを
こすりあわせたいのだよね
透き通った翅をこすりあわす
蟲かなにかの様相
そのように
いとけなく
主体はエロスではなくて
たりらりら
らりらんら
エロスすらイデアの影
雪の季節を
まっている
降る雪の影
みつめてる
了。