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第四話:森の中で

二人は、ゼットに乗って牧場に向かっていた。

ゼットを動かしているのは、カイラでユメラはその後ろにいた。


『カイラ君…馬あまり乗ったことないのに、あなたはどういう神経なの…!?』



数分前のこと…。カイラ家の前で、


『馬に乗ったことあるの?』


『それは‥一回ぐらいならあるっちゃあるけど』


『一回しか乗ったことない人は駄目。あたしが前に乗るから』


といい、馬に乗ろうとするユメラ。それを止めるカイラ。


『ちょ、待て』


『?』


『…男が、女の後ろに乗れるわけないだろ!だから、俺が前に乗るよ!あんたは、後ろに乗んな』


『えぇ、ちょっと待ってよ!一回しか乗ったことないんでしょ!?』


『…俺を舐めるな』


と、強きな言葉をいい、乗ろうとするカイラ。


『………』


言葉を返す勇気がなくなってしまったユメラは、だまって後ろに乗ることにした。


『あんた、捕まってろよ』


カイラは、馬を動かした。ユメラは、ただ、カイラに従うことしか出来なくなっていた。


今、私達は、一直線の道を走っていた。

視界には、「ユメラード牧場」が見えてきた。ところが、カイラはゼットを止めようとはせず、そのまま牧場を過ぎてしまった。


「ちょっと!どうして!?」


ユメラは叫ぶが、カイラは無言のまま馬を動かした。心が落ち着かないまま…着いた先は、「森」だった。カイラは、ゼットを止めて、無言のまま降りた。ユメラもあとについて降りた。今私達がいる所は、湖の側。


「ねえ」


ユメラが、話かけると、


「ごめんな、あんた。牧場に行かないでここ来ちまって」


「え」


「俺、引っ越してからここ気にってるんだ。こんなに綺麗な湖なんて、最高だよな!」


湖に向かってしゃべるカイラ。その声は楽しそうだった。


「あたしも好きだよここ。あたしも気にってる」


ユメラは、カイラの傍に言って笑みを浮かべた。


「毎回ね、ゼットと一緒に来てるの。ここの水、すごくおいしんだよ」


ユメラは、しゃがんで水を上手く手でとって、飲んでみせた。


ほら、とユメラはいい、カイラも水をとって、飲んだ。


「どう?おいしいでしょ!?」


「これ、いけるな!」


笑顔で応えるカイラの顔は太陽の日差しに当てられていっそう眩しくなった。

うん!、といい、カイラとユメラは、数分間、水の味を楽しんだ。ゼットにもあげた。

水の味を楽しんだ後、二人は、森の中を歩いた。鳥の鳴き声、色々な声が聞こえる。二人は、森の空気を楽しんだ。自然の空気はおいしい。こんなに気持ちいい所なんてない。


「カイラ君は…」


ユメラは言った。

ん、なに?、と聞き返すカイラ。


「どうして…この島に引っ越してきたの?」


それを聞いたカイラは、少し考えてから言った。


「…父さんと母さんが、島に引っ越したいっていうからここに来た」


「えぇ!!それだけなの理由で!?」


「そうだけど…あんた、なんか期待してる?」


「期待じゃないけど…あたし、住民が増えて嬉しいんだ」


「あんた、変わってるな…」


「そ、そうかな?」


笑みを溢すユメラ。


「じゃあ、聞くけどさ‥どうしてあんたは、牧場主になったんだ?」


「それは…」


ユメラは、足を止めた。


「どうした?」


カイラは聞いた。


「来て!カイラ君!」


ユメラは、ゼットに乗って走り出した。


「って、おい!?」


カイラも走った。


『なんなんだよ…‥てか、馬はずるいだろ!!』


そんな事を思いながら、カイラも急いで追いかけて行った。




「……」


私達は、湖の所に戻ってきたのだ。相変わらず、湖は綺麗に輝いていた。ユメラは、ゼットに水をあげていた。水をあげた後、カイラの傍にいった。

カイラは、木の下の日陰に座って休んでいた。ユメラは馬に乗って、カイラは、走りだから疲れるのは当然の事だ。


「ごめんね。ほら」


と、右手を差し出すユメラ。


「いいよ。自分で立てるし」


カイラはそう言って、立ち上がった。


「…なんで急に走りだすんだよ?しかも、馬に乗って‥反則だろ」


「ごめんね…湖の側のほうが、話やすいかなと‥ここじゃ駄目かな?」


「…いいよ全然」


ユメラは、微笑んだ。


「広いよなぁーここの湖!」


カイラは湖に向かって背中を伸ばしながら、言った。

ユメラは、湖の傍の草むらの上に座って笑顔で答えた。


「うん」


疲れがとれてきたところで、カイラは、その場に座っているユメラに問かけた。


「で、さっきの話題に戻すけど」


カイラの言葉に、ユメラは湖の遠くの方を見ながら話始めた。


「…それは、小さい頃からの夢だったの。…十二歳の時のことなんだけどね。この頃、テレビや本で、動物の事を色々知って、知っていくうちに、“牧場主になりたい!”と思ったんだよね。それで、今、十六なんだけど…」


「え?十六?俺と同じだな、あんた」


「…!…そうだったの!?」



驚きなユメラに対して冷ややかな返事をした。


「…なに?俺がもっと上だと思ったの…?」


「え、いや、年下かなと…へへ」


「…」


カイラは無言になった。


『…ってあれ?もしかして怒らせたのかな?…そうだったら…』


ユメラは、なんとか謝ろうと声を出そうとしたら、カイラの言葉で塞がれてしまった。


「…あんた」


…え?…カイラはユメラの顔を見た。その視線にユメラは、ドキッ、としてしまった。慌てて目を逸らした。その行為に眉をひそめるカイラ。


『?』


「えっと、あたしが、ここの島にやってきた時はね…十四歳の時なんだ」


「…ええ!まじかあ!?そんなに若くから…!?」


「うん勿論、親は反対だったよ」


「でもどうやって、親を説得させたんだ?」


「…あたしが、“牧場主になりたい”って言って…親は、認めてくれたの。たったの一回の事でね。…それは、物凄〜く嬉しかったよ。親と離れるのは辛いけど、自分の夢の為に…あたしはここにやって来たの」


ユメラは、カイラの方に顔を向けた。


「凄いなぁあんた…俺、ガキの頃から、将来の夢とかそんなの普通に生きていればいいなぁと思ってた。けど、生活していくうちにつれて、やっと自分がやりたいものを見つける事が出来た…」


「…それは…?」


「…“音楽”…」


「ああ!そうえば!カイラ君、ギター練習してたもんね!」



「…まだまだだよ。もし、俺の曲が出来たら…あんたにも聞かせるよ」


カイラは湖の遠くのほうを見ながら言った。

ユメラは、湖の方を向き直って…


「うん…ありがとう」


と言った。


二人の会話は、まるで、 森のなかに静かにただずむ姿であった。

ユメラの声は、弱々しい風に流されていった…。しばらくして二人は、「ユメラード牧場」に向かった。カイラは、動物と触れ合い、帰る時間になり、そのまま自宅へと戻っていった。


ユメラは、自分の家に戻って、丸い小さな茶色い椅子に腰をかけた。色々と考えて…ようやく気付いた。

…少年に会う事が楽しみに変わっていた。そんな自分を思うと…わくわくしてたまらなくなっていた。



カイラは、自宅に戻ってきた。


「ただいま〜」


「おかえり、カエラ!」


台所には、母さんがいた。そしてリビングにソファに座って新聞を読んでいる父さん。晩ご飯を作っていた。今日の晩ご飯は、シチューらしい。シチューのルーがあったため、一目で分かった。母さんが作る料理は、すごくおいしいのだ。


「ねぇ、ユメラさんとはどうなってるの?」


お母さんは、直球に聞いてきた。

カイラは、椅子に座って答えた。


「別にどうなってもいないよ」


「そう…」


と、声の元気が弱くなったお母さんを見て言った。


「…なんかあったの?」


「なんかあったんじゃなくて、カイラ、ユメラさんからなんか聞いてる?」


「…え、色々と聞かせてもらったよ、今日」


「え、もしかして、両親が都会に居ることとか…?」


カイラは眉をひそめ、


「…なんで知ってんの?」


「…今日ね、島の人達に聞いてね」


母さんの表情が元気が無い。それに対してカイラは、溜め息を吐く。椅子から立ち上がって母さんの顔を見ずに言った。


「…大丈夫だから。母さん…俺がいる」


「え…」


母さんは、カイラの顔を見た。カイラの言葉に母さんは驚いて、言葉が出せなかった。

そしてカイラは、真っ直ぐ、母さんの顔を見つめて言った。


「…心配しなくていいよ」


その言葉に、言葉が詰まり、泣きそうになった。でも必死に抑える母さん。


その姿を見つめるカイラの視線。母さんは、目から涙を出さないように必死に堪えた。


「……カイラ、頑張って。あたしたち応援してるから…ごめんね…あたし大げさだわ」


涙が出そうになった母さんは、堪えきれず顔を下に向いてしまった。


「…ん!」


カイラは、満面の笑顔で応えた。


一人ソファで新聞を読んでいた父さんも、感動の言葉を聞き、新聞を持っている手の力がはいり、新聞はしわくちゃ状態だった。その姿は、まるで、けして強い父さんでも、珍しい光景だった。



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