夏祭りの君の想い出
遥彼方さま主催
夏企画
「夏祭りと君」
2019.07.01~2019.07.31
誠に勝手ながら、参加しました。
良一は私が生まれたときから家族だった。
血がつながらなくても、他の人がおかしいと言っても、それは変わらない。
私は良一が大好きだった。
学校で嫌なことがあっても良一の首に抱き着いて、その首の毛の陽だまりのような匂いを嗅ぐと落ち着くし、その体温を感じると包み込まれるように安らぐのだ。
良一は私のヒーローだ。
幼い頃からいろいろと助けてくれる。
遊び場のない都会で、仕方なく駐車場にてボールで遊んでいたら、ボールが坂を転がって道路へと出て行ったときに追い掛けた私が車に轢かれそうになっても、良一は駆け付け、救ってくれた。
車が迫って怖かった私は、良一の首に抱き着き、泣いたものだ。
そのときも良一が助けてくれた。
譲るということをしない子供だった私はいじめっ子に対して「嫌ッ」と反論する。
そこでいじめっ子の平手打ちが飛んだ。
マンションの駐車場で遊んでいた私たちの近くには当然、良一もいた。
倒れた私を見つけて、いじめっ子を攻撃する良一。
助けてくれただけなのに良一はいじめっ子を怪我させたということで罰せられる。
その後もいじめっ子が私に絡んできた。
前回と同じように平手打ちを喰らうも倒れない。
良一はもういない。だから……
「負けてなんて、やらないッ! あんたのせいで良一は死んだんだ! 取り巻きがいないと何もできないくせに、許さないんだからッ!!」
反撃の平手打ちと共に言い返す。
いじめっ子は驚き、捨て台詞と共に逃げていく。
「覚えていろッ!!」
取り巻きも「待って~」とついていった。
逃げていくいじめっ子の腕には未だに消えない良一の噛んだ傷跡が残っていた。
母に浴衣を着つけてもらう。
毎年、良一と一緒に行っていた夏祭り。今年も行く計画を立てていた。
そして夏祭りの今日。良一が心配しないよう予定通りに夏祭りへと出かけるのだ。
良一の想い出の品を手に持つ私。
いつも使っていた、散歩用のリードを――