12話
それには慶太も声を荒げて話す。
「おい!そんな条件の中では、六時間も生き抜くことなど不可能ではないのか?」
「いえいえ…そんなことはありません。番人も何も完全な鬼という訳ではないのです。弱点もいくつかありますので、ここは一つみなさんで知恵を絞って探し出してほしいです」
するとまたスクリーンの画像が切り替わった。そして画像には大きな文字が書かれていた。
『番人とあなたたちの関係がまるで同じ物があるよ。それは、このゲームの中であなたたちが奪われるであろう大事なもの。その関係が分かれば番人から逃れるかもね。もう一つだけ逃れる方法を教えるよ。無限の時が傾いて集まればそれだけで君らは無敵の存在となる』
まるで可愛らしいなぞなぞのような出題を見て、その場の全員がぽかんと呆けていた。しかし奪われるであろう大事なものという言葉には即座に反応する。
おそらく…自分の命ということなのか…
それだけで唾を飲み込んでいた。
「この意味が分かれば、あなたたちで六時間生き抜くことも十分可能となります。いいですか…これは単純なゲームではないのです、皆さんで知恵を振り絞り最善の策をとってこそ勝利者になりえる至高のゲームです。皆さんが考えることを放棄すれば、おそらく皆殺しという凄惨な結末が待っていることでしょう。ですから何事も考えることです」
「そりゃ…願いが何でも叶うなんて馬鹿げた話が現実になるというなら、命を賭けるのもおかしくはないし…単純なゲームじゃないことも分かる…」
「そうですか…ご理解が早い方もおられるようで嬉しいです。さて、まだ説明はありますが…この段階で質問を受け付けましょう。何なりと不明な点を聞いてみてください」
するとどんどん質問の声が上がった。
「そのカードっていうのは、他の者に教えられないようになっているんですか?カードの能力の中に他人のカードを知るものがあったから…」
「良い質問ですね。その通りです。このカードには能力の他にも抑止力がかかります。皆さんがこれから最初に手にしたカードの内容は、死なない限り決して話せないようになります。覗く事も不可能です。他者にはその内容が見えませんから。そしてそのカードの内容も同様に抑止力がかかります。ジョーカーの能力を知る者は決して他人に話すことはできません。だから誰が何のカードを持っているのかは絶対に分からないようになっているのです。どうです?面白いでしょう?そうすることで駆け引きができるというものです」
それを聞いて慶太もぞっとした。誰が何を持っているかが分からない状態では迂闊に他人に近づくことは難しいからである。
「死んだ人間のカードはどうなるんです?他者が使えるんですか?」
「カードの持ち主がその能力を使いきらないで死ぬと、カードは私の元に帰ってきます。かわいいペットのようですね。まぁ…このままでは勿体無いから私が使いましょうか…」
冗談めいた感じではははと話していたが誰も笑えなかった。
「それから補足です。ジョーカーですが、これは能力を使った時点で誰が持っていたのか、どのような内容だったのかを全員に知らせましょう」
「おい…それならジョーカーの内容を知る者はあまりうまみがないんじゃないのか?」
「いえいえ…ジョーカーの能力はすぐさまに使えるような代物ではないので先に知っているということはとても重要なことなんですよ。それに能力を使ったことによって他の人間に知られるとそれはそれで面白いこともあるんです…」
顔は見えずとも不適な笑みを浮かべているような感じであった。