八田八重の日常。
しゅーりゅーさんがいない。部活に来て欲しくて、さっき鞄を実験室に持っていったんだけどなぁ。
もう無理矢理既成事実を作っちゃえ、ってね。
同じ部活で同じ学年のウタは、相変わらず高二の教室で江田先輩とお話ししてるだろうし…
全く…あの二人は、付き合うようになってから、ますます親密になったよね…しゅーりゅーさんも可哀想に。
もしかして、しゅーりゅーさんが部活に来ないのってそれが理由なのかな?
なんて。
そんな筈ないか、と思い込むことにして。
顔をあげると、ちょうど近くにしゅーりゅーさんがいた。
「あ、しゅーりゅーさーん!って、あれ?鞄、取りに行ったの?」
「あ、八重…うん。だって、今日予定あるし…」
「ちょっとだけ!ウタちゃんが帰ってくるまでで良いから!」
「それだと完全下校時間になるじゃん…」
ぐぐ、と思いきりしゅーりゅーさんの腕を掴みながら言う。
だって帰って欲しくないし、私一人だけ残ってると後輩たちにいじられるから。
「じゃあ5分!いや、10分だけ!」
「増えてるし…いや、本当に、用事があるから、ね?」
苦笑しながら、しゅーりゅーさんは言う。
「え…本当に駄目?」
「用事があるから…」
ごめん、としゅーりゅーさんは苦笑い。
少し、イラっとした。
どうして?
何で来てくれないんだろう…
「そう…じゃあまた明日。」
自分でも少し驚いた。冷たい声が出ちゃったから。
「…うん。See you!」
しゅーりゅーさんは少し驚いたように目を見開くと、手を降って昇降口へと歩いていった。