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運命の出会い—白銀の女帝と若き戦姫 4

 またも何やら遠くの方より音がする。それも複数の馬の轡の音の様だ。さてはさっきの野郎が仲間引き連れて戻って来たのか?

「ちっ、また賞金稼ぎ(やつら)か? 」

 その騎馬の集団が二人の所に近づいてくる。レイミ、何やら確信したようで、

「違う、あれはきっと・・」

 馬上の人物が叫んだ。

「姫様、よくぞご無事で! 」

 彼らはキルミスター城よりのレイミの捜索隊であった。数人の騎兵たち、わらわらと近寄って来る。その中での初老の兵が前に出でる。彼が隊長であろう。

「おお、姫様、心配いたしましたぞ、しかし無事でいてくれて何より」

「父上・キルミスター公もお喜びになるでしょう」

 レイミ、疲労を感じているのだろうがそれをおくびにも出さず、返答する。

「皆さん、お迎え大義です。しかし・・私は部下の兵たちを死なせてしまった・・」

「私の未熟さゆえに・・」

 隊長はじめ兵たち、何と言葉掛けたらよいか戸惑っているようである。

「ん?」

 ようやくカーラの存在に気が付いたようだ。

「姫様、そちらの者は?」

「彼女が私を助けてくれたのです。命の恩人です。だからくれぐれも粗相のないように」

 兵たちは一斉にカーラを注視する。カーラ何となくバツが悪そうな顔をしているが・・。

「はて? そういえばこの者、どこかで見たような・・」

 兵の一人が訝し気に呟く。

 そして何やら冊子のようなものをパラパラと捲り、一つのページに視線を釘付けた。そしてカーラと見比べ、

「こいつだ! 間違いない!"地獄の娼婦""魔王の落とし子""悪徳の化身"カーラ・エンジェルウィッチだ!!」

「な、何だと!?」「本当か、それ!?」ざわめき出す一行であった。

「見ろ! この賞金首手配書とそっくりだ! 」先ほどの冊子のページを皆に見せる。

「おお、これは紛れもなく・・」

 カーラ、半ば呆れているようで、

「ひでぇ通り名というか称号というか枕詞というか・・付けられたものだな・・」

「うぬぬ、まさか貴様が、兵士たちを・・!?」

「姫様から離れろ、下郎! 」「姫様までたぶらかそうとの魂胆だな? 」

 兵たち、腰に下げた剣の柄に手を掛ける。今にも抜かんとばかりに。レイミ、堪りかねカーラの前に出でて庇う。

「やめて、お願いだから! この人が、カーラさんが、助けてくれたって言ったじゃないの!!」

「何で分かってくれないの!?」「うっううっ・・ひっく・・」

 危機が去り安心し、感極まったのか、カーラの胸に顔を埋め泣きじゃくるレイミであった。

 そんなレイミを撫でてやるカーラ・・、そして、

「お前ら、私が信用できないというのなら別にかまわん、だがまだ年端もゆかぬ小娘に重い責任負わせ、死にそうな目に遭わせておきながら随分な態度よの? 」

 カーラの剣幕とレイミの泣きにたじろぎ意気消沈する男たち。

(どうした? 私? ・・柄にもない事言ったりして・・)

 彼女の中にも何かしらの変化があったりしたのであろうか・・?


 その城はいかにも小国の城といった趣であった。規模的には中程度といたところか。石積み、漆喰堅めの壁、スレート瓦葺きの尖塔を備えた屋根、水を湛えた堀もある。堅牢さもそれなりに備えているようだ。

 城内の広間の王座に掛けている、その人こそレイミの父にして、モルタヘイド王国・国王ホークウィンド・キルミスター公その人である。年齢は50くらいであろうか? 短めに刈った髪に口髭顎鬚をたくわえている。茶褐色の毛の中に若干、白い物も混じってはいるのだが、その齢を感じさせない体躯は非常に引き締まった肉体で構成されているであろうことが、服の上からでも見て取れる。険しい目つき、通った鼻筋、一文字に結んだ口からは意志の強さと、油断の無さが伺えるのであった。

若い頃はさぞもてたことであろう。

 両側に護衛の兵士と側近とおぼしき人物、何と先ほどの捜索隊の隊長であった初老の人物だ、を従えている。

 前に立つレイミに向かい父王が口を開く。

「よくぞ無事でいてくれた、レイミよ、父は心配しておったぞ」

レイミ跪き、頭を深々と下げ、「申し訳ありません、お父様。全て私の未熟さゆえの能力不足によるものです」

「私のせいで掛け替えのない兵士たちの命を失うこととなってしまいました」

 父王、腕を組みつつ、レイミに諭す。

「過ぎてしまったことを悔いていても始まらぬ。兵たちの遺族には国が補償しよう、お前はより一層、精進に励むことだ」「それが死した兵への供養となろう」

 カーラといえば、その斜め後ろあたりに暇そうに突っ立っている。

 王はカーラの方に向きより、

「そなたが我が娘を助けてくれたそうだな。改めて礼を言わせてもらう」

 カーラ、いかにもかったるそうに両腕伸ばしながら、

「別に大した事したわけじゃないから・・。たまたま通りかかっただけのことだし」

「それより私は疲れてるんだけど。下がっていいだろ? 」

 側近の彼、頭に血が上ったと見えて、「何と無礼な! キルミスター公の眼前であらせられるぞ! 」

「苦しゅうない、大目に見てやれ」

 そしてカーラに「カーラ殿、我が城でゆっくり休んでもらってかまわん、部屋を用意させるし風呂や食事も申し付けてくれてよい」

「ありがたきお言葉。では遠慮なく」王に一礼して下がって行く。

 父王、カーラが退場したのを見送りつつ、レイミに

「レイミよ、疲れている所悪いが私の部屋に来てくれ、話がある」

「はいお父様・・」大体何の話かは想像つくレイミであった。


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