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14話

「あの…カードの能力以外のもので人を殺しても構わないんですか?」

 敬語ではあるもののいきなり物騒な質問をした男がいた。しかしこの男はそんな質問が似合うような雰囲気を持ち合わせていた。三十代後半でどっしりとした落ち着きを持っていてどこか背後に人の死を背負っているような感じだった。

「ええ…武器となるようなものなら何でも利用していいです。ただ何度も言いますが、番人だけはそういった類で殺すのは不可能です」

「そうですか…」

 それを聞くとその質問をした男はにやりと笑っていた。その寒気を誘うような不適な笑みが慶太の脳裏にいつまでも残っていた。

「他に質問は?」

「過去にこのゲームをやって生き残った人間はいるんですか?そもそも…これは何回目なんです?」

「後者の質問から答えましょうか…回数は五回目となります。前回はつい一ヶ月前ですが、その前は、三年前…初回は…十年以上前になりますね」

「一ヶ月前?まさか…今テレビで話している連続失踪者のあれは…このゲームの末路だってことか?」

「すいません…私はテレビなど一切見ないので…っていうかこの顔では何も見えませんよね。ははははは…」

 ジョークだとは思うのだが誰も笑えなかった。しかしそんな周囲の静けさに萎えることなく包帯男は話を続けた。

「まぁ…世間一般の情報は知りません。しかし一ヶ月前に行われたことは事実です。そしてその中での生き残りはございませんでした」

「なら過去には?いるのか?生き残りは…」

「残念ながら…一人も…」

「それなら願いが叶うって話を体験した人間がいないじゃないか。勝者になってもその保証がない…」

「保証はありません。しかし叶うということだけは真実です。何度も申しますが我が主は神なのです。このゲームが始まれば嫌でも分かります。今までの世界観など吹っ飛ぶはずです。だから…そんな小さな固定観念など取っ払ってください」

「勝者は願いを叶えてどうなるんです?その代価とかはないんですか?」

「大丈夫です。このゲームそのものが代価なのですから。それに、もちろんお送りして差し上げますので、帰り道の心配はしないで下さい」

 これ以上問い詰めても何も出そうになかったので、誰もが口を噤み沈黙が走った。すると包帯男は、封筒を載せたお盆を持ってきた。

「それでは…これ以上の質問もないようなので、これをそれぞれお取りになり出口から全員が出たら開始です。よろしいですね?」

 それぞれがいろいろな想いを胸に抱き、ごくりと唾を飲み込む者もいた。

 慶太も今の段階で作戦といった知的なものは何一つ浮かぶはずもなく、ただ漠然とそこにいるような感じであった。だから竜也がそっと耳打ちした。

「おい…慶太…ここは協力しあうべきだ。個々で動くよりも団体の方がきっと上手くいく。俺の出口の右隣の出口を選べ…そして出口を出たらお前は左方向に向かって歩くんだ。俺は右方向に向かう…そうすればすぐに出会える」

「竜也…」

「いいか…単独での行動じゃ行き残りは無理だ。俺たちは絶対に生き残る…ここで死ぬのは御免だ」

「そうだよな…」

 竜也の勇気を振り絞ったような訴えは慶太の心を動かした。その誘いを断るほど賢くもなかったから慶太は大人しく従った。

 それから封筒を受け取ると、二人は打ち合わせどおりに隣同士の出口に入っていった。


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