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少女が少年と出会う少し前
「棗さん、ちょっといいかしら」
細くて、それでいてどこか凛としていて、引き付けられてしまうようなその声に、はいぃとか変な声で答えてしまったのは、入学式のすぐ後のことだった。
「新入生の代表挨拶、とっても素敵だったわぁ」
ありがとうございます、と返すと、長谷川先生と名乗ったその人は満足気にうなずいた。
「そんな、あなたにぃ~」
「とぉぉぉぉってもおすすめな部活があります」
にっこりと笑いながら、独特のペースで話す。
「その部活に入るとね」
「雨澤葵っていう面白い子に会えるかも」