初陣
「・・先手は譲ろう。しっかり力を出し切ってくれ。」
さっきも言ってたけど10枚落ちでさらに先手まで譲るってすごいよなぁ・・
じゃあまずは攻撃力の高い飛車の道を開けようと2六に歩を置く。
香川さんは全く迷う素振りを見せず『2四』に歩を置いた。
「・・・・え?」
置き間違いか・・?定跡ではありえない一手だけど・・接待プレイ?・・いや、それだったらここに転がっている同級生の説明がつかない・・
とりあえず歩で突いとくか・・?ここで取られても飛車で盤面を荒せるからそれが正しいよね?
歩を2五に置く。
当然香川先輩は同歩。と歩を取ってきた。
ここは当初の予定通りこっちも飛車を動かして歩を取りに・・
刹那―――鈍い音がして、自分の飛車と相手の歩とが弾け飛んだ。
「・・・・・・・・・え?」
弾け飛んだ駒は放物線を描き、自分の持ち駒の所に歩が相手の持ち駒のところに飛車が追加されていた。
「・・一つ間違いを訂正しておこう」
ゆっくりと香川先輩が語りだす。その表情は少し怒っているように見えた。
「俺は一応ここの将棋部でレギュラーに選ばれて先鋒として試合に出ている。
あまり舐めてはかからぬようだな。」