運命の出会い—白銀の女帝と若き戦姫 0
※プロローグ
ここは孤児院。
ある晴れた日の昼下がり
部屋に集まりし子供らが、話をせがむ。
「ねえ先生、何かお話聞かせてよ」
先生と呼ばれた妙齢の女性が答える。
「どんなお話がいいのかな?」
子供たちは口々に
「面白くてスカッとする話」
「かっこいいヒーローが悪いやつをやっつけるのがいいな」
「あたし、かわいいお姫様が出てくるのがいい」
子供らを見渡し、先生が言う。
「じゃあ先生が昔女の子だった頃のお話をしようか?」
「強く美しく気高いあの女の話を・・・」
※運命の出会い—―――白銀の女帝と若き戦姫
そこは鬱蒼たる森だった。
人間が入り込むことを拒むかのような森。
恐ろしき人外共の巣窟たる森。
今、一人の人間の男性が邪なる怪物の群れに追われている。
人間と同じように直立し、二本の脚で歩む者。
だが奴らは明らかに「ヒト」ではない者たちである。醜く歪んだ顔つき。濁った眼。耳近くまで裂けた口から覗く乱杭歯。一応衣服と呼べる物を身に纏ってはいるのと、何やら武器らしき物を手にしているのはそれなりの知能を有しているという事なのか。
まさしく、人外。まさに、人モドキ。
彼は旅の商人なのであろうか。
既に大切であったろう商売の品を失い、残されたその命さえも風前の灯火と化している。
「ぐをっふごっ」
何かの言葉とも鳴き声ともつかぬ声をたて人外の怪物共が迫る。
(最早これまでか・・)
瞼に故郷に残した妻子の姿が現れたに違いない。
彼が諦めかけたその時、
「そこまでよ、怪物ども! 」
森の中に響く高らかな声。
それもあまりに場違いとも言える年若い少女の声。
「ぐをっ?!」
驚き、声のした方に目を向ける怪物と旅の商人。
そこには数人の武装した集団が居た。目を引くのはその先頭に立つ人物。必要最小限の防具に身を包み、片手剣を携えた少女である。どちらかといえば華奢といえる体格でウェーブが軽くかかったセミロングの髪を後ろにまとめている。
幼さの残る顔つきではあるが、その猫科の動物を思わせる目、少し太めの眉が凛とした意志と気の強さを感じさせるのであった。
「あ・・あなた方は一体? 」
答える少女。
「私はここ、モルダヘイド王国の王女、レイミ・キルミスター」
「領地内の定期パトロール中というわけよ」
「私の領地内で好き放題な真似とはいい度胸ね、この化け物共! 」
きびきびと部下の兵隊たちに指示を出す少女、レイミ。
「イーチとツバイはこの人を連れて逃げて! 」
「サンとズーとハイブは私に続いて! 」
奴らに切りかかる四人。
「ドラァ」「せいっ」「うりゃあ」「ハイヨー」
彼らの剣技はすばらしいものであった。
たちまちのうちに数匹の怪物を切り捨てる一行。残りの者どもも走り出す。たまらず逃走する気であろうか?
「逃がすか! 」
「あっ姫様、深追いは禁物ですっ! 」
かまわず追撃する少女・レイミ。仕方なく他の三人も彼女を追う。
やがて森の中の少し開けた場所に出た。
「・・・? 」
何となく訝しがるレイミだが・・。すると・・
「グッグヲヲヲ~~~ン」
不気味かつ異様な咆哮が響き渡る。
「もしや奴ら、増援を呼ぶつもりか? 」
不吉な予感に震えるレイミ。
兵士の一人が言う。
「もしや、囲まれたか・・? 」
騒めく音と共に前方の藪の中より現れたのは先ほどのザコ共より二回り余りも巨大な体躯の怪物だ。身に着けている物も今までの奴らとは違い明らかに上等な物だ。手には棘を生やしまくったこれまた巨大な棍棒を携えている。もしやこいつが怪物共のボスなのか?
何度か奴らとやり合った事があれどこのような個体は今まで見たこと無い、レイミ内心焦りつつも、
「ひっ怯むな、みんな、行くよ! 」
「ブホッブホホホッ・・」
実に不快な声を立てる巨大怪物、もしや笑っているのか?
「? ・・な、なにがおかしいのよ・・? 」
精いっぱい虚勢張るレイミであるが。
「小娘ぇ、てめえの周りよく見て見ろ、ボヘッボヘッ」
「? ・・・・うっ!?」
言われた通りに周りを見回した彼女の目に入ったのは・・、
仲間の兵士たちの無残な姿であった。
一人は槍のようなもので背中から胴を貫通され、一人は首を左右に貫かれ、後の一人は手足腹部を
ナマス切りにされ、大量の血の海に沈んでいたのだった。
「ひっ、ひいいい・・」
思わず悲鳴を漏らすレイミ。
しかし、彼女は気丈であった。剣を取り直し、眼前の巨大怪物に颯爽と切りかかる。
「てやぁぁっ! 」
「ぶんぬぅ! 」
巨大怪物が持つ棘棍棒がガシッという音と共にあっさりとレイミの剣を弾き飛ばす。
「えっ?!」
万事休す。最早、レイミに成す術はなかった。覚悟を決めるしかないのか? 思わず涙があふれて来る。
「ううっ・・このまま殺されるの・・? 私・・ああ、お父様・・お城のみんな・・友達のみんな・・」
にじり寄る巨大なボス怪物。奴の不快極まりない息遣いが体に感じられる。さらにおぞましいことに奴の股間がいきり立っているのが見て取れる。
「ぶへへ、少し若いがいい女だ、たっぷりいたぶりまくってから食ろうてやるわ、ぐへへ・・」
「へっへっへ~ボス俺たちにも残しといてくだせぇ」「オスの人間は不味いでっせーメスが食いてえっす」
「うっうううっ・・怖くなんかあるものか、最後までキルミスターの姫らしく誇りを失わずに・・」
しかし、耐えられずへたり込んでしまうレイミ。すでにその可愛らしかった顔は涙と鼻水でくしゃくしゃになってしまっている。
そして思わず・・・・。(じわっ)
ざっざっざっ・・・
何かが近づいてくるような音がする?気のせいだろうか・・?
「ん? 何だ? 」
どうやら怪物共も気が付いたと見えてざわめき出した。
一人の人影が近付いて来るのが見える。気のせいではなかった。それにしても、なぜこんな所に?
その者はローブに厚めのマントを身に纏い、頭にはフードを深く被っているこれでは性別も年齢も分からない。彼? もしくは彼女? はかまわずずかずかとレイミとボス怪物の間に割って入って来る。
「グボボ・・あー何だてめーは? 」
謎の人物を取り囲むザコ共。
「野郎、邪魔する気か? 」「あーオラッ?!」
レイミは何かを言おうとするが声が出ない。
「あ・あうっ・・・・! 」
「・・・・・」
謎の人物、何事かを呟いたように感じたが・・。
と思ったらローブの下から腕を伸ばしてきた。何をするつもりなのだろうか? 次の瞬間・・・!
レイミには何が起こったのか全くわからなかった。ただ、少し風を感じたような気はした。
「えっええっ!?」
目の前にはにわかに信じられない光景が広がっていた。ザコの怪物共が一匹残らず絶命しているのであった。ある者は心臓を抉られ、ある者は喉元を掻っ切られたようになり、またある者は頭部を完全に潰されたりしている。
先ほどの兵士たちの現場よりも凄惨といえる光景であった。
「・・・!?(何? 何なの? 一体何が起こったの? )」
何が起こったのか理解できていないのは巨大ボス怪物も同様であった。
「ゲッ? ゲババ・・?!ダングロベ・・? 」
意味不明な言葉を発している。
その時、謎の人物はようやくフードを外し始めた。そこから現れたのは果たして・・。
透き通るような肌と同じく透き通るような銀色に輝くやや無造作に長めに伸ばした髪。真紅の瞳に妙に艶めかしい作りの赤みを帯びた唇、通った鼻筋の整った顔立ち年齢は一体何歳くらいなのだろうか? 無邪気そうな少女にも見えるし妖艶な娼婦にも見える・・? 実にミステリアス・・。
思わず息を飲み、今の立場も忘れ見とれるレイミであった。
「・・・何て綺麗な女なんだろう・・・」
明らかに動揺しているが、精いっぱいそれを悟られないようにしているのが見え見えなボス怪物である。
「グババ~~~貴様~よくも俺の手下を~~! 」
手にしたあまりにもごっつい棘棍棒を振りかざすのであった。
「死ねぇぇぇぇぇぇっ! 」
思い切り棍棒を振り下ろしてくる。
凄まじい轟音と共に棍棒の一撃が地面にクレーターを作る。恐るべきパワーだ。
だが謎の彼女はあっさりよけていた。
「そんなスローな動きで私を殺る気なのか、お前? 」
にやり、と不敵に笑う彼女、その口元には牙のようなものが見えたが・・。
だがボス、まだ余裕を見せつける。
「フン、貴様武器も持っていないようだがどうするつもりだ? 」
謎彼女、体に纏っていたマントとローブも脱ぎ捨てる。露わになった彼女の体つき、推定90はあろうかというバスト、程よく括れた腰つき、引き締まった尻部、すらりと伸びた脚部、実に見事としか言いようがない。
身に着けているものは腕を露出し前と背中を覆っただけの短めのへその見えるような服、下半身は
太ももまでみえるこれまた短いパンツに膝までの長さのブーツを履いている。そんな服装がまた彼女のスタイルを引き立てているのであった。
やはり「おお!」と見とれるレイミ、思わずじぶんの体と比べてしまうのであった。「悔しい・・」
「あー?!見せつけてるつもりなんか貴様? そんなにヤって欲しいのか? 」
「げへへっ、ならば望み通りまずは手前の方から犯して喰らってやるわ」
「グアアアーーッ」叫び声をあげ突進してくるボス怪物。
少し我に返ってきた様子のレイミ。
「(あの人、本当に武器も何も持っていないみたいだけどどうするんだろう? それとも魔法使いか何かなのだろうか? )」
謎彼女片手を斜め上に上げる。次の刹那、彼女の腕の手首のあたりから何かが伸びてきたのだった。剣の刃のようにも見えるがこれは?
「うぜえ、死ね! 」
ボスの突進をハイジャンプでかわした。そしてその腕の剣のようなものを奴の頭部に突き立てた。そしてそのまま着地する。
縦に真っ二つになり地面に転がり果て醜い屍と化したボスオーク。
「ふん、つまらん」何もなかったように腕の剣は消える。
「うっ、うわわ・・すごいッ! 」
一瞬呆けていたが気を取り直し、立ち上がったレイミ。謎彼女の元に駆け寄り、ぺこりと頭を下げる。
「あ、ありがとうございます。助けていただいて」
「あの私、レイミ・キルミスターと申します。その・・この辺の領主の娘でして・・」
「是非お礼をさせていただきたいと・・」
彼女、レイミを一瞥する。そして一言。
「ぷふっん、小便垂れ」