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7話

 駆け足で自宅に戻ると慶太は冷蔵庫の中からペットボトルを取り出した。冷えた炭酸飲料を一気に喉に流し込むと、先ほどの一連の流れを頭の中に思い描き落ち着いて考えてみた。

 さっきのあのメールは何だ?

 そもそもどうやって俺のメアドを知った?いや…どこかのサイトに登録した時にその業者から漏れてしまったのではないか?そうだ…今は情報化社会だって言ってるしな…そう考えれば…俺の携帯にあのメールを送る事は可能だよ…それに…メルアドが書かれていないというのも、あの不思議なカウントダウン方式の画面も技術的に無理じゃないよな…

 一つ一つ非現実的ではないと確認しなおす。そして導き出される新たな答えが出る。

まさか…あの噂を利用した悪質業者かもしれないよな…騒がれていればそれを金儲けに利用しようとする奴だって出てきてもおかしくない…ワンクリック数万円とかそういうやつか?それとも海外サイトに繋がって多額の請求とか?いや…でも…あれだけじゃ分かんないよなぁ…

 詐欺かもしれないということを疑い始めた。そして迂闊なことをしてしまったと後悔していた。もしもこれ以上借金を重ねる事や危険なことがあっては娘に合わせる顔がない。

 一人悶々としながら沈んだ部屋を明るくするためにテレビをつけた。それから夕食を取っていないことを思い出し、買い置きのカップラーメンを作る為にお湯を沸かした。

 お湯を沸かしながら換気扇のところで煙草に火をつける。立ち上がる煙を眺めながら今の自分は生きる意味を持っているのだろうかと考えてしまった。

愚かな行為を重ねてきた上にまた愚かな行為を繰り返そうとしている…

 全てがマイナス思考になっているこの状況、何かしていないとつい考え込んでしまうのが日常的になってきている。我に返ると、お湯が沸騰していて、煙草の灰も床に落ちていた。

「はぁ…ったく…やばいなぁ…俺…」

 ガスを止め、落ちた灰をふき取るとカップラーメンにお湯を注ぐ。スーパーで安売りのカップラーメン、味も三種類あるが食べ飽きていた。

 今日は醤油味だが胃袋を満たしてくれるのなら正直何でも良かった。時計を見るともう九時を回っていた。やっているテレビは普段全く見ない報道特集であったが、たまたまつけっぱなしにしていた。するとここ数日間あちこちで報道されている事件を今日もまたやっていた。お馴染みの評論家がそれぞれの意見を討論していた。

「衝動的な犯行に巻き込まれた人もいるかもしれませんね…それだと犯人の特定が難しくなってきます…」

「顔見知りの犯行の可能性はないのですか?」

 キャスターが犯罪心理学の先生に質問をする。

「失踪者に近い人間による犯行の可能性ならもう少し情報があってもいいはずです。あまりにも忽然と姿を消しすぎています。しかしです…これが自分の意思かどうかは推測の域を出ていません…」

「この同時期に捜索願が出ている数名の唯一の共通点は…やはり…あの巷で噂の神のゲームと呼ばれるものに関係することなのでしょうか?」

 その聞き覚えのある言葉でテレビに集中した。

「あの…何でも願いを叶えてくれるというものでしたよね…」

「はい…今回の同時期失踪者四人の内二人は友人や家族にそのようなことを口にした後に姿を消したようです」

「全員がそうではないのでしょう?それに…そのような都市伝説的な曖昧なものを共通点と見ていいのか判断しかねますねぇ…マスコミもあのような幼稚なサイトを過剰に取り上げすぎなんじゃないでしょうか?」

「私もそのサイトについては同意見ですね。それに失踪者の年齢も住んでいる場所もばらばらですからたまたま失踪した時期が同じなんじゃないですかねぇ。彼らが失踪者の中でも特別とは言いがたいですよ」

「しかしこのサイトも全く無視できないと思いますが…」

「いや…確かにそれはそうです。だから警察もそれを踏まえてあらゆる想定をして動いているとは思います」

 一通り談義が終えられると、キャスターが全てをまとめるように口を開いた。

「このように家族の方たちは早期発見を願っております。もしも失踪された方本人がこのテレビを見ていましたらこちらまで連絡を下さい」

 連絡先のテロップが白字で流れる。

「はい…それでは、もう一度失踪された方の確認をしたいと思います…」

 それから失踪したとされる四人の男女の特徴が写真と一緒に映し出されていた。年齢も住まいも全く別々で警察に届出された日もばらばらであった。

 日本で毎年失踪者といわれる人間は簡易なものを含めて十万人近く出ている。その理由は様々であり報道されるに値しないものばかりなのだが、今回は違った。

 都市伝説にもなっているあの『神のゲーム』が絡んでしまったからである。様々な情報誌がこのサイトを取り上げ、謎だらけのこのサイトの正体をどうにか明かそうとする社会現象が起きていたから無視できないのだ。テレビ局はこの話題を取り上げるだけで高視聴率を得る事ができると考えているので当然の結果であった。

 一方慶太はニュースなど全く見ないので、ここまであの『神のゲーム』が社会に浸透しているとは思わなかった。出来上がったカップラーメンのことなどすっかり忘れて画面に釘付けになっていた。



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