11話
「さて…まずは大雑把に話しましょう」
スクリーンには絵の付いたカードが八枚映し出されていた。
「このゲームにはその名の通りに神の力が宿っています。そしてその中で行われることも必然です。さて…ここに映し出されたカードですが、これを使い皆さんが生き残りを賭けて六時間という時間を過ごしてもらいます」
「生き残り…」
それは冗談ではないと全員が思った。自らの命を賭けなければ願いなど当然叶うはずなどないと言われた気分でもあった。しかし誰として反論はしない。ここでそのようなことをしても無意味だともはや察したからである。
「まず…この八枚のカードにはそれぞれ効力があります。それをまず説明しましょう。そうですね…どれも面白いのですが、このカードを紹介しないとこのゲームの成立はなりたちません」
そう言ってスクリーンにある全員が見たことのある、あのトランプで無敵や絶望を与える意味のカードを指差した。
「これはジョーカーです。このカードがこのゲームの要になっています。八枚のカードの能力はここにいる全員に知ってもらいますが、ジョーカーのカードの内容だけは教えません。これを手にした人間にしか分かりません。そうすることでこのゲームの内容が一層濃いものになっていくからです。そして他のカードですが…ざっと説明しますと、相手を確実に殺す能力、相手から攻撃を確実に防ぐ能力、全てのカードを誰が何を持っているのかを知る能力、誰かを生き返らす能力、カードを相手から奪う能力、ジョーカーのカードの能力が何かを知る能力、そして最後に…ジョーカーを殺す能力です」
それぞれのカードを指差しながら話した。指差されたカードにはそれらしい絵が描かれているだけで字は一切書かれていなかった。
「このカードをそれぞれにお持ちいただき、森の中へ移動していただき六時間の間、このカードを使い生き残ってもらいますが…そうそう、忘れていました。このゲームの終了条件ですが…まずは、六時間という時刻が経過することです。生き残ってさえすれば何人でも願いを叶える対象となります。しかしその際に必要条件と致しまして自らの持っているカードを必ず使っているということに限ります。使っていなければ、願いを叶えることはできません。そして、もう一つの終了条件ですが…こちらは、誰か一人が生き残る…これも同様に残った人間がカードを使いきっていなければなりません。この二つがまず、終了の条件となりますが、これからはもっと細かく説明していきます」
するとスクリーンの映像が切り替わった。今度は森の見取り図が出てきた。
「皆さんがゲームをしていただく場所の地図ですが、この施設を中心に、半径ニ十キロはあります。ここから外に出ることは…時速約三・三キロで迷わず直線を走りきれば可能でしょうが…足場の悪い山林の上、暗闇の中です。まず不可能ですのでそれは初めから避けた方が懸命です。それから次にセーフティーゾーンですが、この部分を見てください」
指差された部分が、一箇所だけ色が違う円で覆われていた。
「時刻にして開始から三時間四十五分後から四時間目までの十五分間だけ現れる唯一身を護れる場所です。この施設から北西に三キロといった小高い場所ですね。時が来れば分かりやすく光輝きますが…巨木が目印なので暗くてもある程度遠くから目視できます。ここの中では最大の敵である番人が手を出すことが不可能となっています」
「番人?何だそれは?」
その呼び名だけでどこか不吉な感じがしたのはその場にいた全員が思った。
「ええ…鬼ごっこの鬼とでもいいましょうか…皆さんだけでは盛り上がりませんので我々の用意した神の使いにも参加してもらいます。神の使いですので、普通に殺すことはできません…」
「カードの力なら殺せると?」
「それも無理です」
爽やかに放したが、全員の頭の中で番人のイメージが恐ろしい化け物になっていった。
「それと…番人は一人だけではありません。時刻が一時間経過するごとに倍に増えていきます。投入されるのは最初一人ですが…一時間後には二人、二時間後には四人になっています。最後の五時間後には三十二人になりますので、逃げるのは困難となるでしょう。そして番人に捕まったら………まぁ…死を覚悟してください。彼から逃れられた人間はいませんので…」