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運命の出会い—白銀の女帝と若き戦姫 6

 翌日の朝。

 カーラの寝ている部屋の窓から日が差し込んでいる。城の外では鳥の鳴き声がする。

「うーん、朝か・・」(そういえばベッドで寝たの何日ぶりか・・)「まだ何か眠い、二度寝しよ・・」

 再びシーツに潜り込み寝ようとする・・が、その静寂は打ち破られた。

 ドンドン、ドンドン。(うるせーな、誰だよ、朝っぱらから? )

「カーラさん、おはようございます、起きてますかー? 」

(レイミ(あいつ)か・・)カーラ、ベッドから出てドアの前に歩み来て勢いよく開ける。

「うっさい! もう少し寝かせろ、私は朝弱いんだ! 」

「うわっ・・」

引くレイミ。なぜなら・・・、カーラは上は胸部を覆っただけのタンクトップ、下は例の布面積が極端に少ないパンツという恰好だったからだ。

「早く服着てください! 」「お父様に夕べの件報告しないと」

 カーラ頭掻きつつ、

「あーめんどくさいなあ、お前から言っといて」

「そういうわけにいかないから」「ほら、行きますよ! 」


 身支度を終え、王・ホークウィンド・キルミスターの元に謁見する。

「おっはよーさーん、王様」「朝からお仕事ご苦労さん」

(おいおい・・)側にいるレイミ気が気ではない。王の側近たちも明らかにピリピリしている。

 しかし、キルミスター公少しも動じず、

「夕べはよく休めたようで何よりだ」

「しばらくここに厄介になることにしたわ、よろしくねーん♡」

「それはありがたいことだ、さぞ娘も喜んでおっただろう? 」

カーラ、わざとらしく笑みを浮かべ、「それはもう、私に身も心も捧げかねないくらいにね、うふふ」

 互いに腹の探り合いをしてるであろう、カーラと父王。レイミはハラハラしつつ見守るしかない。

「それにしても・・」「実によい娘さんですねぇ~」「いやーお父様の血筋と教育がよろしいのでしょうなあ」

 カーラ、側のレイミを引き寄せ、ぐりぐりと頭撫でくる。

「ち、ちょっと・・何すんのよ! 」

 父王の真意を探るべく挑発するつもりなのか? キルミスター公、さすがにピキッときたか、

「そなた、娘に何かしたのか? 」

「いえ、ご安心を、まだ一線は超えていませんから~」

 ガスッ! 何かと思えばレイミの肘打ちがカーラの横腹にヒットしたのだった。

「ううっ酷いよ、レイミさん・・」

 レイミ呆れつつジト目で、

「あんたねえ、あんまり調子こくんじゃないわよ、何が『一線を越える』よ! 」

 カーラ涙目となりレイミの前に膝をつき両手合わせる。

「ごめーん許して・・」

 レイミ、はぁと溜息つき、

「お父様、もう下がってよろしいでしょうか? 」

 父王、思わぬ娘の行為に不意を突かれたか、

「う、うむ、もう下がってよい・・」

 レイミ、カーラに無理やり頭下げさせ退場していく。

 遠ざかっていく二人の声。

「なあ朝ごはんまだかー? 」「もう少しだから我慢するの! 」

 二人が完全に去ったのを確かめると側近の隊長がキルミスター公に話しかける。

「呆れたものですな、本当にあの様な者を我が城に置くつもりですか? 」「姫様の教育上もよろしくないかと」

 王、一瞬押し黙るが、

「奴は一見道化を装っているようだが油断ならぬ女だ、監視の必要がある・・」


 城の食堂にて朝食を摂るカーラ。何かの穀物をだし汁で煮た主食(あえて我々の世界の料理に例えれば中華粥かおじやかリゾットの様な物か)、何かの干した肉を焼いたもの、果物、茶のような飲み物が食卓に並んでいる。

「ふむ、一応一国の城の朝食メニューだけあって中々悪くない・・」「もう少し塩気が欲しいか・・」

「おじゃましまーす」向かいの席に座ったのはレイミである。

「何だお前・・」

「いいじゃないですか、一緒に食べよう?」

 カーラ食後の飲み物を飲みつつ「さっきのアレ、痛かったぞ」

「ごめん、でも・・」

 言葉を遮り

「私がああしたのは、この城ではお前の方が立場が上なのだということにしておくためだ」「その方がお前の親父の心象もいいだろう? 」

「・・・(一応そういう事まで考えてたんだ)」

 そこでレイミ、先日より疑問に思っていることを問うてみる。

「ところで、貴方が言っていた"キ"て何なの?何かすごい技みたいだけれど? 」

 カーラ、珍しく素直に答える。

「"気"というのは、まあ分かりやすく言うと己の体内にある生命を司るエネルギーを具現化、実体化させたものだ。別名に『オーラ』という言い方もある」

「はい??」(全然分かりやすくないんですけど・・)

「"気"自体は誰にでもある。むろんお前にも」「ただ、それを実体化させ、戦闘に使うということができるのは限られた者しか居ない。」

「カーラさんが、それを使いこなせるのは半妖だからなのですか?」

「別にそれ自体はあまり関連はない、生粋の人間に比べたら多少有利かもしれないがな、資質と鍛錬と修行が最終的にモノを言う」

「魔法とは違ったりするのかな?」

「いわゆる魔法とは原理が違う。まあ魔法もこの"気"も無限に好きなだけ使えるものではないのは同じだが・・」


 ドゥン!!!!

 突然の衝撃音に静寂は破られた。

「何だ!?」

 兵士たちの怒号が響く。「敵襲! 」「敵襲だー! 」

「兵員は戦闘配置に着けー!」「非戦闘員は城の奥に退避せよ! 」

 城のバルコニー部に駆け付けるカーラとレイミ。そこに見たものは――――――。空を舞い、襲い来る一匹の巨大な怪物の姿であった。

「む!?あれは? デムボガーだな」

カーラが呟く。

一軒の家ほどの大きさ、禍々しい形状の翼をはためかせ、口より炎を吐きつけてくる。

(それにしても、なぜあんな怪物がここに? )

「カタパルトと魔道高射砲を持てーー! 」

 応戦する兵士たち。ひゅん! どわっ! ひゅん! 大型矢も魔道砲弾も空しく宙を切るばかりで全く命中しない。

 逆に怪物の炎と体当たりにより蹴散らされる兵たち。

「下がれ、お前らの敵う相手じゃない」

 カーラ、兵たちを押しのけ前に出るのであった。

「ちょっ、大丈夫なの? カーラ・・」

「折角雇われたんだ、それなりに仕事しないとな! 」

 不敵にほほ笑むカーラだが、勝算あるのだろうか?

 そこへおっとり刀で現れたのは、ホークウィンド・キルミスター王、その人であった。

「危険です、陛下! それに姫様も! 」「お下がりください! 」

側近が叫ぶ。だがキルミスター王、

「ならぬ! このホークウィンド・キルミスター、敵に背など見せぬ! 」「さあ、カーラよ、見せてもらうぞ、お主の戦いぶりを! 」

 カーラ余裕の態度で首を叩きつつ

「ふん、食後の運動には丁度いいか・・」

 グゥヲヲヲヲヲ~~~!

 咆哮を上げ、カーラに襲い掛かる怪物。

 ドゴオッッッ!!

凄まじい音がしたと思ったら弾かれた怪物。なんとカーラが体の前面に張ったバリヤーに弾かれたのだ。そのバリヤーも気の力によるものなのであろう。

 カーラ、すかさず大ジャンプ、体制を立て直そうとしている怪物の背に飛び乗る。

「おお! 」

 ざわめくギャラリー。

「破ああっ! 」

気合一閃、怪物の後頭部に手刀を突き刺すのであった。

つぎの瞬間、ぽごぉっと鈍い音を立て粉々に砕け散った怪物の頭部。崩れ落ちる怪物。完全に絶命したようだ。

「うぉぉぉぉぉぉっ!!」「すげー」「やりやがったぜ! 」

 歓声に包まれる城。

 カーラ面倒くさそうに

「ちっ、少々気合入れ過ぎたわ、また食べ直さないとカロリーが足らん」

キルミスター王満足げに

「うむ、さすがだ、あのような怪物を難なく斃すとは」「実に心強い、奴めを我が元に引き入れて正解だったわ」

レイミ、調子こき、目をきらきらと輝かせながら

「ねっ、お父様、私の言った通りでしょ! 」

例の側近の隊長は冷静を務め

「それにしてもなぜあのような怪物が、我が城を? 」「街の方は被害を受けてないようなので真っすぐこの城だけを狙ってきたとしか・・」

 キルミスター王それに返答する。

「恐らく怪しいのは、隣国、ジェダスプーリ王国の者であろう」「あの愚王、ロブハム・ホードの差し金であるかもしれんな」「あの怪物は我が国の防衛体制を探る威力偵察のつもりかしれぬ」


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