運命の出会い—白銀の女帝と若き戦姫 5
ここはレイミの父、ホークウィンド・キルミスター公の私室。父と娘、ソファーに腰掛けテーブルを挟んで対峙している。
「レイミよ、お前を助けたというあの者、有名な賞金首であるカーラ・エンジェルウィッチで間違いないようだが」「そもそも奴は・・」
一瞬言葉を濁らせる父王。
「あの人が何をして賞金首になっているのかは知らないけど、私を助けてくれたのは間違いないことだから」
レイミ必死で反論するが・・。
「奴は・・グワイエットの乱の首魁の一人だった」「無論グワイエットの乱のことは知っていよう?」
「ええ、史学の授業で習いました。今からおよそ100年程前、怪しげな魔道を背景にここモルタヘイド王国を含むスラシュタル大陸全域を侵略・支配しようとした組織による戦乱・・我が国を始め各国の連合により組織の指導者は滅ぼされ、乱は鎮圧された・・」
ここではっとするレイミ、
「でもそれは100年も前のことでしょう? そんな昔の人が何で生きて・・」
父王レイミの言葉を遮る。
「奴、カーラは半妖だ。すなわち、人と人に非ざる魔の者との合いの子なのだ」「あの様な得体の知れない者は何企んでいるか分かったものではない、お前を助けたのも恐らく偶然を装って・・」
レイミ、(やめて! そんなことない! あの人はそんなんじゃない・・・! )と思わず激高しそうになる。がここで冷静に考えることにする。(ここでムキになったりしたら却ってお父様は頑なになるだろうし)そして必死に知恵を絞ろうとするのであった。
(これではお父様は兵を使ってカーラさんを始末しようとするだろう、当然彼女は反撃するだろうし、そうなったら大量の犠牲者が出てしまう、そうなったら・・)(それならいっそ)
「あのー、お父様、いっそこうしたらどうでしょう? あの人、カーラを我が王家の味方に引き入れるのです」
父王、ホークウィンド大いに驚愕する。当然である。
「な、何を言うかと思えば!?」「レイミよ、お前正気なのか? 奴に誑かされているのではあるまいな? 」
「あの人の強さとタフネスさは桁外れです、普通の兵士の比ではありません」「一人で一個連隊くらいの戦闘力はあると考えます」「もし我らの味方となれば大いに心強い戦力となることでしょう」「敵に回すよりは得策かと思いますが」
父王少し思案するか。(我が国が現在周辺国とも懸案を抱えているのは確かだ、簡単な戦力の増強ができるのならそれに越したことはない・・)「しかし、奴が素直に従うのであろうか・・? 」
「その点は大丈夫、あの人はああ見えても案外と単純な所がありますから」「衣食住を保証して賞金首の手配を解除すれば容易になびくかと」「説得は私がやりますから」
「随分と自信あるようだが・・! お前がそこまで言うのなら・・」
(行ける! )
レイミ、精いっぱい明るく振る舞う。立ち上がったと思ったらくるりと回ったり。
「レイミにお任せ~、手配の解除指令はお願いね~お父様」
ダメ押しにウインクをも・・。
カーラが泊っているという来客用の部屋に向かうレイミ。彼女の胸中やいかに?
コンコン、部屋の戸をノックする。が返事がない。「カーラさん、入りますよ? 」ガチャリと扉を開け室内に入る。
部屋には持ち物やら着替えやらが散らかしてある。が誰も居ない。
「居ない、どこ行ったんだろう? 」
その辺捜してみるべきかと、部屋を離れる。すると前方に人影が二つ互いに向き合っている。
一人はカーラである。彼女の白い髪と素肌は遠目からでもよく目立つ。もう一人は・・城のメイドの子だ。何だろうか? メイドが何か粗相でもしてカーラの不興を買ったのだろうか? もしそうなら大変、と急いで近づく。
「お前可愛いな、この城のメイドの中では一番だ」「なあ、これから私の部屋に来ないか」「悪いようにはしないぞ、むしろ楽しくて気持ちいいことを・・・」
カーラ片手を壁に押し付けもう片方の手の指でメイドの頬を撫でながら口説いている。いわゆる「壁ドン」というやつだ。メイドは驚いているのか怯えているのか少し小刻みに震えているのがわかる。
(・・この人は~~! )「ちょっと! 何やってんですか!?」
メイド、「申しわけございません、姫様」頭を下げる。
「あー、いいのいいの、それより変な事されなかった? 」
「はい、大丈夫でした」
カーラ少し膨れつつ、
「邪魔すんなよー、別にいいじゃん」
レイミ、それを無視しつつカーラの腕を取り先ほどの部屋にずいずいと引っ張っていく。
「カーラさん、お話がありますから」
「何だよ、改まって」
先ほどの部屋の中、カーラはベッドの上に座りレイミは椅子に座り向かい合っている。
「ねえ、カーラさん、もう賞金稼ぎに追われる生活嫌になっているでしょう? さっきの奴らもうざくて堪らなかったようだったし」
「それで、お父様、ホークウィンド・キルミスター公に頼んで賞金首手配を取り消してもらうことにしたから・・」
一瞬驚くカーラ。
「何のつもりだ? いやあの王にそのような権力あるのか? 私の手配はこの王国だけではないんだぞ」
レイミカーラの顔を真っすぐ見つめつつさらに続ける。
「だから、私の・・このキルミスター城で一緒に居て欲しいの! そうすればもうあなたは奴らに怯えて逃げることはないのよ」
カーラ下を向き、くくくと笑いを漏らす。
「何を勘違いしているのだ? 私が奴ら賞金稼ぎ共に怯え、逃げ回っていたとでも? むしろ奴らとの戦いは単なる暇つぶしでしかないわ」
「『この城に居てくれ』というのは何だ、アレか、私を用心棒にでもしたいのか? それとも他国との戦争の兵隊にしたいのか?」「権力者が善意で何かするはずはないしな、お前の親父に限ったことじゃないが」
レイミ、カーラの手を取り、ぎゅっと握る。その手は暖かかった。カーラの中に何か懐かしい温もりを感じさせるものがあった。
「私は・・そんなこと関係なしにあなたのことが気に入ったから・・一緒に居たいと思ったら・・」
カーラ手に力を籠め握り返す。
「ふふっ、それは愛の告白と受け取っていいのだな? 」
ええっ!?なぜそうなる?
カーラ、レイミの手を引き自分の座っていたベッドに押し倒す。
「じょ、冗談はやめて・・」
「こんな夜更けに私の部屋に来たということは、だ、そっちを期待していたということなんだろう? 」
舌なめずりしつつレイミに顔を近づける。
カーラのしなやかな指がレイミのうなじを撫でる。もう一方の手の指が服の下に入るのも感じた。その指は胸をまさぐるのだった。そして・・。
「い・・いや」
そして吐息が耳に掛かり、唇が触れる。「私もお前が気に入っている」軽く咬まれ舌が這うのが分かる。
レイミは自らの意志とは裏腹に下半身が熱くなるのを感じるのであった。
(こ、これ以上されたら・・私・・・)
「今回はこの辺にしておくか・・」
(え!?・・終わり? )
「ま、しばらくここに居てやってもいいかな」カーラ、レイミの頬に軽くキスをすると起き上がる。
(お楽しみはまだこれからだ、じっくりかけて私のモノとしてやる)
レイミ、ベッドに横たえたまま、心の中でガッツポーズを取るのであった。が、やはり一抹の不安は覚えるのであった。