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私たちがおちつく家は。  作者: 弥生涙
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2.秀流・彼岸(すえはる・ひがん)の日常。

「えー、ここは正弦定理を使って…」

今は6時間目の授業中。

親に言われ、習った内容。

だけれど。

一応、私はちゃんと授業を聞いている。

だって、家で勉強をするつもりなどほとんどないのだから。

「よし。今日はここまで。宿題は教科書145ページの練習19と20。後数分は自習。」

先生の声で、はっと、我に返った。後は自習、か・・・

よし。寝よう。

私は机に突っ伏すと、そのまま意識を手放した。

「しゅーりゅーさん!しゅーりゅーさんってば!!また寝てたの?」

「ん…授業終わった感じ?」

「そうだよ?」

じゃないと私が来られるわけないじゃん、と、隣のクラスで、仲のいい八重の声で、目が覚めた。どうやら、もう放課後らしい。

「で!しゅーりゅーさん!今日は部活くるの?」

「んー…今日は…」

「じゃあ、荷物持って先に実験室行っとくよ?」

言うなり、八重は教室から出ていった。

…私は部活に行くつもりなんてないのに…否、行きたくないのに…

「はぁ。」

仕方なく、私は部活のミーティング場所である実験室へ向かった。…。学校の廊下を歩きながら、私は考える。人間関係って本当に面倒くさい。みんなみんな、いなくなってしまえばいいのに。期待してきたり、男遊びをしたり、比較してきたりする母親も、借金をして逃げた父親も、荷物を勝手に持っていく八重も。

でも、そこで私は、その考えを否定する。

私がいるからだ。

私がいなくなっちゃえばいいのに。

って。

けれどもやっぱり、死ぬのはこわい。

すれ違う同級生に手を振りながらも、私はずっと思う。

死にたい。けれど怖い。

って。

だから、指の皮をむいてしまったりするのだろうか。

「はあ。」

いつの間にか実験室についていたようで、私は一つ、ため息をつき、扉を開けて中に入った。

「あれ?ヒガンちゃん。来られたの?」

最近来てなかったよね?と、顧問の寺西先生は言う。

「あ、はい、そうなんですけど、八重にとられたかばんを取りに来て…」

さっきまでは無表情だったのに。私の顔には嘘みたいな笑顔が浮かぶ。

最近来てなかったよね?と、顧問の寺西先生は言う。

幸運にも、今八重はいないようだ。

「そうなんだ…じゃあ今日は…?」

「ごめんなさい…ちょっと用事があって…」

そういうと、寺西先生は何かをわかったような顔をして笑い、手を振った。

「そっか、無理せず頑張ってね?」

「りょーかいです!また明日!」

鞄を背負い、寺西先生に手を振る。今日、どこに行こうかな。


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